カコノセイ
メル達のいた時代から百年後の世界。
アユムから言われコアへと向かうメルフォード達。
マケアンディの岩山を越え
今は、煮えたぎる灼熱の海にて
立ち止まる。
「熱い…。こんなの…。どうやってコアへ行くんだよ。」
メルフォードの顎から伝う汗が地面に落ちる前に蒸発する。
「そうねぇ…。どうするフエン。」
涼しげな表情で笑う、カフエリ。
「…それより。先にアレなんとかしないと。」
灼熱の海の方を指差し淡々と
答えるフエン。
メルフォードを睨みつけ目が血走る虹色の鯨が叫ぶ。
ボォーーーーーーー!
大地を激しく揺らし、次々と
精霊達を召還する虹色の鯨。
風、水、火の精霊達が、一斉にメルフォード達に襲い掛かる。
風の精霊が竜巻を起こし、
火の精霊が
凄まじい炎を吐き出す。
二つの精霊が力を合わせる事により
灼熱の竜巻が吹き荒れ溶岩の海が
更に熱を帯び紅く燃える。
更にたたみかけるように水の精霊が数少ない大気中の水分を一点に集中させた。
それをメルフォード目掛け乱射する。
レーザーの様な速度で撃たれる水滴。
地面に小さく深い穴が空く。
カフエリとフエンはクスと笑みを浮かべ自らを守る防壁を張る。
「あなたが本当に、メルと同じなら…。あの程度、何とか出きるわよね。」
静かに座ると、懐から本を取り出し、読む
フエン。
「そうね。メルだったらできるわ。」
村正の刀身を布で磨くカフエリ。
「あんた達は、僕に協力するんじゃないのか?!」
水の精霊達が放つ、圧縮した水滴を黄金の剣で必死に防ぐメルフォード。
その剣技は、確かに凄い。
カフエリ達を睨みながら全てを防いでいた。
だが…今度は炎の竜巻が
メルフォードを襲う。
基本的に戦いを好むメルフォード。
次第に本気となり動きに無駄が無くなる。
『超身体強化【リン】』
メルフォードの全身にある筋肉量が増え、
ひとまわり身体が大きくなる。
黄金の剣を鞘に納めるメルフォード。
柄を強く握り締め、腰を目一杯に捻り一点に力を集中させる、メルフォード。
足元の固まる溶岩がひび割れ
紅く熱を帯びる。
数メートルのところまでメルフォードへと
近づく全てを焼き尽くす竜巻。
鞘に納めた力を一気に解き放つ。
その威力は凄まじい。
巨大な燃え盛る竜巻を一刀両断する。
しかし…。勢い止まらず、
そのまま虹色の鯨の頭部へと
鋭い斬撃が直撃してしまう。
ピギィーーーー!
弱小のスライムを握り潰した様な虹色の鯨がだす悲鳴。
精霊王である虹色の鯨。
それは森人エルフ達や精霊族の神にあたる。
虹色の鯨が目の前にゲートを
開け、精霊族達に助けを求めた。
屈強なエルフの戦士達。
が次々とゲートを、くぐり抜け現れる。
その中には知っている人物もいる。
獣人族のメグラと人間族のユウだった。
「やっと見つけたぞ!暝砡の者!!」
メグラは酒呑の棍棒を大地に突き刺し怒鳴る。
「背後にいるのは…。瞬極のカフエリと零炎のフエン。」
「やはり…あなたも魔王軍なのね。」
グングニルの槍を握り
イージスの盾を構えるユウ。
本来ならば、精霊族のカフエリも、神である虹色の鯨が傷つけられると、怒りを感じる筈なのだが…。意外な反応を見せる。
「私達は…。魔王の仲間じゃないわ!」
「ただ、大切な人を守りたいだけよ!」
村正の柄を強く握るカフエリの殺気は、この場にいる全ての命を刈り取る気迫が感じられる。
「ふふっ…。今度は、焼き尽くしてあげるわ。」
複雑な旋律を指でなぞり魔力を込める
フエン。
空に刻まれた紋様から
燃え盛る炎の魔神達が次々と
生まれ出でる。
凄まじいお互いの殺気と戦気により大気が震える。
(これは…。いけない。メルならば…。)
黄金の剣を放り投げた
メルフォードはメグラ達と
カフエリ達の間に割って入る。
「待って下さい!!」
「僕達が戦い争う必要などありません。」
「それに…。メルが望まない!」
メルフォードはメグラとユウに視線を送る。
「二人は覚えていないのか!」
「仲間だったメルの事を!」
必死の訴えをするメルフォード。
