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ミンナガンバレ



部屋中に広がる刺激臭。


その凄まじい香りに自由を

愛する小さな生命、

小蝿まで床にひらひらと落ちて、

そのままぴくりとも動かなくなる。


「わりぃ、ミサキの身体を、後ろから支えてくれ。」


パルは、病理食を食べさせる為に身体を起こす。


マールとパルはミサキの背中を

優しく支えていた。


ミサキの斜め横に椅子を置きそこに座る

クレア。


異臭を放つ紫色の何かを、木のスプーンで

掬うと、ミサキの口に運ぶ。


意識が無いせいなのか、


それとも凄まじい見た目のせいなのか

飲み込まず、口に入れたものが端から

溢れて下へと流れおちる。


「もう…飲めなくなっちまったか…。」


ミサキの背中でマールがボソッと

「不味そうだしな…吐き出すだろ。」呟く。


パルもその意見に小さく頷いていた。


「いや…多分ミサキには五感がほとんどねぇ。」


「だから味も匂いも、わかんねぇ……分かるはずもねぇんだよ。」


俯くクレア、自分の頬を軽く叩き

気合いを入れた。


クレアは、突如として毒…いや病理食を

口に含む。


そしてミサキの口に魔力とともに流し込む。


以前に炭化したメルへ治療薬を、流し込んだ時を思い出したクレア。


その時は、魔力で治療薬を中和する。


それにより気化させる事に、成功し

メルの体内に治療薬を浸透させた。


もう身体機能が低下している

ミサキの為に口の中で病理食を気化させていた。


ミサキの喉仏が微かに上下する。


まるで腐った肉を食べているかの様な臭みと舌先へ微かな痺れがクレアを襲う。

 

何度も吐きそうになるが、必死で堪え、

口移しで病理食をミサキに食べさせた。


器の中が空っぽになる。


「へ…ヘヘ、なんとか食わせれた。」


クレアが口を開く度に、汚泥の様な匂いを

撒き散らす。


そして胸ポケットから鉄の瓶を取り出すと

それを、一気に飲み干すクレア。


「うげぇ〜ヒデェ味…くそ食ってるみてぇ。」


魔物の様な紫色へと染まるクレアの舌先。


「くっさ…。」と静かな悲鳴がミサキの背中から聞こえる。


少し酔いが回っているのか足元が

おぼつかないクレア。


それを咄嗟に支えるパル。


ミサキの方へと意識を送り”酒分析”を始めた。


(やっぱり…脳にプリオンが溜まってきてるな…。)


表情が重くそして強張るクレア。


ミサキをそっと横にさせ布団を掛けるマール。


「落ち込むんじゃねぇよ!クレア。」


「あいつらが……必ず、精霊樹の樹液を持ってくる。」


丸まったクレアの背中を平手で叩くマール。


「僕達もクレアさんを手伝います、頑張りましょう。」


叩かれた背中を擦るパル。


「けっ…生意気なガキどもだぜ……。」


口を尖らしため息をするクレア。


張り詰めた表情が少し柔らかくなる。


「くっせ!歯を磨けよクレア。」

鼻を摘み叫ぶマール。


「う…ク、レア先生も…必死なんだよ、このぐらい我慢しなきゃ…。」


鼻をひくひくさせて、目を赤くするパル。


「やっぱ…おめぇら、嫌いだわ。」


そう言うと部屋から出ていく。


その後を追いかける様にパルとマールも部屋から出ていく。


微かにミサキの指がピクッと動く。


◆◆


その頃、ギルアの洞窟に挑もうとしているカフエリ達は…。


「いいか…よく聞け!」


「コカトリスはその眼で見たものを全て石化させる。」


「洞窟内では、呼吸を最小限に抑えろ。」


そう伝えると腕を組み笑うカラ。


「う〜ん…あとぉ、フォードちゃんはもう歩ける?」


先ほどまで、適当な岩に幾何学的な模様を書いていたムーリス。


フォードの額に指を当て

自分の魔力を送る。


熱が収まり呼吸が落ち着いてきたフォード。


「あ…あの、ありがとうございます。」


深々と頭を下げるのでフードが被さってしまうフォード。


「そうねぇ〜、お礼はあの子に言ってあげて。」


カヨウへと視線を送り微笑む。


自分の方を見ているムーリスに

少し苛つくカヨウ。


悲しげな表情を見せるフォードはカヨウの傍に近づいてきた。


舌打ちをするとフォードに白い腕を纏わりつかせ笑う。


そしてフォードの耳元で一言、囁く。


「謝ったら…許さないから。」


そう言うと八つ当たりなのか

ネミルの耳を引っ張っていた。


「な、なんにゃ!痛い。」


赤くなった耳を擦るネミル。


フエンの背後に隠れる。


何故かフエンはネミルの尻尾を噛む。


「もういやにゃー!」


冷たい岩を背に二人を睨む。


そんな騒がしさを気にせずに

カフエリは風の声に耳を澄ましていた。





豆知識


プリオンとは


正常なタンパク質『プリオン』が歪み

異常なタンパク質『プリオン体』に変質して

しまう。


それにより起きる疾病として『ヤコブ病』『狂牛病』が有名である。


ちなみに異常プリオン体は、感染し熱などにも強い恐ろしいタンパク質である。

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