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エンオウ



全身に漲る力を抑えるフエン。


「すぐに追い付くから…。」


それだけをカフエリ達に伝え、瞳を閉じ、魔力を練り上げ集中させる。


フエンの意識に小さな光の玉が

次々と流れ込んでくる。


そして禍々しく燃える黒い玉が一つ。


その側には、弱々しく揺れる火の玉が二つ脳裏に浮かぶ。


「見つけた…。」


静かに瞳を開ける瞬間。


光の粒となり禍々しい気配の

ある方向へと飛んで行く。



それを見届けるカフエリ達


ギルアの洞窟に行こうとするが…。


凄まじい爆発音と共に

激しく燃えるマーディン。


大きな黒鉄の歯車がこちらに吹飛んで来る。


「まさか…ターメルの!」


ウサ耳を頭に付けるギルア。


「もぅ、封印が解けちゃったわ!」


「ちょっと、行ってくるのよん。」


身体をくねらし疾風の如くマーディンへと走る。


「嫌な予感がするな……。私達も行くぞ!」


短剣を握り締め走るカラ。


その後を追いかける様にカフエリ達も走り出す。


◆◆


ピンクの椅子にふんぞり返る紅い眼を持つ男。


「クハハハ…。最高だ。」


縛り上げられたミレイの首筋を噛み付き喉を鳴らす。


「…………。」


ミレイの肌が、蒼白くなり喉を鳴らされる度に指先をぴくぴくと動かす。


「甘いぃ…なんて美味いぃんだ。」


ズプッと牙を引き抜くと不気味に微笑む。


その男の黒い牙から赤い血が滴り落ちていた。


「止めて…下さい。ミカリさん。」


顔が原形を留めていない程に殴られた跡があるユウト。


瞼が青く腫れ上がり目が開けられない。


唇は裂け歯も抜かれていた。


その姿を見てただ怯え震える

パルとマール。


「ユウトォ…良いぞ、ノボル様から授けられた、この力は…。」


「お前もこっちに来いよ…ユウトォ…。」


ミレイの首筋から伝う血液を飴の様に舐める紅い眼の化物。


「や……めろ!!」


這いずりながら必死で化物の

足首に噛み付くユウト。


それを蹴飛ばし踏みつける。


「ちっ…カスが!」


黒く鋭い爪をユウトの額へと突き立てる。


ギキィーンと音が響くと

その爪を弾く様に曲刀が飛んで来る。


「行くぞ!」


ピンクのタキシードを着たアユムが化物の首筋へと曲刀を突き刺す。


それに続く様にクリエラは

幾つもの風の精霊を呼び出す。


化物へ向けて切り裂く風が吹き付ける。


しかし…黒い霧になると

またピンクの椅子に座り

ミレイに噛み付こうとする。


「吸わせねぇよ!ミカリ!!」


『ディプルフルキュアリート』


酒を飲みながらクレアから放たれる聖なる治癒の光。


化物の身体から腐敗臭とともに肉の焼ける匂いがする。


「小賢しい…カスどもが!」


『ブラッドリフレイン』


ミレイの紅い瞳が黒く淀む。


白銀の長い髪がゆらりとなびく。


その刹那、クレアの胸に深く突き刺さるミレイの鋭く凶暴な爪。


正気に戻るミレイは

自分の眼の前で喘ぐクレアを

見て悲鳴を上げる。


ミレイの口から淡く光る玉が飛び出す。


その様子に喜び笑う元マレビトのミカリ。


今は、メルの肉体を操るノボルによって邪悪な魔物『ドラキュラ』の姿へと変えられた。


突然…クレアの肉体が青い炎となって消え去る。


更にミカリの左腕が焼き尽くされていた。


「大丈夫…ミレイ。」


蒼い色の炎に包まれているフエン。


そしてフエンの傍にはヘタリと座り込むクレアと力無く崩れ

落ちるミレイいた。


『ホワイトフレイム【治癒の炎】』


ミレイの首筋にある深い傷跡から黒い液体がグニュッグニュと飛び出す。


その液体は悲鳴を上げ消滅していく。


「なんだ!貴様は!?」


漆黒の霧がフエンに纏わりつく。


「それに触れるなフエン!!」


「動けなくなるぞ!」


必死に叫ぶアユムを他所に、鼻で笑うフエン。


「愚かな…ゴミね。」


フエンの肉体に触れる前に蒼色の炎に焼かれる漆黒の霧。


断末魔の様に苦しみ叫ぶ。


消滅しそうになるミカリ。


それを魔力を込めて引き戻すフエン。


「楽に死なせないよ…メルの居場所を教えるまではね…。」


悪魔の様に甘い微笑を浮かべるフエン。


ミカリの肉体を再生させては

焼き尽くす事を、何度も、何度も繰り返す。


耳にこびりつく様な悲鳴が陽炎の町に鳴り響く。


肉の焦げる匂いがフエンのローブにこびりつく。


「もう…止めてくれ…教える、居場所を教えるから……殺してくれ。」


その言葉を聞いて頰を歪ませるフエン。


「いや…話さなくていいよ。」


「もう…頭の中を覗いたから。」


深くため息をつくと指先から無数の炎の兎を生みだす。


そしてミカリの口へと次々と押し込まれる。


内臓に焼けつける様な激しい痛み。


更に全身に釘を刺された様な激痛が襲う。


ミカリが失神する事すら許さず、肉体の浄化と破壊を繰り返すフエン。


化物の精神が完全に壊される。


涙が焼け付き頬に炭となってこびりつく。


口を空けたまま何も反応が無い。


「もう…終わり?つまらない。」


フエンは一切の躊躇も慈悲も

無くミカリの全てを焼き尽くした。


そのあまりにも非道で残虐な フエンを見て、クレアが強く抱きしめる。


「もういい…フエン、大丈夫だ!」


「誰も死んでない。壊さなくていい。」


酒臭いクレアの不器用で優しい

腕をそっと退かすフエン。


「…本当に大丈夫?」


肉体に帯びている冷たい魔力が徐々に収まっていく。


激しい爆発音とともにフエン達の住む家が吹き飛ぶ。


そしてそこに一人佇むミサキ。


まるで誰かに、呼ばれるかのように凄まじい魔力を纏い、精霊樹の方向へと飛んで行く。


フエンはユウトに治癒の炎で

傷跡を癒すとミサキの跡を追い掛けて行った。


「あれは…昔に見た炎王と同じだよ。」


ボソリと呟くアユムの瞳が何故か悲しげに映る。


そしてミレイは、眼を見開いたまま動かない。




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