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ラストステージ"ランド"

メルフォード達が、始まりの遺跡、『コア』にたどり着いた時。


その裏側で、過去の時代もまた決定的な破滅へと足を踏み入れていた。


ユウトとミレイ達が操る百二十体のメル人形が、ついに目的地である『ランド』へとたどり着く。


そこは名前が示す通り、

色鮮やかなメリーゴーランドや巨大な観覧車。


絶叫を誘うジェットコースターが立ち並ぶ。

夢のような遊園地、国家だった。


だが、そこに集う様々な種族の住人たちは、見る者の背筋を凍らせる異質さを放っていた。

全員が銀色の首輪をつけ、顔には貼り付いたような笑顔を浮かべているが、どこからも

笑い声は聞こえない。


その動きは淡々と、機械のように無機質で無感情。


生きている者の血の通った気配がなかったのだ。


思わずカフエリがぼそっと言葉が溢れる。


「嫌な感じ…。なんか気持ち悪い。」


カフエリの一言に苦味ばしった表情を浮かべるユウトとミレイ。


「…気持ち悪いか…。だよね。」


声が重々しいユウト。


「すまない…。」


何故か謝るミレイ。


ユウトとミレイは苦渋に満ちた真実を

カフエリに話した。


ノボルは自らに敵視してきた

種族や、わざと攫ってきた民に『支配の種』を飲ませ、その意志と人格を完全に奪い去ったのだ。


かつてノボルに逆らう国々を滅ぼし、民に死ぬか、あるいはすべてを捨てて支配されるかを選ばせた。


そして捨てる道を選んだ者達は、このランドで意志なき笑顔を浮かべる敗者へと成り下がる。


ユウトはそのあまりに非道なやり方に耐えられず、わずか二ヶ月という短期間で敵対する国々へ足を運び、錬金術の力を駆使して次々と和平を結んでいった。


「僕はノボルの…やり方が嫌だった。」


「ノボルには笑われたよ、何も知らない奴の綺麗事だって…。」


邪病に苦しむ精霊族には、自ら開発した治療薬を、安価で提供して滅びへの道を回避し。


常に争いを続けていた、獣人族や魔族、人間族の間に入って、その真意を汲み取った。


争いの根源は、長引く戦争によって土地が枯れ、作物が育たない事による深刻な食糧難だった。


飢えから逃れる為に豊かな土地を奪い合うしかなかった。


そんな彼らへ、ユウトは枯れた土を瞬時に肥沃な大地へと変える肥料を授け、平和へのきっかけを与えた。


飢えによる餓死者は、以前より遥かに減っている。


ユウトはいつしか喜ぶ民達に勇気と力を貰っていた。


今や多くの国々がノボルの圧力ではなくユウトという個人を、心から慕うようになっていた。


ミレイも最初はユウトの理想を「無理だよ、ユウト。」と鼻で笑っていた。


しかし、彼が容易く国々の難問を解決し、民に愛される姿を見て、自らの信念を疑い始めていた。


隙を見せれば殺される、守りたければ、

強くなれという

ノボルの教えは間違っていたのではないか。


全ての種族と協力して仲良く生きられるのなら…。


彼女はアユムが裏でユウトと結託して作り上げた反逆組織『トロイの木馬』に所属する決意を固める。


だが、そんな淡い希望を打ち砕く絶望を、

ユウトは、ノボルの研究所で目撃してしまう。


自分が錬金術で必死に治した邪病『血魔の叫び声』の正体である悪魔サモデスが、培養液の中で人工的に作り出されていたのだ。


そしてサモデスが浸かる培養液を見て笑みを浮かべているノボル。


「後…、後少しだよ。メリア。」


悲しげに呟くノボル。


ノボル自身が『創造の力』によって災厄を捏造し、民を苦しめていた。


サモデスを追い続けたミレイもまた、

ディロアの地で邪病を撒き散らすサモデスの傍らに立つノボルの姿を発見し、確信を得る。


二人はノボルとの争いを望んでいなかった。


だが…。今回ばかりはノボルを追い詰め、マレビトの頂点の座から引き摺り下ろそうと考えていた。


メルの暝砡の力。


『能力封印の(アンチマジック)』があれば、ノボルの創造の力を封じる事ができる。


話し合いができるはずだという、ユウトの甘い考えがそこにはあった。


しかし、ランドの様子は彼らの予想を遥かに超えて変貌していた。


(う〜ん…。何であそこにマーディンの長やボールデンの女王が?)


