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キオクノカケラ


始まりの遺跡『コア』へと向かう途中。


虹色の鯨の背で言葉を交わすメルフォード達。


針を刺すような沈黙が流れていた。


メルフォードと、フエン、カフエリ、

そして、彼らを険しい目で見つめるメグラとユウ。


ついにメルフォードが静かに問いかけた。


「……なぜ、僕達をそこまで敵視する。」


メグラは鼻を鳴らすと、無言で立ち上がり、羽織っていた上着を脱ぎ捨てた。


その背中を見て、フエンが息を呑む。


屈強な獣人の背中には、不気味に蠢く赤き

大きな目玉が埋め込まれていた。


「俺の親父は、ロウガ。メルの…。暝砡の血を貰ったせいで…。」


「魔物と獣人の力を併せ持ったバケモンになっちまった。」


メグラの声は震えていた。


ロウガは本能のままに生き、

獣人族の頂点に立ち、多くの妻を娶った。


しかし、争いを好む彼はマルビロへと侵攻し、そこで戦士ソウガンとエルフの戦士に

阻まれた。


「親父は、そのエルフ…。カフエリに殺された。」


「俺たち一族の誇りを奪った女を、俺が許せると思うか?」


憎悪の矛先を向けられたカフエリは、悲しげに目を伏せ、静かに口を開いた。


「…ロウガは、私に頼んだの…。」


「まだ、彼に『自我』が残っているうちに」


「なんだと?」


「ロウガは悟っていたわ…。」


「自分の中の破壊と殺戮の衝動が、もう抑えきれないところまで来ている事を。」


「このままでは、愛する妻や子さえも自らの手で殺めてしまうかもしれない…。」


「だから、もし自分が理性を、失い他国へ

攻め込む様な時は、私に、止めてほしいと…。」


カフエリだけが知っていた、メグラの父の

最期の真実。


メグラは言葉を失う。


そして背中の目玉の動きが激しい。


沈黙を破ったのはユウだった。

彼女は普段外すことのない眼帯に手をかける。


「私も同じなのよ。メルの…魔王の存在そのものが私達の呪いなのよ。」


眼帯の下から現れたのは、メルと同じ不気味に輝く紅い瞳だった。


「私の先祖カヨウは、メルの血を貰い眷属となった。」


「私は人間族でありながら魔物の力がこの身に宿る修道者。」


「『破壊僧』として生きる羽目になったの。」


ユウの目的は、魔王の眷属として人々を苦しめ続ける先祖カヨウを討伐し、一族の因縁を断ち切る事。


その元凶こそが、魔王メルなのだと告げた。


重い過去を背負ったまま、一行はついに

『コア』の最深部へと辿り着く。


そこにいたのは、生きた竜ではなかった。


水晶のように透き通った輝きを放つ竜の骨。


そして、その中央で心臓のように脈打つ、

真っ赤な結晶石。


「これが……コア……」


導かれるように、誰からともなくその結晶に触れる。


その瞬間、凄まじい衝撃と共に、場にいる全員の意識が薄れ別の意識が流れてきた。


流れてきたのは、メルの記憶。


それは、言葉では表せない…。本能と破壊的衝動が常に、メルを闇へと引きずり込もうとする。


その度に自らを、傷付け理性を保とうとしていた。


そしてメルの根底にある恐怖。


それは、いつか自分が自分で無くなった時。

愛しき者、仲間、友を己が持つ深く光を

通さぬ闇へ連れ込む事。


メルは生まれた時から、死を望んでいた。


それは母親が絶対的な悪により命を落とす、そしてその穢れた血が自分にも流れている事。


母親が、亡くなったのは、自分のせいだと、悩み、罪を償いたかった。


だから誰かの為に身を削り、命を尽くし戦い守る事でメルは、心の闇が浄化されていく様な気がしていた。


だが…。マレビトの頂点、神ノボルに対して生まれる、激しく燃えるような憎悪。


今まで必死におさえていたものが一気に溢れ理性を奪っていく。


メグラも、ユウも、そしてカフエリたちも、抗いようのない”メルの苦しみ”の濁流に飲み込まれていく。


その悲しみにカフエリは蹲る。


その嘆きにメグラは怒りを感じる。


その欲望にフエンは歯を食い縛る。


その無力感にユウは涙を流す。


そしてメルが望む事を知ってしまう

メルフォード達。


メルの切望する儚い想い。


余りに幼く、余りに尊い。


「誰かを救い助け、天国にいる母に一目でいいから会いたい。」


虚しい夢であった。


メルが背負ってきた闇の深さを知った時、

憎悪は形を変え、遺跡の中にただ

子供が寂しげに泣くような風の音だけが

静かに響き渡っていた。


メルの記憶を全て受け取ると

メルフォードには新たな力が宿る。


その力は、『封玉』魂を封印して結晶化する力である。


暝砡の血がたぎるメルフォード。


その気配を不安げに見つめる

ユウトとミレイ。


二人は密かに覚悟を決めていた。


もしもメルフォードもメルと

同じく道を踏み外したら…。


その時はメルフォードを刺し違えても封じ込める事。


カフエリとフエンがそれを防ぐ事はできない。


何故ならばユウトにとっても大切な親友。

過去のメルとの命を掛けた約束だから。




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