その返答は意外な言葉であった。
「覚えてるにきまってるだろ!!」
「だから…だからこそ…。許せねぇんだよ。」
固まる溶岩に怒りをぶつける
メグラ。
「私もメルの事は覚えてる。忘れる訳無いわよ。」
「大切な仲間だったんだから…。」
唇を噛み締めるユウ。
メグラ達の様子を見て違和感を感じる
メルフォード。
フエン達の方に視線を向ける。
「何故…あなた達、神の使者がメルの事を
仲間と呼ぶの?!」
更に殺気を込め、睨みつけるカフエリ。
「…私も同感。メルとずっと共にしていたけど…。貴方達を知らないわ。」
フエンは、メグラ達の言葉を疑い更に天から数多の焔の玉を作り、いつでも放てる様に
していた。
メルフォードは一か八かで自分が知っているメルの事を語り始める。
未来でカフエリとフエンもメグラ達と冒険者として、仲間として共にいた事。
メルがメグラ達の所属する
『月の雨』のリーダーであり、
共に死線をくぐり抜けた事。
そして…。カフエリとフエンの命を救う為。
二度と戻れぬと分かっていても過去へと向かった事。
とにかく知っている全て必死に話した。
しかし…。メルが仲間であった事は、
覚えてるメグラ達だが
カフエリ達の事は覚えていなかった。
勿論、カフエリはその事を全く
信じていない。
その中でフエンだけが表情を変えた。
突然に炎の魔神や、燃え盛る焔の玉を消して
座り込む。
「言ってる事…。本当かもしれない。」
そう、フエンはコアへと入る中で
[メルが過去へと行く必要が無い世界]を
体験し違う未来を生きた記憶があった。
そして、そこで感じていた事を思い出す。
それはまさにメルフォードが
話していた事と酷似していた。
「コアへ行けば真実が分かるよ!」
どこか頼りなさげな声だが
不思議と落ち着く。
ゲートから誰かが出てくる。
三つの影。
メルフォードはその者達を、知らない。
しかしカフエリとフエンはその三人の事を
良く知っている。
一人は猫背で大きな錬金釜を背負う青年ユウト。
もう一人は、白銀の体毛が全身を覆う美しい獣人ミレイ。
そして…。
最後の一人が黒髪の人間族だが口から時折小さな牙が二つ覗く。
カフエリとフエンは思わす声をあげ驚く。
「ギラン!?生きていたの。」
美しい黒髪を後ろにかきあげ
不敵に笑うギラン。
「やぁ。カフエリ。フエン。」
「まぁ百年生きる人間は普通いないけど…。」
「僕にもノボルは暝砡の血を混ぜたみたいだね…。老化が遅くなったよ。」
「さぁ、あの時の報酬。一回のデートを約束通りしようか!」
「デートの行き先はコアだけどね。」
片眼をつむり二人に目配せをする。
相変わらずカフエリ達の神経を逆撫でる
ギランの行動。
しかし、それ以上に陽炎の町から飛び出したギランの無事に喜びを感じていた。
二人の笑顔が美しく輝き慈愛に満ちていた。
メルフォードは、初めてカフエリとフエンに優しさを感じ、心が何故かざわつく。
どうやらギランは世界中で行き場を失った者達を保護して旅をしていた。
自らの罪を償う様に…。
そこでユウト達と再会すると神の使者として働き、今では神の使者の筆頭ユウトの右腕
として必死で彼らを支えていた。
ギランは、虹色の鯨の傷を癒すと熱心に祈りを捧げる。
虹色の潮を吹く虹色の鯨。
地面へと降りギラン達に背を向けた。
「許してくれたみたいだよ。」
「みんなでコアへ行こう。」
何もしていないのにユウトが真っ先に虹色の鯨へと乗り込む。
ミレイも同じ様に飛び乗り、ユウトの腕を
掴み微笑む。
鼻の下を伸ばすユウトを見て、メグラ達は
呆れる。
フエンは、炎の巨鳥を生み出すとその背に
乗る。
カフエリとメルフォードも乗り込む。
そして、何故かカフエリの背中に張り付く
ギラン。
フエンに蹴飛ばされ渋々と
虹色の鯨へと乗り込んでいた。
「さぁ、コアへ!」
ボォーーーーーーー。
喜びの潮を吹き出す虹色の鯨。
話しが 全く分からず、ただ呆然としていたエルフの屈強な戦士達。
その場にポツンと残される。




