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シュギョウフタタビ



「しかし…あの時のカラ殿とムーリス殿は凄かった。」


ギルアの左手に収まるグラス。


中の水を飲み干し唸る様な

ため息をしていた。


無骨で大きな手に覆われる

グラスが少し可哀想だと思う

メルフォード。


「なぁなぁ、その後は、どうなったんだよ!」


先程まで寝息をたてていた、メグラは眼を覚まし、瞳を輝かし話の続きを望んでいた。


まるで子供が絵本を読まれて

喜ぶ様に、「いいだろ」と笑うメグラ。


白く波打つ美しい毛並みが白虎の姿に似ていた。


そんなメグラを見て呆れるユウ。


「はぁ…あんた…もう37だろ。大人になりな。」


年甲斐もなく瞳を輝かし、はしゃぐ者をたしなめていた。


スッと立ち上がるネミル。


「にゃはは…メグラちゃんも起きたし…。」


「秘密の特訓を始めるかにゃ!」


部屋の奥からピンク色の煤汚れた布を持ってくる。


その布を見てフエンとカフエリは思わず口に含んだ水を吹き出す。


「これ…ムーリスの時のやつ?」と驚くフエン。


「あの時のを…大切にしてたんだ。」


ピンクの長い布を掴み、物思いにふける。


「そうにゃ!私達はカラ達の目隠し地獄で強くなったにゃ。」


「それに…ムーリスとの想い出が詰まった形見にゃ。」


黒い尻尾を上下させ笑うネミル。


気が付けば、ユウとメグラの眼を隠す様にピンク色の布を巻いていた。


一瞬の事で動けなかったユウとメグラ。


メルフォードにはピンク色の布を手渡しする。


意図を察したメルフォード。


自分の眼を覆う様に布をしっかりと顔に縛り付けた。


メルフォード達に聞こえる様に話すカフエリ。


「これから、目隠しをしたまま…ギルアの洞窟を攻略する。」


村正の柄を鳴らすカフエリ。


「もしも…目隠しを外したら…燃やし尽くす。」


アルテミスの弓を引き絞り笑うフエン。


「ちなみに今はコカトリスの産卵期だ。」


「しくじれば、石にされるぞ!」


左手で黄金のハンマーを構え

不敵に笑うギルア。


「なっ…」言葉を発するメグラをいきなり殴るネミル。


「一切の反論は、許さないにゃ!ただ強くなるのみ。」


ネミルの発する独特な戦気に

たじろぐメルフォード達。


ギルアの住まう家の外では

けたたましい鳴き声が聴こえて来る。


洞窟の中は暗く湿っている。


そして生暖かく少し硫黄の香りが漂う。


ギルアが言うには、近くに溶岩が流れている。


地下水が熱されがコカトリスの卵を暖めるには丁度良いと笑っていた。


メルフォード達は漆黒の暗闇の中、気合いのみでコカトリスの巣を突っ切ろうとしていた。


百年前のそれと同じ時刻、同じ日付では、マーディンの出入り口にて凄まじい戦いが繰り広げられていた。


3万のゴブリン軍勢と

ゴットゴブリンであるディロア相手にカラとムーリスは善戦していた。


両手に短剣を持ち、次々とゴブリン達を薙ぎ払うカラ。


笑いながら大きな水の兎を

生み出しゴブリン達を溺死させるムーリス。


カフエリ達がその戦場にたどり着いた時には、もう敵はディロアしか残されていなかった。


黄金の槍を振り回し暴れるディロア。


「小娘風情が!」と怒りを現にしてカラの猛攻を防ぐ。


ムーリスは次々と水の兎を

作り出しディロアへと送る。


口と鼻を塞ぐ様に水の兎が強引に流し込まれてくる。


むせる隙も与えられずに悶えるディロア。


カラは静かに短剣をディロアの心臓へと突き刺す。


肉を貫く鈍い音と共に赤紫色の体液が吹き出す。


力無く倒れるディロア。


「久しぶりに汗をかいたな。」

と汚れた短剣を拭い笑うカラ。


「あぁ〜まだ、転移石の分析

終わってないのに。」


何事も無かったかの様に、残された転移石の方に戻ろうとしているムーリス。


カフエリ達は、改めてカラ達の

底しれぬ実力に畏怖と敬意が

混ざる不思議な感覚に包まれていた。


しかし何故かギルアだけが天を睨む。


「まだ油断するな!来るぞ。」


空間が歪み雲が切り裂かれていく。


黒い闇から現れる漆黒の翼を

広げてゆっくりと降りてくる紅き眼を持つ者。


「メル!!」と思わずカフエリとフエンが悲しげに叫ぶ。


二人の方に視線を向けると慈愛に満ちた笑みを浮かべ、その手から黒い炎を生み出す。


「危ない!」


レーザーの様に鋭い炎がカフエリとフエンに目掛け放たれる。


それを庇うムーリスは右胸に

大きな穴が空いていた。


静かに倒れるムーリス。


その瞬間、カラがメルへと

渾身の一撃を与えようとするが

触れる事すら、出来ずに吹き飛ばされる。


「私は、メルでは無い。」


「私は、ノボルでは無い。」


「私は、属さぬ者。」


淡々と話すメルの瞳には光が無い。


「一体あなたは何なの?!」


ムーリスの穴を小さな手で必死に抑える

カフエリ。


しかし赤いものの流れは

無情にも止まらず確実に

ムーリスの寿命を奪っていく。


「何でもいい!メルを止める。」


アルテミスの弓を構え幾つもの

火矢を放つ。


その速度は光よりも速く飛び

メルの肉体を次々と貫く。


その傷を見て悦に浸るなにか。


たった一言だけ残して消えていく。


「頼む…止めてくれ。」


フエンとカフエリは、メルの残された理性。そこからの悲痛な想いの様に聴こえていた。


気が付けばディロアの持つ黄金の槍が水泡となって天へと上っていく。

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