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イチマクオワリ



乾いた風が吹き付ける。



マーディンでは、絶望的な威圧感を放つメル模倣体が襲いかかる。


カフエリとフエンにとっては、

自分達を絶望から救い出してくれた恩人であり…とても、とても、大切な家族である。


そんな優しく強いメルの肉体と顔で仲間のカラを容赦無く討ち取る。


はらわたが煮えくり返る程に憤りを感じ、胸が締め付けられる。


だが今はそんな事を考えるべきではない。


死したカラの意志を継ぎ、闘い強くならなくてはならない。


一本踏み出し前衛として挑む

覚悟を決めるカフエリだった。


かつてのカフエリの剣技は、

流麗な手数で急所を狙うスタイルだった。


しかし、今のカフエリは違う。


その一撃一撃は、岩をも砕くほどに重く。


そして狙うのは常に心臓か喉笛かすめれば即死という殺意の塊へと変貌していた。


「……カラの代わりは、誰にも出来ないでも…、でも負けない。負ける訳にはいかない!」


カフエリの重厚な一撃がメルのコピーを揺さぶり、生じた隙をネミルが埋める。


「にゃにゃニャニャハにー!!」


獣人の本能を解放したネミルの神速を超えた連撃は、もはや視認すら不可能なほどの手数。


防戦一方となったメルの虚像。


その手から、ついに緑炎の矛が滑り落ちた。


「…今度は、とどめを刺す!」


その瞬間、後方でフエンがアルテミスの弓を引き絞った。


放たれたのは、熱を奪い尽くす

”凍る炎の矢”。


矢が突き刺さった虚像の左腕は、一瞬で氷像のごとく凍りつく。


そのまま蒼白な炎に巻かれて

塵へと消えた。


しかしそれでも表情一つ変えない殺戮を本能とするメルの姿をした鬼畜。


そして、敵は”魔王の写し身”メルの能力を完全に模倣している。


失った腕は瞬時に再生し、

コピーは異形の咆哮を上げる。


追い詰められた模倣体は、本物のメルですら到達しなかった禁忌の領域へと踏み込んだ。


緑炎の矛と剣を強引に融合させ

”七宝剣”を錬成したのだ。


凄まじい熱を帯びて揺らめく

七宝剣。


神々しく輝き、聖剣特有の聖気を放っていた。


七つの突起を持つ不思議な剣先から放たれるのは、回避不能の光速の突き。


村正と共鳴するカフエリ。

流水の様な動きで辛うじて受け流す。


しかし速度に身体が追いつかない。


左腕を深く切り裂かれ、鮮血が舞う。


そんな傷を与えられても、カフエリの瞳は

絶望や嘆きなどを感じさせない。


「あなたは…弱いわ!誰よりも…カラよりもね!!」


そんな言葉をなぜか鼻で笑うメルの虚像。


少しずつその身にその精神に変化が現れている。


ほのかに香る怪しげな、そしておぼろげな甘い匂い。


あまりにも場違いなほどに貴族の様に気品に満ちた匂いが漂い始めた。


無表情で一切の感情を見せないメルの虚像から見える視界の中で、カフエリ、ネミル、フエンの姿が分身し、増殖していく。


「…うっとおしい…消えろッ!」


コピーは狂ったように光速の突きを乱射し、次々と彼女たちを貫く。


だが、風穴が空いたはずのカフエリたちは、蜃気楼のように揺らぎ、次の瞬間には傷一つない姿で再び襲いかかってくる。



これは…現実ではなかった。


「クスクス…こっちのメルは可愛くはないわね…。」


感情がないはずのメルの模倣体。


今まで感じた事のない感覚。

まさにエラーという現象に近いものがその化物を支配する。


それを喜び見詰めるカヨウ。


コピーは、カヨウの能力

『ナイトメア』によって、深い夢の底へと引きずり込まれていたのだ。


無限に増殖する仇敵、終わることのない死闘。


意識だけが永遠と続く無益な闘いという地獄を彷徨う中。


現実世界のコピーは無防備に立ち尽くし、苦悶の表情を浮かべていた。


「これで……終わりだにゃ。」


現実の世界で、ネミルが動いた。


その手には、共に歩んできたカラの形見である”溶けた短剣”が握られている。


ネミルは、カラの魂を込めるように、コピーの頭部へと、深く…深く…その短剣を突き立てた。


一方、別の戦域でも終焉の時が迫っていた。


ギルアとディロア。


黄金の火花を散らす死闘。


「くたばれえぃ!!」


ギルアが放つ黄金のハンマーが、幾度となくディロアを粉砕し、肉片へと変える。


しかし、そのたびにディロアは不気味な生命力で再生を繰り返した。


正面からの戦闘力でギルアに及ばないと悟ったディロアは、狂気に満ちた決断を下す。  


「キサマ程度に…このチカラをツカうとはな…。」


自らの肉体に”黄金の槍”を強引に突き刺し、それを取り込んだのだ。


肉体が黄金へと変質し、異形の輝きを放つ黄金のディロア。


「これが我のすべてだ……ギルアァァッ!!」


「……来いディロア。俺のすべてで、叩き潰してやる!!」


二人の戦士は、守るべきもののために、あるいは己の執念のために。


互いの魂を乗せた最後の一撃を放つべく、激突した。





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