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コウサスルウンメイ



「何とか…卵を取れた……。」


虹色に輝く卵を抱きかかえる

メルフォード。


服が破れ、全身が傷だらけの

煤汚れたメルフォード達


目隠しでギルアの洞窟を抜け

今入口で倒れている。


「本当…何度か死ぬと思った……。」


一部石化している手袋を脱ぎ捨てるユウ。


「こんにゃんで…まだまだにゃははん。」


何を言ってるかいまいち分からないが、息一つ切らしていないネミル。


メグラはコカトリスによって身体の半分を

石化されてしまう。


現在、文句を言いながらフエンが治癒の炎で石化を解いていた。


「もう外して良いわよ。」


カフエリが村正を鳴らし伝える。


目隠しを外すメルフォード達。


明るい陽射しが目に染みる。


「いや…しかし皆よく頑張った。」


豪快に笑うギルア。


フエンは「うるさい」とだけ言うと指で自分の耳を塞ぐ。


どこからか香ばしい匂いがする。


「あっ、お帰り!フエン、カフエリ。」


何故か焚き木で魚と肉を焼いているギラン。


スッと二人に温かいハーブティーを渡していた。


少し機嫌が良くなるフエン。


治癒の炎が更に激しく滾る。


「さぁ、みなさまお腹が空いたでしょ?」


「食べて、休んで心を癒やしましょう。」


まるで執事の様に上品な所作で

食事を運ぶギラン。


皆の元に食事が行き届くのを

確認する。


「では、いただきます!」と

手を合わせ声を上げた。


ユウトとミレイだけが、食事を取らずに森の奥へと入っていく。


その様子を静かに見届けるカフエリ。


気が付けば姿が消えていた。


「ハァハァハァ…すまないユウト……。」


息を荒げ悶えるミレイは

その瞳が黒く淀み、黒い牙が口から覗く。


「良いよ…僕は大丈夫。」

優しく微笑むユウト。


ミレイはユウトの首筋に噛み付き喉を鳴らす。


「かはっ……。」

欲望を抑えきれずにユウトの

血液を吸い続けるミレイ。


顔色が蒼白くなっていくユウト。


ふと我に返ると牙を引き抜き

ユウトを抱き締める。


「ごめん…ユウト……。本当にごめん…。」


泣きじゃくるミレイの頭を優しく撫でるユウト。


「あや…まらないで…ミレイさん。」


治療薬を飲みながら微笑む。


「やっぱりね…。」


腕を組み一部始終を見ていた

カフエリ。


「いつから気づいてたの?」


何故か表情を崩さないユウト。


「会った時から…。」


空からふわりと降りてくる

フエン。


それを聞いたユウトは「やっぱりかなわないなぁ…。」と笑いながら経緯を語り始めた。


以前にドラキュラである、

ミカリに血液を吸われたミレイ。


その時に呪いを魂に、深く刻み込まれ元の魂が傷付いてしまった事。


そしてそれから血を求め、他の食事が喉を通らなくなった事を話す。


それを聞いた二人は、震えるミレイと笑うユウトの頭を撫でる。


「メルフォードに卵を取らせたし…。」不敵な笑みを浮かべるフエン。


「さぁ、精霊樹の樹液を取りに行くよ!」

二人の手を取るカフエリ。


「ありがとう…。」


ユウトの重く赤い愛が口から垂れるミレイ。


カフエリ達が森の奥で話しをしている頃。


石化を解かれたメグラは、

ギルアに「話の続きを話せ。」

と詰め寄っていた。


面倒くさそうに笑うギルア。


「そうか…なら話そう。」


焚き木の赤い炎を見つめゆっくりと語りだす。


◆◆


激しい爆発音が、赤く染まったマーディンの空を震わせた。


「うもぉん…封印が危ないわん。」


身体をくねらせ走るギルア。


その隣を走るカラの表情は険しい。


彼らが向かう先には、マーディンの至宝『ターメル・クレセント』が眠る聖域がある。