ユウトがランド中に仕掛けていた盗聴器の受信機をメル人形から取り出す。


チャンネルを回し周波数を合わせる。


「ユウトが我々の力を、借りたいとは…何だろうか?」


「何でも良い我等は、ユウトならばいくらでも力を貸そう。」


「フフ。案外…、ユウトに嫁ができた報告かもな。」


そこからはユウトの名前を騙り、各国の王や女王、長たちを重要な話し合いの名目で招集したと話していた。


恐らくノボルの策謀だろう。


その直後、ミレイは激しい悪寒と苦しみに身を悶えさせた。


彼女の体に流れるメルの血が、激しい憎悪と破壊的衝動に共鳴し、暴走を始めたのだ。


「ミレイさん!どうしたの?」


思念相石を放り投げ、ミレイに駆け寄るユウト。


「…メルが、闇に…向こう側に行ってしまった。」


ミレイは震える声でそう告げる。


「ロウガも私とは違う…。けど暝砡の力を宿してる。」


「これは…。魔族と従者、まるで…眷属。」


かつてメルの血を分け与えられたロウガが、一線を越えた何かへの変貌を遂げていると

話すミレイ。


カフエリは咄嗟にメル人形を木陰へと隠し、思念相石を離すと、その異変をフエンとフグエルレンに伝えた。


すぐに向かおうとするフグエルレンだったが…。


「いくな!!この先は…。絶対に!」

鋭い声で止めるアユム。


「何故だ!何故止めるアユムよ!」

取り乱すフグエルレン。


「この先は、決して、変えてはならない未来だからだよ…。」


何か含みを帯びた笑みを浮かべアユムの全て『この先の真実』について語りだす。


アユムは、以前に”ミサキ”から、これから起こる全ての出来事を聞いていたのだ。


ミサキがかつて愛した暝砡の男、その名は『ターメル・クレセント』。


だがその姿は今の屈強な彼とは違い、

黒髪のひ弱な、戦いを好まない青年だった。


人間族の王ディロアがノボルによってゴブリンに変えられた事で自由を得た、平和を好む暝砡の者らしい。


「何故、全て知っていて防がない!アユムよ。」


怒り狂うフグエルレンに対してアユムは返した言葉。


「今を変えたら、世界が滅ぶからだよ。」

フグエルレンは、何も言えずにたたずむ。


その頃、魔王と化したメルがランドへと足を踏み入れる。


メルが歩みを進める度に、その足跡からは、実体のない闇の魔物が溢れ出る。


魔物達はランドの無抵抗な住人達を無差別に襲い始めた。


喉笛を切り裂かれても悲鳴すらあげぬ住人達。


ユウト達は必死にそれを、食い止める為にメル人形を操り魔物達と戦う。


カフエリは、直接メル人形を操ってメルの前に立ち塞がる。


「メル!止めて!何で?そんなこと…しないで。」


祈りのようなカフエリの叫びもメルには届かない。


そこにいたのはかつての優しいメルではなかった。


「ここで全てを終わらす…。」

怒り狂うメルの禍々しい気迫。


高笑いがランドの上空から聞こえる。


ノボルはその光景を冷酷に見つめ笑っている。


招いた各国の長たちに恐怖を植え付ける言葉を落とすノボル。


「これこそが!暝砡の血を引く化け物の正体だよ!」


「そしてユウトは、その暝砡の化物と通じている人類の敵だ!」


ノボルの声に反応するメル。


メルは怒りと憎悪の赴くままに漲る闇の波動をノボルにぶつけた。


黒い玉が渦を巻き、ランドの観覧車を呑み込み空間が捻れる。


『創造【聖なる導き】』


光の玉がノボルの指先から生まれ放たれる。


激しくぶつかる聖と闇の力。


それによって弾き飛ばされ、

周囲の住人たちが次々と犠牲になっていく。


その光景に一番心を痛めている少女。


「メル…。みんな、死んじゃう…。」


カフエリの頬を伝う涙と魂から放たれる悲壮感。


その刹那、メルの理性が一瞬だけ呼び戻された。


(…カフ、エリ?!泣いてる。)


メルの背中には白と黒の混じり合った六枚の羽根が広がる全てを消し飛ばそうとする

極大の力がノボルへ放たれた。


「ばか…な…。暝砡!!」


絶対的な強さを誇るノボルでも

直撃は免れないメルの最強の一撃。


「あんたは死なせねぇ!!」


額に傷のある男がノボルを庇う様にメルの

一撃をその身に受ける。


「ミカリさーん!」


ユウトが思わず叫ぶ。


ノボルを庇う男は『トウドウミカリ』神を守る七人の天使ウリエル。


最もノボルを信頼していた戦士であった。


ユウトとミレイもミカリの人柄が好きであった。


裏表がなく真っ直ぐに戦う。


弱きを守り悪を挫く。


ミカリを慕う者は、マレビトに数多くいた。


そんな彼が今、黒焦げの塊となり地面にゆっくりと堕ちる。


ノボルは地面にぶつかる前にミカリを抱き抱えた。


呼吸も脈動も無い。


「すまない…。ミカリ。」


ノボルはトウドウミカリの遺体を静かに抱え上げる。


「今は引く。暝砡…。次は死を与えよう。」


と告げてあっさりとその場を去っていく。


「何てことを…メル。」

何処で覚悟をしていたミレイとユウト。


しかしいざ現実になってしまうと心が乱れる。


そして、あまりにも潔すぎるノボルの引き際に、ユウトとミレイは拭い去れない、深い違和感を抱いたまま、立ち尽くすしかなかった。



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