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ヒサシブリ



乾いた風が強く吹付け、


幾つもの穴を通り抜けると


呻く泣き声に聞こえる…。


歩く度にザッ、ザッ、ザッ、ザッと細かくとがった砂利が靴底に突き刺さる。


とても不快に感じ、靴底を地面へと擦るメルフォード達。


過去では、カフエリ達が

マーディンへとたどり着いたその頃。


それから百年後の同じ時間、

同じ場所を何故か訪れていた。


「フエン。どうしてここへ来たのか…。」


「もう理由を、教えてくれてもいいだろ?」


口を尖らし時々、足裏へと刺さる石を手で払うメルフォード。


「…マーディンには、知り合いがいる。」


フエンの指先に魔力を集め生み出した青く燃える兎。


足場の悪い砂利道を、自由に飛び跳ね、光の粒が小さな足跡を輝かせていた。



「その人に、あなた達を鍛えてもらうのよ。」



蒼く光る兎を見つめ静かに笑みを浮かべている。



黙々と前へと歩みを進める

フエン。


急に、手を震わし深く、深く黒いフードを被る。


僅かに隙間から覗く口角は

歪んでいた。


「ハァン!…俺を鍛える…!?それが必要なのは、そこの貧弱な暝砡野郎だろう?」


酒吞の棍棒を握り、肩を叩きながら、鼻で笑うメグラ。


「…悪いけど、あなた達を守りながら、メルと戦うのは無理。」片頬をあげ笑うフエン。


その挑発的なフエンの一言に

顔を赤く染め、怒りを現にする

メグラ。


その空気を察したユウは

メグラをなだめようとしていた。


「この世界が少しづつ、縮まってんだぞ!!ふざけんじゃねぇよ!」


「メルは…あいつは、そんなの望んでねぇ、早く止めてやらねぇと…。」


自らの想いを話すメグラ。


「確かに…魔王相手に修練は大切よ。」


「…だけど、私達には必要無いわよ。」


「悪いけど、あなた達の知り合いが……私達より強いとも、思えないしね。」


グングニルの槍を地面へと突き立てるユウ。


地鳴りと共に激しく揺らぐ

砂利道。


「はぁ〜…」と声を漏らし

氷の様に冷たく微笑むフエン。


「なら…3人まとめて相手にしてあげる。」


「もしも……私が負けたら。」


「あなた達の、好きな様にすればいいわ。」


今まで雲一つ無かった爽やかな青空。


急に黒く分厚い雲が立ち込める。


「えっ…僕は、別に修行を反対していないのに?」


自分にも向けられる、鋭い殺気にたじろぐメルフォード。


その異変に気づくユウト。


「やっ、や、止めなさい!二人とも!!」


「フエンと戦ったら死ぬぞ!」


表情が青ざめ、額から汗が流れる。


慌てふためくユウトを鼻で

笑うメグラとユウ。


もう誰も止められないような

張り詰めた空気。


ミレイは欠伸をして、地面を

歩く芋虫を眺めている。


気がつくとフエンとメグラ達の間にふわりと立っているカフエリ。


今のフエンは、戦う事に強い喜びを感じている。


「フエン…あなたはやりすぎるから駄目。」


カフエリの鋭い眼光が

フエンの昂る心を穏やかにさせた。


「わかった…。」そう言うとフエンは マーディンへと一人歩いて行く。


「へっ…逃げんのかよ。」


軽口をたたくメグラへと視線を戻す

カフエリ。


「私が代わりに、証明するわ。」


「いつでも、良いわよ。」


何故かカフエリは、村正を抜かずに微笑んでいた。


「まぁ…カフエリなら。」と

呟くユウト。


「ミレイぃさ〜ん、手を繋ご。」


満面の笑みを浮かべ、ミレイの手を握る


小さく頷くミレイは、頬を赤らめ、

ユウトの手を繋ぐ。


そんな様子を見ていたカフエリ。


「ミレイは、まだ…話せないの?」


ふと思った事をユウトに尋ねていた。


少し淋しげに片頬をあげるユウト「まぁ…ね。」と一言話すとミレイを連れて、その場を離れて行く。


腕を組み首を回すメグラ。


「さっさと始めようぜ!」と

カフエリに向けて伝える。


「はぁ…私は言ったわよね。」


「い、つ、で、も、良いって。」


凄まじい殺気と闘気を放つ、メグラを全く、気にも止めていないカフエリ。


その態度と言葉に何かが切れる

メグラ。


(へっ、なら…一瞬で終わらせてやるよ。)


