最終章『終焉と再生』インガ
未熟な私の物語をここまで、読んでいただき
ありがとうございます。
皆様には感謝しかありません。
この後メル達は精霊樹のある場所へと旅立ち
そして終焉に突き進んでいきます。
メル達が進む道を一緒に見ていただければ幸いです。
改めて宜しくお願いいたします。
※尚完結させた後に読みやすく誤字脱字を修正し校正をいたします。
途中内容が少し変わったと感じてしまった場合申し訳ありません。
朝日が射し込み、開けた窓から
時折と、聴こえる小鳥達の口ずさむ春を呼ぶ歌。
窓から吹き込む。
心地よき風が、セレエ海岸の
潮騒と磯の香りを運んで来る。
「父上!この賢者『ターメル・クレセント』の魔道書は、ほんとに面白いです。」
アルメーリアに存在する
数多の禁呪魔法を記す魔道書。
僅か、齢七つの我が子が
古代精霊語で書かれた文章を
読み理解する。
難解で複雑な古代精霊語は、
崇高な賢者や博学な学者でさえ
苦戦する言語。
「そうか、そんなに面白いか、グラン。」
「この子の将来が楽しみだな。なぁ…。メリア?」
指を傷だらけにして、妻のメリアは、グランの寝間着に名前を刺繍していた。
「…?どうしたの、ノボル。」
どうやら作業に夢中で、
私の言葉が、耳に届いていなかったのだろう。
風に揺れる銀色の髪が
日射しに照され、流れ星の様に美しい。
「いや……。君が綺麗だと思っただけだよ。」
戸惑い少し耳を赤くして照れる彼女。
思わず出た言葉に私まで耳が
赤くなる。
手元にあるシェルニの花片が一片と浮かぶハーブティーを一口と啜り心を落ち着かせていた。
幸せとは……。
きっとこういうものなんだと
息子と妻を眺め、柄にも
無い事を考え、物思いに深ける。
なん…だか、眠、くなって……きたな……。
瞼が鉛の様に重く感じ重力に
任せゆっくりと閉じる。
深く深淵に染まる視界。
海底の奥深くに溺れる様に
意識が沈んでいく。
ふと眼を開くと冷たく吹き荒れる吹雪。
血を流す痛々しい姿のメリアが私を哀しげに睨む。
その顔は幾つもの痣と瘤で
青く腫れ、口からは血を流す。
「ねぇ……。どうして助けてくれなかったの?」
私の首を強く締め付ける。
「すまない……メリア……。本当に。」
メリアが魔物の姿へと変わっていく。
「愛して無かったの……。何故、会いに来てくれなかったの?ノボル。」
何故か額から汗が流れ手が震える。
「違うんだメリア、愛している本当だ!」
吹雪の勢いが更に強く激しくなる。
「嘘だよ……。父上は、僕達を見棄てたんだ。」
顔が炎で焼けただれていく幼きグラン。
◆◆
「ぐぁ!!止めろ、どうして!?」
酷く夢の中でうなされている
ノボル。
セレエ海岸の波が虚しく音をたてる。
喘ぎ叫ぶノボルの姿を慈しむ様に愛でる紅き眼を持つ魔物カヨウ。
「あはんん…。いぃの…あはぁはぁ……。身体がぁ熱いぃ。」
ノボルが一言、叫び唸る度に甘い吐息を洩らし悦に浸り、その身を悶えくねらせる。
カヨウは暝砡の血によって
サキュバス『夢魔』となった。
『夢魔』はその名の通り夢を
自在に操り獲物の精気を喰らう。
ましてや『ナイトメア』という能力をメルから授かっている。
自在に悪夢を見せ
その夢で受けた傷は現実でも
同じ傷が出来る。
そして夢で命を絶たれれば……。
現実でも息を引き取る。
サキュバスのカヨウからしたら
最も相性の良い能力なのである。
ノボルの額に軽く爪をたて笑うカヨウ。
「ウフフ……。早めにメルから
ご褒美が貰えそう。」
甘いお菓子を舐めるように
苦しみ悶えるノボルの
頬を紫色の舌がなぞる。
全てを見通していた筈のノボル。
ここで初めての誤算が生まれた。
メル自らが進んでカヨウを魔物へと変えた事。
それによりノボルはかつてない程に追い詰められていく。
◆◆
「うぉーー!何をするユウト!?」
錬金釜の中へ押し込まれるのを必死で抵抗するメル。
「いぃ!から!封印具を作る為に!ここに!入って下さい!!!」
メル人形達と力を合わせ、メルを錬金釜に詰め込もうとしているユウト。
コーヒーを飲みながら
その光景を冷ややかな視線で
見ているクレア。
ロウガは悲鳴をつまみに酒を飲み、ミレイは縁側で爪を磨く。
フエンとカフエリは、陽炎の町に異変が無いか様子を見に行っている。
クリエラの膝の上で耳掃除されているアユム。
カラとムーリスはもう昼を
過ぎているのにまだ寝ていた。
断末魔の様な悲鳴が響き、錬金釜の中に閉じ込められたメル。
「よぉーし!またやるぞ!!」
ユウトは、錬金釜に魔力を込め蓋の隙間から棒を捩じ込み混ぜている。
メルの意識が徐々にユウトの魔力へと溶けていく。
部屋中に腐敗した果実の様な
異質な香りが充満していた。
今回メルは暴走して魔物を産み出してしまった。
その様な事が再び起きないようにメル自体を分析して力を封じる道具を作っていた。
次第に錬金釜からグツグツと
煮えたぎる音がする。
(煮えてるけど……。メル、死なないかなぁ?)
「あっぁそこそこ。」
クリエラの耳掃除を心地よさそうにアユムはされていた。
誰もこの光景を指摘するものがいないのである。




