チュウセイ
風の声を物静かに聞いている
カフエリ。
「みんな、来るよ!」
突如として声を荒げ村正を握り締める。
すると上空から無数の岩石が
カフエリ達へと降り注ぐ。
「にゃんにゃんにゃー!」
もうなにを言っているのか
分からないネミル。
空を蹴る様に岩石を避ける。
カラは短剣を軽く横に振る。
すると直径15メートル程の岩石が斬撃に
より次々と破壊されていく。
「あらあら…」と笑みを浮かべ
降り注ぐ岩石を魔力で弾き返し
相殺させるムーリス。
カヨウはフォードの傍で
尖った尾を振り回し、岩石の軌道を逸らしていた。
その場で何もしないフエン。
降り注ぐ岩石が何故か、フエンを避ける様に左右へと落下する。
フォードが奏でる悲しげな歌声が響く。
凄まじい勢いで降り注ぐ岩石が急にふわふわと落ちてくる。
「嘘ぉ〜ん!信じられない。」
野太い声で叫ぶ人影。
ゆっくりと落ちる岩石の間を
縫うように近づいて来る。
平屋の家屋程ある魔物トレント。
それを遥かに、凌ぐ大きさの
ハンマーを軽々と振り回し
カフエリへと振り下ろす。
キィン…。
金属の擦れる音がすると
同時にハンマーがバラバラに
切り刻まれる。
「もういやだぁ〜、これお気になのに!」
喚くその者の腕は ゴーレムの様に太く逞しい。
くるくると巻き上げられた茶色の長い髪。
一見、女性に見えるが顎を覆う
金色の髭がそれを否定する。
鍛え上げられた肉体と靭やかな筋肉。
呼吸をする度に分厚い胸板が
ムキムキと動き、左右の突起を
白い貝殻が隠していた。
明らかに異質な見た目だが…。
全身から醸し出す、練り上げられた闘気は、鋭い刃の様に研ぎ澄まされていた。
身体をくねらしカラへと近づくその者。
「ちょっとあんた達!あちしの家に何のよう!!」
今、カラは生まれて初めて、
頭の中が真っ白になるという事を経験していた。
「ちょっとぉ〜返事ぐらいしなさいよぉ!」
分厚い唇を尖らし、さらに身体をくねらせる。
フエンが太く逞しいその者の
腕を叩く。
「もしかして…アユムの友達?」
それを聞くとその者から放たれる殺気が消えていく。
「あらやだん〜もう、アユムチャンの知り合いならそう言ってよ!」
頭に付けたウサ耳を外すと口調が変わる。
「我が名はギルア・クレセント。」
「ターメル・クレセントの血を受け継ぐ戦士なり。」
深々とカフエリ達に一礼をする。
あまりにも変動が激しい風体に
ネミルが腹を抱えて笑い転げる。
ハンマーの欠片を握り締めるカフエリ。
「壊してすみません。先に名乗るべきでした。」
深々とギルアに頭を下げる。
「いや!謝る必要など無い。そうか…そなたはカフエリと申すか。」
「良き武人よ、太刀筋が見えなんだ。」
「それに我の土魔法を、あそこまで防げるのはそなた達が初めてだ!」
ウサ耳を腰のベルトにぶら下げ高笑いをするギルア。
この状況に一切、心の揺らぎを見せない
ムーリス。
「あの〜コカトリスの卵が欲しいのですが…。」
急に表情が曇るギルア。
「コカトリスの卵だが…今は止めたほうが良い。」
「産卵期だが…この時のコカトリスは凶暴だ。」
ギルアの胸に付けられている白い貝殻。
それが気になり剥ぎたい衝動を必死に抑えるカヨウ。
「で、でも必要なのよ。卵。」
カヨウの異変に気付いたのか。
手を握りしめ何度も首を横に振るフォード。
やっと我に戻ったのかカラが
「危険なのは知っている。」
「だが…時間が無い。敷地に入る事を許して欲しい。」
じりじりとギルアに詰め寄る。
その凄まじい気迫に後退りしてしまう。
ウサ耳をまた頭に付けるギルア。
「いいわ!その代わり気配を消す『喪飛』が使えない…。」
「そう判断したら力付くで止めるわよ!!」
黄金のハンマーを空から生み出し
微笑むギルア。
ふと気が付けば、ネミルの手甲爪が
ギルアの首元に突き付けていた。
そしてフエンもギルアの背中に
魔力の矢を構えている。
(こ、この子達は、何なの…?)
ギルアの額から汗が吹き出る。
「これで認めるかにゃ?」
けらけらと笑うネミル。
「どう…合格?」
静かに微笑むフエン。
カラとムーリスは、何処か満足気に笑う。
「確かに…これなら大丈夫そうね…。」
「だけど!!」
全て落ちた筈の岩石が急に砕ける。
するとその破片が先ほどからずっと様子を見ていたディロアが率いるゴブリン達を撃ち抜く。
ハンマーを肩に乗せ高らかに笑うギルア。
「今、ディロアて言う化物と戦争してるのよ。」
「そっちが終わるまで待ってて欲しいわ。」
それを聞いたカフエリがある提案を持ち掛けた。
「私達がディロアを追い返せば…。」
「コカトリスの卵を取らせてくれる?」
カフエリの持つその瞳は、闘志に満ちていた。
「もし…それができたらね。」
不敵に笑うギルアが持つ黄金のハンマーが
不気味に光を放つ。




