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フエタ



昼間の強い日射しと煮えたぎる錬金釜の熱で物凄く暑い。


砂漠地帯特有の寒暖差により

昼は55℃以上熱波が襲い、

夜は氷点下-15℃以下になる。


アユムの結界により以前は適温で維持していたが今は破壊されそれが無い。


建物の中は、アユムの能力により、気温がかろうじて一定に保たれているのが救いであった。


だがそんな過酷な状況下でも、

アユムのマジックゴーレム達は

健気に二十四時間、働き結界を修復している。


製作者のアユム自身は、クリエラの膝枕に

喜びだらけているのに……。



ミレイの耳がピクピクと動く。

外から騒がしい子供達の声が聞こえる。



「ちょっと!ちゃんと歩きなさいよ!マール」


「ネェ、ほんとにボク達が行っても良いの?」


「…ありがと。」


「助かったよ…。行き場が無くてさ。」


フエンとカフエリが「ただいま!」と大声で騒ぐ。


急に騒がしくなるメル達の家。


カフエリが「いいからこっちに来て。」と

子供達をリビングに連れて来る。


「おぅ~。お帰り、二人とも、で町の状況はどうだった?」


クリエラの膝枕で寝転がりながら聞くアユム。


うつむき神妙な表情を浮かべている

カフエリとフエン。


その空気で何かを察したアユム。


そしてクリエラもアユムが

言う前に、動けないアユムの

身体を起こし背後で支える。


カフエリとフエンが自分達の眼で見た事をそのまま話し始めた。


もう陽炎の町に住まう住人達はほとんどいない。


ノボルの残虐性と恐怖を知る住人達。


この場所が安全では、無いと考え家財道具を持って町から出て行った。


町に残った者達は、この場所

それ以外に居場所が無い者達だけであった。


「パル達の家、壊れちゃったんだ。」


「…みんなここに住んでも良い?」


カフエリとフエンは、町長でもあるアユムにお願いしていた。


「うん…。別にいいよ。」


はしゃぎ喜ぶパル達。


余りにあっけらかんと言うので


もしかして適当に言っているのでは?