それは単なる財宝ではない。


かつてこの地を恐怖に陥れた

暝砡の者ターメル・クレセント

の”全知識”が封印された、

生きた魂の器なのだ。


狂気の探求者、ターメル・クレセント。


かつてターメルは、飽くなき知識欲のために禁忌を犯し続けた。


各地から住人を攫い、生きたまま魔法と技術の実験台にするという非道。


その惨劇を終わらせたのは、精霊族の国

『ボールデン』の女王だった。


女王はドワーフの名工たちに

特殊な宝玉を作らせ、自らの膨大な魔力を持ってターメルの魂をその中に閉じ込めた。


魂を抜かれ”絶大な力”を失ったターメルは、ただの脆弱な人間として生きることを許された。


しかし、彼を待っていたのは安寧ではなかった。


かつての被害者たちの怨念は消えず、彼は『従属の首輪』をその首にはめられ、凄惨な拷問と辱めを受ける日々を送ったという。


「その地獄から彼を救い出したのが、ミサキだったんだ……。」


ギルアの声が苦しげに響く。


魔力も知略も失い、ただの青年となったターメルは、自分を救ったミサキに”お礼”として、これから世界に起きる"全ての未来"を語り聞かせた。


「ギルア、待って。それじゃあ、クレセントの名を継ぐ者たちは……」


ユウの問いに、ギルアは短く首を振った。


「実は、血縁などではない。我らクレセントの血脈は、ターメルの血を引く者ではないんだ。」


「実際は、あの封印に携わり、それを監視し続けてきた者たちの末裔……。」


重くなる空気にネミルは少し汚れたウサ耳をギルアに付ける。


急に身体をくねらせるギルア。


「皮肉なものよねん。守護者が、いつの間にか憎き罪人の名を名乗っているのぉにぃ…。」


腹を抱えて笑うネミル。


様子と口調があまりにも見た目とかけ離れ、気持ちと話が頭に入ってこないメルフォード達。


いきなり現れるフエン。


ギルアのウサ耳を取りネミルを殴る。


「にゃにすんにゃ!老人虐待にゃ!!」


頭を擦りながらフエンを睨む。


「そうだった…。確かにネミルは老人よね……。」


「…なら……労らないと。」


フエンの生みだす青い色の炎がはげしく燃える。


凄く嫌な予感がするネミル。


「ごめんなさい。」


深々と頭を下げていた。


「あっ、ごめんなさい、話を続けて。」


カフエリがギルアに視線を送る。


「あぁ…分かった。」


首を傾げまた昔語りをするギルア。


「ノボルは…その真実を知っていた……。」


◆◆◆



未来を知るミサキを拷問し、ターメルから聞いた事を知ろうとしたノボル。


だが…ミサキがその事について深く口を閉ざし話す事は無かった。


そのために、彼は手駒であるディロアを使い、この町を襲撃させたのだ。


黒鉄の巨大な歯車が幾重にも張り巡らされた重厚な建物。


ターメル・クレセントが封印されている聖域。


そこには、先程カラの短剣に

沈んだはずの化物、ディロアが立っていた。


しかし、その姿は先程とは明らかに異質だった。


本来の両目は不気味な黄金色に輝き、その額には、獲物を射抜くような”紅い第三の瞳”が剥き出しになっている。


ディロアの持つ黄金の槍が、

まるで血に飢えた獣の様にキィィィィンと

甲高い音を立てて鳴り響いている。


それは、戦い、あるいは封印された魂を求めている合図だった。


「……壊レロ。」


ディロアが槍を振り下ろす。


凄まじい衝撃と共に、ボールデンの女王が施した封印の石碑が、音を立てて砕け散った。


「止めろぅおおおお!」

地鳴りの様なギルアの声が響くが、一歩遅い。


砕けた石碑から、数千年の怨みと禁断の知識が、黒い霧となって溢れ出してしまう。



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