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カワル



コアに触れた後。凄まじい風が襲いメル人形を外へと追い出す。


ブェツクション!


透き通る火吹き竜の鼻から雫が垂れる。


ねばつく不快な液体がメル人形達に纏わりつく。


「細菌性の反応有り。我々は異物として判断。体外へと排除されたと認識。」


「フエン様、我々は、何処へ?」


フエンの指示を仰ぐメル人形達。


(陽炎の町に帰還して、こっちを手伝って。)


それだけを伝えるとフエンからの思念が途絶える。


忠実にメル人形達は陽炎の町へと飛んで行く。


一方その頃、メルはランドに向かっていた。


フエンの強い魂を感じたメル。


大きく深いため息をすると口角が上がる。


メルは急に肌がピリピリとする。


近くから、弱々しいが荒ぶる魂を感じ取った。


(…ロウガ?急ぐか…。)


背中にある漆黒の翼の動きがより激しく

強くなる。


音速で空を切り裂き、天を舞う荒ぶる魂の元へ急いで向かうのであった。


◆◆


「う〜ん…。男にはきょうみぃ無いんだよねぇ。」


漆黒の鎧を身に付ける禍々しい戦気を放つ戦士。


次々と死霊達を呼び寄せる。


ぬかるむ地面からゆっくり這い出る屍

『グール』。


実体の無い悪霊『レイス』



獲物を見つけると、金切り声で叫んだ。


思わずロウガは耳を塞ぎ、風に祈りを捧げる。


白い靄が現れロウガを包む。


『白虎流拳技【狼牙】』


風の精霊が纏う脚蹴りは、実体を持たない

悪霊達を吹き飛ばし、血肉を求めるグール達を蹴り潰す。


漆黒の鎧を纏う者の指先一つで、再生を繰り返す、死霊達に苦戦を強いられていた。


「くそっ!また出てきやがった。」


次々と現れる死霊達に苛つくロウガ。


精神の乱れが

致命的な隙を生んでしまう。


突如として地面から這い出た

腐敗した手がロウガの両足を強く掴む。


動きが止まるロウガに死霊達は

黒い息を吐き出す。


それを吸い込んでしまうロウガは手足が

痺れ自由を失う。


グール達は一斉にロウガの血肉を求め、

噛み付き肉を引きちぎる。


「ぐぁーー!」激痛に苦しむ

ロウガの口を手で塞ぐ漆黒の鎧を纏う者。


「しぃ~…。静かにぃ。男の悲鳴なんて気持ち悪いなぁ。」


「はぁ~あ。てっきりあの娘達が近くにいると思ったのぉにぃ。」


この癖のある話し方。


死霊達を操る能力。


間違いなく『カワシマソウ』である。


「じゃあねぇ。」


カワシマソウはその場から離れ、ランドへと帰って行く。


ロウガの喉を噛みちぎり貪るグール。


(くそぉ…、俺は…、俺は。なんて無力だ。)


無念の雫が頬を伝い、地面へと倒れる。


メルが、ロウガの元にたどり着いた時には

真っ赤に染まる地面と飛び散る肉片

そして鉄の臭い鼻につく。


ロウガの履いていたレザーブーツが転がる。どうやら、下半身を喰われてしまったのだろう。


襲い来る無数のグールと死霊達を一瞬で焼き尽くすメル。


ロウガの残りを探す、メルは地面から飢えと

無念に苦しむ魂の揺らぎを見つける。


掘り起こすとロウガの上半身は、地面に埋められていた。


グールは、非常食として獲物を地面に隠す

習性がある。


ロウガの変わり果てた亡骸が

地面へと、無造作に埋められていたのも

その習性からだろう。


以前のメルならば心傷つき悩んだ。


しかし、何の躊躇もせずに自らの血を

ロウガの乾いた口へ流し込む。


メルはロウガを自分の眷属として甦らせた。


ミレイの時とは違うその姿。


下半身が漆黒の体毛が覆う肉体。


上半身は、血の様に染まる赤く禍々しい鎧を身に付けたロウガ。


「グォルウオオオオ!」

けたたましい雄叫びをあげメルを見つめる。


メルの様に紅い瞳が光るロウガ、

その見た目は、古から伝わる悪魔そのもの。


まさに人々が『サタン』と呼ぶ邪悪な悪魔の姿に似ていた。


メルの足元に跪くロウガ。


凍りつくような冷たい瞳でロウガを見下し

一言伝える。


「ロウガ…。好きに生きろ。」


不気味な声で笑うロウガ。


「ワガ主の命に従う。あリガとうメル。」


ロウガはカワシマソウを

追い掛け本能のままに突き進む。


メルから魔力の込められた瘴気が漏れ、

黒い闇が何かの塊になる。


(コロセ…。ウバエ…。ソシテ、カミニササゲヨ。)


今まで必死で抑えていた破壊と殺戮そして…。


あらゆる欲望がメルを変えようとする。


コアの呪いだろうか。


それとも暝砡の血を引く者の

本来の姿なのだろうか。


メルの歩む足跡から次々と

闇の魔物達が生まれ、ランドへと向かっていく。


ただ静かにランドへと歩いていくメルの口角は上がるが、涙を含ませる。


その後ろ姿は、悲しみで悲鳴をあげている様に見えた。




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