右足に力を込め、前かがみになる。


その刹那、カフエリの眉間へと目掛け酒吞の棍棒が振り降ろされる。


「あぶっ!」メルフォードが声を発する前に、吹き飛び転ばされるメグラ。


あまりの速さに何が起きているのか分からなかった。


それは地面に横たわるメグラも同じ感覚であった。


「かはっ…何をしやがった。」


何故か、呼吸をすることが出来ずにいた。


一瞬の出来事をメルフォードだけが少しだけ捉える。


(メグラが振りかぶる瞬間…喉と左足に一撃…。)


(後は、駄目だ…そこからは何も見えなかった。)


カフエリの動きを何とか取り入れようと考えるメルフォード。


しかし所作の細かい所が見えず

諦める。


実はメグラが酒吞の棍棒を振り上げたその瞬間。


喉とみぞおちに一撃、右手を掴み軽く手前に引き、重心の傾きを利用して転がす。


その瞬間に中央、頚椎に一撃

入れていた。


その全ては急所とよばれる箇所。


もしも…カフエリが本気で攻撃をしていたら、メグラはもうこの世にいない。


息一つ切らさずに微笑むカフエリ。


「次は…誰?一人ずつだと面倒なんだけど。」


ユウがイージスの盾を構え


じわじわとカフエリの傍に近づく。


そしてカフエリの背後には

メルフォードが黄金の剣を構え隙を狙う。


カフエリを挟み撃ちにしてし

まえば、どんなに動きが速くても。


いくらでも対応できると考えた二人。


ユウとメルフォードは、

お互いに眼で合図を送る。


同時にカフエリへと攻撃を仕掛けた。


盾を構え重心を低くしていれば


倒される事は無いと考えたユウ。


メルフォードが背後から斬りかかれば必然と意識が背後へと向かう。


その隙にグングニルの槍で

突き刺せば…。


恐らくカフエリの動きは鈍くなるだろう。


しかしその考えは甘かった。


眼を閉じ耳を澄ますカフエリ。


メルフォードが黄金の剣を両手の右側面に構え突進して来る事を見据える。


背中に刃が触れる瞬間、ユウの方へわざと前進する。


そして、上体を少し捻り左側へと躱す。


勿論、メルフォードも躱される事は分かっていた。


そのまま柄の持ち手を変え、横に振りかぶる。


通常ならば正面のユウが、構える鉄壁の盾によりカフエリの進行を妨げ防ぐ。


そしてメルフォードの横一線の鋭い斬撃が確実にカフエリへと当たる筈なのだが…。


ユウの肩を掴むと靭やかに自身の身体を持ち上げる。


盾を構えていたユウの背後を取る。


ガキン!と鈍い金属音が響き、メルフォードの鋭い斬撃がイージスの盾に弾かれる。


その刹那、ユウの右足、太ももを踏みつけ

体勢を崩させた。


地面に膝を付くユウ。


強く握り締めていた

グングニルの槍を強く蹴飛ばし

黄金の剣を弾き飛ばす。


気がついた時には、二人の首元に互いの武器が突きつけられていた。



「どうする…まだやる?」


一瞬の出来事にメルフォードとユウも激しく動揺していた。


更にカフエリは現実を、語る。


「ちなみにメルは、もっと強いよ。」


「フエンと私が、本気でやっても全くメルの相手にならなかった…。」


戦意を喪失したメルフォード達に武器を返すカフエリ。


倒れ動かぬ巨体の獣人メグラを軽々と細身のエルフが背負う。


「じゃあ…マーディンへ急ぐよ。」


カフエリはフエンを追いかける様に歩く。



その後をメルフォード達も追い掛けて行った。


◆◆


幾つもの壊れた歯車が転がる荒野。


そして…明らかに異質な服装を

している人物と仲よさげに話すフエン。


「久しぶり…ギルア。」


白い貝殻を胸に付けた片腕の男。


「フエンも、あれから大きくなったな。」ギルアが声高らかに笑う。


「久しぶりにゃ〜会いたかった…フエンちゃん。」


「良かった、ネミルは元気そうねぇ…」


涙ぐむネミル。


黒い耳がぴくぴくと動き


フエンの細い腰元に長い尾を巻きつける。


優しく頭を撫でるフエン。


鼻をひくつかせるネミル。


「あっ、カフエリちゃんの匂いもする!」


腰は少し曲がり長い年月を生きた証。


ネミルの手にある深い皺を

愛おしそうにフエンは握り締めていた。


「二人にお願いがあるの…。」


フエンはメルフォード達を


戦士として生き抜ける様に

鍛え上げて欲しい。  


その為にギルアとネミルに会いに来たと話す。


「あぁ任せろ。」と笑うギルア。


「動けるかにゃ…。まぁ…いっか。」と首を傾げるネミル。

 

それを二人に伝えると


マーディンの出入りにある3つの墓石に手を合わせ祈るフエン。


空を眺めスッと立ち上がる。


「来たよ…。」と呟いていた。

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