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タメイキ



「ふぅ…。」口から溢れる息。


一息つける我が家へとたどり着いたメル達。


クリエラが皆に、暖かい

ハーブティーを出してくれた。


「ごっめん…。今、手が使えないから、

飲ませてくれるかな?」


アユムは痛ましい傷痕が残る手を見て笑う。


クリエラが駆け寄りアユムにハーブティーを飲ませている。


それはそれで幸せそうな表情を浮かべているアユム。


ロウガは呆れていた。


「僕も飲めない~ミサキさんあーんして。」


ランドにメル人形を置いて両方を管理するという形で戻ってきたユウト。


「ふざけるな!自分でできるだろ!」


何故か、顔を真っ赤にしながらユウトに

ハーブティーを口へと流し込むミレイ。


カフエリとフエンはソファで

寝息をたてている。


幼い二人にとって恐らく、メル人形の使用が思っていたよりも相当の負担だったのだろう。


ブランケットを掛け、

あどけない姿で寝ている二人の頬を指で触れ微笑むメル。


意識の無いミサキを、二階の寝室に運び、妹クレアもその隣に連れて行く。


「ねぇ…さん。」


何も反応を示さぬミサキに声を掛け続ける。


もうクレアの瞳には希望の欠片も無い。


一人にしたら取り返しのつかない事をしそうな危うさを感じていた。


「クレア…。精霊樹を知っているか?」


突然メルから聞かれ、少し戸惑うクレア。


「…あぁ。知ってはいるが…。」


「それが…どうした。」


ミサキの呼吸音を耳で感じ

肌の温もりを確かめるクレア。


「俺は精霊樹の樹液を手に入れようと思う。」


「それがあれば皆を救える。」


メルは椅子に掛けクレアを見つめ話す。


鼻で笑うクレア。


「できる訳ないだろ!精霊樹は『霊妄の雲海』を越えないと行けないんだぞ。」



『霊妄の雲海』


それは古代の精霊族達が

自らを守る為に造り出した黄泉の世界。


その場所を越える為には死ななくては通れない。


いわば三途の川である。


生きたままに入れば、一瞬で肉体から魂を

引き剥がされ白い闇を彷徨う魔物と化す。


クレアの反応は当然であった。


「それにはあてがある、”カラ”、”ムーリス”。」


扉の向こうで待機していた

二人のダークエルフが部屋の中へと入る。


黒く長い髪を後ろに結わえ

腰に2本の短剣を携えている。


何処か雰囲気が重々しく無愛想だが、メルに渡されたシルバーメイルが、少しサイズが合わず"胸元がきつい"と笑うカラ。


「私達が精霊樹までお連れします。」そう言うとメルの足元に跪く。


風により無造作に、揺れきめ細かい黒髪が星空の様に不思議な輝きを、放つ。


メルから渡された水色のローブを身に付け照れているムーリス。


「まぁ私達はこれでも元『古代精霊』だからさ。」


「霊妄の雲海についてはどーんと任せてよ。」


そして跪くカラを見て”なんかやんなきゃ”と思ったのか…。


指先から水の兎を造り出した。


空を跳ねる度に足跡に波紋が広がる兎。


その兎は淡く輝き放つとふわりと消えてしまう。


クレアはその兎に魅せられていた。


腰に手をあてて鼻を高くするムーリス。


カラも短剣を構え何かをしようとしたのを

メルは笑顔で視線を送り制止した。


少し肩を落とすカラ。


その微妙なやり取りにクレアの表情が少し和らぐ。


「ふふ…。で私に何をしろって?」


いつものぶっきらぼうなクレアに戻ってきた。


「クレアにはミサキの面倒を見て欲しい。」


メルがそう話すとクレアは俯むいてしまう。


「わりぃが…。それはできねぇ。」


「見ての通り、手足をノボルに潰されちまった。」


「一人で用も、たせねぇ身体になっちまったからよ…。」


それを聞いてにやりと笑うメル。


「…クレア。少し血を貰えないか?」


それを聞いて表情が強ばるクレア。


「確かにメル…。あんたの眷属になりゃ手足は戻るかも知れねぇ。」


「でも、あんたの眷属になったらあたしら

マレビトは能力を失うんだろ?」


クレアの話を聞いて笑うメル。


「眷属にする!?違う。確かに、マレビトに暝砡の血が混ざれば能力は使えない。」


「だが、クレアにお願いしているのは俺の

眷属になれではない。」


「身体に合う物を造る為にクレアの血が欲しいと言っている。」


「俺のトレースの力だけではその人にあった”手足の代わり”は造れないからな。」


やっとメルの言葉の意味を理解したクレアは一言「頼む。」とだけ伝えた。


メルはクレアの首筋へ治癒の炎

を放ちながら少し切り血を瓶に詰める。


全く痛みも感じず、むしろ暖かくて心地好いと感じていたクレア。


少しボーとしていた。


メルはクレアの身体に触れ瓶の血を飲み干し『トレース』を行う。


するとクレアの全身の皮膚上に薄く伸びる膜が覆い傷痕も分からなくなる。


「どうだ。動かせるか?」


クレアの顔を覗き込むメル。


メルの顔を間近に見つめるクレア。


よくよく見ると整った顔立ちで声も暖かく

懐かしい感じがする。


メルの羽織る漆黒のローブから時折見える

引き締まった肉体。


そしてメルからほのかに香る甘い匂い。


そのせいなのか少し顔を赤らめ「頼む…ちょ、ちょっと離れてくれ。」と話すクレア。


そしてメルの身体を退かそうとする。


「あっ!!動く、うごくぞ!」


ベッドから起き上がると、手足をバタつかせ子供の様に喜ぶクレア。


床からドンドンと叩き返され

「うルせぇ!」と怒鳴られる。


恐らくロウガだろう。


舌を出して笑うクレア。


「姉さんは私に任せな。」


「メル…あんたは死ぬんじゃないよ。」


そう伝えるとミサキの手を優しく握っていた。


クレアの魂に輝きを感じた

メルはカラ達を連れて部屋から出ていく。


するとロウガの怒鳴り声で起きたのか

階段をドタドタと掛け上りカフエリとフエンがメルにまとわりつく。


「メル、やっと見つけた。」

左手を握り締めるカフエリ。


「ロウガ…、うるさい。」

逆立つ髪を弄りながら怒るフエン。


そんな子供達を見てメルの耳元で囁くカラとムーリス。


「あの奥方様はどちらに?」


「はぁ?」と首を傾げため息をするメルであった。


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