その様な考えが二人の脳裏によぎる。


だが…。現実に断られても

困るのであえて触れずにいた。


フエンがキョロキョロと周りを見渡す。


「メルがいない。」


鼻をひくひくとさせカフエリがくしゃみをする。


「それになんか、この部屋、臭くない?。」


爪を研ぐミレイがクスッと笑い

ユウトが原因だと二人に伝える。



嫌な予感がよぎる二人は

臭いが強くなる方向へと走る。


昼間なのに薄暗い。


遮光カーテンで日差しを遮っているからだろう。


ユウトの薄ら笑いが不気味に映る。


激しい爆発音と共に煮えたぎる錬金釜から溢れ出した白煙がゆっくりと引いていく。


そこにはうっすらと黒焦げになっているメルの姿があった。


異臭の正体を探りに来たフエンとカフエリが息を呑む。


ユウトがニカッと笑いながら、会心の出来栄えを自慢するように話し始める。


「アハハ…ちょっと失敗したかと思ったけど、結果的には大成功だと思う。」


乾いた笑い声が嘘臭い。


ユウトが指し示す、メルの首元で鈍く光る銀色のペンダント。


それはメルの内に秘められた魔物を生み出す禍々しい力を封じ込めるための魔法具。


メルはその冷たい金属の感触に指先で触れる。


以前にも、これと同じものを

どこかで見たことがあるような、

奇妙な既視感がメルの胸をかすめた。


錬金釜から出るとユウトと共にリビングへと向かうメル。


彼らが離れた後にも少し錬金釜が揺れる。



「たく……うるせぇーなぁ。」



二人と行き違いで錬金部屋へと酒を探し求めて彷徨うクレア。


頭を掻きながら歩いて来た。


錬金釜から一人、ひょこと円らな紅い瞳を持つ銀髪の女性が顔だけ覗かせ怯えた様子で周りを見ている。


そうとは知らずにクレアが何かを探していた。


「おっ確か…ここを、こうして……。」


不気味などくろの置物を見付けると、

右目の穴に指を入れてゴソゴソと動かす。


どくろの口がギギィ〜と開く。


クレアは手を突っ込み笑みを浮かべ「おっ、多分これだな。」何かを見付け取り出す。


その手には『ポールディンの涙』と

ラベルに書かれている、高級そうなシャンパンがあった。


「へへ、やっぱり…あいつ金、持ってんな。」


舌を出し笑うクレアの背中から

うっすらと悪意の気が漏れる。


錬金釜からそんなクレアの様子をずっと見ていた銀髪の女性は突然と声を発する。


「ママ!」女性は、クレアを

強く抱き締めしがみつく。


何かに抱き付かれ「ひゃ!」と声が出ると同時に折角、見つけたシャンパンを落としてしまう。


その音を聞き付け真っ先に錬金部屋へと駆け付けたのはミレイだった。


裸の銀髪の女性がクレアに強くしがみつき

甘えている光景を見て理解に苦しむ。


後からドタドタと足音が聞こえてくる。


「ちっ…まずい。」


ミレイは錬金部屋の前に立ち

「この部屋に入るな!」と人を誰も入れないように立ち塞がる。


「なんで?」とユウトが部屋へと入ろうとする。


しかしミレイに腕を噛みつかれ

諦めて待つことにした。


その声で一瞬、頭の中が真っ白になっていたクレアは我にかえる。


「と、とりあえず、服を着ろ。」


近くにあったユウトの白いローブを銀髪の女性に無理矢理着せた。


部屋の外からミレイの声がする。


「もう良いぞ。とりあえず服は着せた。」


それを合図に皆を部屋へと通した。


ぶかぶかのサイズが合わぬ白いローブを身に付けた美しい銀髪の女性にメル達は言葉を呑む。


光を纏う銀色の髪が静かに流れ、彼女の微笑みは、その場にいる者達を優しく包み込む。


そして醸し出す暖かい雰囲気がメルの面影に何処か似ていた。


更にクレアに対して「ママ」と呼び、無邪気に甘える様子を見てユウトはこの前の出来事を、思い出していた。


それは、メルがクレアを二階の寝室に運んで行った後、少しドタドタと物音がしたことだ。


(まさか…メルさん!?)


わなわなと震える口を必死で

抑えるユウト。


そんな、不穏な空気が流れるがそれを見事にぶち壊すロウガ。


「ナァ、メルとクレアのこどもカ?」


紅い瞳を持つ銀髪の女性を指さしメル達に

問いただす。


クレアとメルが赤面する中。


昼過ぎのまどろむ夢から目覚めたカラとムーリス。


「私達が、あの時一緒にいたからソレは出来ないわよ。」


エルフの考え方には多少のズレがある。


そのせいなのか、ありのままの

可能性を話し始めた。


それを聞きロウガとユウトは「あぁ~。」と納得してしまう。


しかし…。彼女は何者だ?


原因を探るためユウトは錬金釜を調べ始める。


「分析完了。マスターがメル(材料)を錬金釜に入れる際、分裂薬を誤って混入させた事による物理的エラーが原因です。」


錬金釜の声は持ち主にしか聞こえない。


「メルの魂を二つに分けて、封印具を付けないと闇の力を封じれない程に強大なんだって。」


満面の笑みを浮かべ嘘を付くユウト。


周りは納得するが一人だけ疑っている人物がいる。


「後で話があるユウト。」

ひっそりと耳元で囁くミレイ。


背筋が凍り付くユウトであった。


メルは錬金釜から生まれた自分の分身に

近付くが、銀髪の女性は怯えクレアの背後に隠れてしまう。


怯える銀髪の女性にフエンとカフエリが近付く。


「ママふたり?」と首を傾げる銀髪の女性。


考える事が面倒になったのだと思う。


メルから生まれた銀髪の女性については

なついているクレア達に任せることにしたユウト。


やっと起きたカラとムーリスに

精霊樹の異変について二人に尋ねた。


表情が急に曇りやつれた表情で精霊樹に起きた異変を語り始めた。


豊かな命を育むはずの精霊樹には、今、木を枯らす存在である『悪魔ラプラス』が住み着き、その根から精力を吸い尽くそうとしているのだという。


精霊族の力をもってしても抗えず、外の世界に解決策を求めて飛び出したものの、不運にもマレビトのカワシマソウに捕らえられてしまったのだと二人は悔しげに拳を握った。


「これから、あの恐ろしい霊妄の雲海を突破する方法を教える。」


「精霊樹を救う為に、準備を整えてくれ。」


カラの悲痛な決意が込められた言葉に、メル達一行は静かに、しかし力強く頷いた。





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