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デバン



燃え盛るマーディンを眺め

絶望を嘲笑うターメルの冷たい笑い声が響き渡る。


「……無力な自分を知るべきだね。」



神々しく輝く杖を振るうターメル。


黒い霧が凝縮し一つの形を成そうとしている。


激しい稲光が黒い霧に纏う。


「我主よ…命はなんぞ?」


見た目がメルだが…感情の一切を削ぎ落とされた虚ろな瞳。


純粋な戦闘力のみを模倣した

メルのコピーが産み出された。




ギルアの足元にある地面が突然盛り上がる。


そこからひょっこりと顔だけを出す分厚い眼鏡を掛けたドワーフ。


「おぉ〜い!ギルア、こっちは、でぇじょぶだで…。黒鉄、発動するぞぉ。」


緊張感の感じさせない声。


「長!ここは危険です。」


ギルアが見下ろし叫ぶ。


「えぇえ?ギルア、あんだって?!」


よく聞こえないのか耳を澄し

叫んでいる。


「長!邪魔になります。」


何かに引っ張られ地面の奥に消えて行く。


深くため息をするギルア。


なぜか動けなかったディロア。


気を取り直してお互いに武器を構える。


あのターメルですら、ドワーフの言動と行動をいまいち理解出来ず、動きが一瞬止まる。


しかし…虚像のメルは違った。


本物と同じ緑炎の剣と矛を構え。


一切の無駄を排した流れるような動きで地を蹴り。


その刀身に纏わせた絶大なる魔力。


それに触れてしまう憐れな小さき蝶。


一瞬で灰になって消え去る。


絶望の化身となってカフエリ達へと襲いかかる。


「…私が行く!フエン達は援護を頼む。」


短剣に風の精霊を纏わせ感情なき虚像へと立ち向かうカラ。


「分かった…。」


アルテミスの弓を引き絞り狙いを定めるフエン。


「えぇ!!あんなの相手に無理にゃ…。」


姿勢を低くして気配を消すネミル。


カラが手数を増やし、斬りかかる。


そして後方から幾つも炎の矢を撃ち込むフエン。


更にその隙を縫って神速の手甲爪による突きを繰り出すネミル。


それを巧みに躱す メルのコピー。


しかし少しづつ着実にそして確実にその身へと傷を付けられる。


その攻防は、もはや達人の域を遥かに超えた超次元の領域に達していた。


しかし……苛烈な戦いにカフエリだけがついていくことができずにいた。


何もできない己への不甲斐なさと恐怖に足を竦ませてしまう。


カラ達の猛攻を躱しさばく感情なき虚像。


その隙を見逃さず、標的をカフエリへと定めて鋭い一撃を放つ。


「くっ!しま…。」


咄嗟にカフエリを吹き飛ばし

容赦なき一撃を短剣で受け止めようとするが、防ぎきれなかった。


スブッ……。


柔らかいものに針を突き刺す様な音。


貫く瞬間に凄まじい高温で肉を焼かれ出血が少ない。


苦悶の表情を浮かべるカラ。


独特な炭の焦げる匂いと共に

膝を付くカラ


ふと見るとカラの胸に風穴が空きそこから無表情のメルが覗いて見える。


それでも倒れずに短剣を構え

敵を睨みつける。


彼女の胸はかつて命を落としたムーリスと同じ箇所で穴が空き残酷な傷跡を残していた。


何度も刺され切られても

歯を食いしばり虚像の腕を

抑えつけ叫ぶ。


「今だフエン!!やれ!」


圧倒的に強いメルの模倣体。


最後の力を振り絞り、それを倒す最大の隙を作るカラ


カラの意図を汲むフエン。


全力の魔力を弓の弦に込めて

放つ。


蒼く強く燃える爆炎がカラと

模倣体もろとも穿つ。


凄まじい爆発音と砂煙が立ちのぼり、あまりの高熱で、周囲の瓦礫が飴細工の様に溶けていく。


しかし…舞い上がる砂煙が晴れ視界が開ける。


そこには無傷の模倣体と熱で

溶けた短剣が落ちている。


「にゃんで……。」

恐怖で固まるネミル。


「怯まないで、ネミル!私達は諦めない。」


敵へと弓を引き絞り突進するフエン。


その一言で頰を叩くネミル。

「分かったにゃ…あいつぶっ潰す!」


目の前で仲間の命が散った衝撃と重なる過去の悲劇。


カフエリの心が何処か音をたてて壊れていく。


戦線のバランスが瓦解して

フエンとネミルも一気に窮地へと追い込まれていく。


強く蹴飛ばされ、カフエリのいる方へとフエンは吹き飛ぶ。


口から赤黒い血が伝い地面に落ちる。


バチーン!!響き渡る心の痛み。


ガタガタと震えるカフエリの頬を、フエンの手が鋭く打ち抜く。


「悲しむのは…後、敵を討つのが先。」


フエンは、氷のように冷たく淡々とした言葉を突きつけた。


「はは…どうした?メル。」

不敵にほほ笑み、神々しい光の玉を幾つも生み放つターメル。


「…あの子達が危ない。」


一方、本物のメルはターメルとの死闘を繰り広げながらも仲間の窮地に意識を割かれていた。


「私相手に…よそ見か……余裕だね。」


その一瞬の隙を突いたターメルの一撃。


メルの片目にゆっくりと杖の先端が突き刺さる。


うめき声すら上げず、綠炎の剣を振り回しターメルから距離をとる。


「私の唄を聞いて…。」


フォードが喉を震わせて唄い始めた。


独特な振動と深く激しいリズム。


それは戦士の魂を鼓舞し能力を高める『行進曲』


漲る歌声が戦場に響き渡り、暗く重い筈の戦場が、正義と真実がぶつかり合う舞台へと変わっていく。


折れかけた者たちの心に再び力が宿る。


カフエリの鼓動とフォードの激しい旋律が同調するその時。


一切の無駄な動きをみせないカラの命を摘み取った敵。


その動きに規則性がある事をカフエリは見抜く。


鞘から村正を抜き、その鞘を地面へと放る。


戦況を見守っていたターメルは、メルの負傷と前衛の欠落を見て勝利を確信していた。


ギルアはディロアの猛攻を黄金のハンマーで受け止めながら叫ぶ。


「カヨウ!あの子達の所へ!」


カヨウに目配せすると眼の前のディロアへと集中する。


甘美な香りをディロアへと振り撒き精神を乱すカヨウ。


「グゥう……なにをした…?」


目に映る巨大なギルアの姿が

幾つもに増え視界が霞む。


その隙に舌打ちをしながら

フエン達の方へと向かう。


模倣体がカフエリへと確実な死を与える為に、綠炎の矛を振りかざす。


(最初は突きに見せかけた薙ぎ。)


右手にある綠炎の剣がカフエリの首を狙い横一線に切り裂く、それを紙一重で躱す。


(次は足に突き。)


もう躱すことが出来ない様に

矛を両足へと鋭い突きを繰り出す。


村正の剣先で矛を弾くカフエリ。


絶望から覚醒したカフエリの

放つ凄まじい覇気が渦巻く。


その手の中で村正がカフエリと共鳴するように激しく鳴り響く。


気が付けば、模倣体の服が少し裂けそこから体液が流れる。


今まで全ての攻撃を防御結界と武器で防いでいた殺戮本能のみに特化している模倣体。


カフエリの光速で、放たれた不規則な動きを

見せる斬撃を躱しきれず始めてダメージを受けた。


ターメルが描いた滅びへと進む道を叩き斬るべく。


反撃の音色がマーディンの空に強く激しい轟き始めた。






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