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シロキモノ

不定期で更新いたします。


暖かい眼で見て下さると幸いです。


悪鬼達は、新たな贄が住まう


場所を見付ける。


今度は、森人と呼ばれる者達が住まう場所。


エルフの村を喰らうらしい。


ゴブリンの成長は、他の種族

よりも速い。


紅き眼を持つゴブリンも産まれて3日で

一人の小鬼となった。


だが紅き眼のゴブリンは

他の小鬼と違うのだった。



それは血肉を喰わない事である。


木の実を食べて命を保っていた。


理由はわからない。


だが同じ様に肉を喰らえば


あの者達の様に穢れた化物と化す。


化物とは思えぬ恐れを抱いていた。


それ故に紅き眼のゴブリンは


他の小鬼達よりも小さく非力であった。


しかし化物達に仲間意識などは


無いのだ。


他の小鬼達は紅き眼のゴブリンをみて

弱き者とあざけ笑う。


そして化物の一人が紅き眼の

小鬼に一言、耳打ちをする。


「オマエノメ、オイシソウダ。」


殺気が立ち込める。


小鬼(ゴブリン)は共食いもする。


他者を食らい己の力とするからである。


今紅き眼のゴブリンは、


生命の危機に瀕していた。


すると地面が震える程の


雄叫びが木霊する。


それは化物達の根城が


何者かに襲撃されている。


その合図だった。


仲間意識はなくとも


化物達の頭目が危険にさらされる。


すなわち自分達の身にも危険が


及ぶという事である。


化物達は根城に向かい走る。


紅き眼のゴブリンには戻る場所は無い。


もし戻れば、いずれかは、強者によって

喰われる。


魔物の根城を襲う様な者達である。


弱者である紅き眼のゴブリンではただ殺される。


それだけである。


紅き眼のゴブリンは、


根城とは反対の方向へと


必死で走しり逃げる。


どのくらい走ったのだろうか。


根城の方角を見ると煙が登っている。


森の奥へ更に入って走る。


すると物音と複数の声が聴こえる。


慌てて紅き眼のゴブリンは、


木陰で息を殺し隠れる。


心臓の音が激しく鳴る。


相手に聴こえる訳も無いが


死の恐怖故に、胸をギュウと


強く掴む。


自分の心臓を止める様に…。


声の主が見えてきた。


首輪を付けた耳が尖った子供と


人間族の男達が歩いて来る。


その男達は、子供に何かを命じる。


子供は、首を左右に降る。


「……!…!」


何か怒鳴っている。


子供の首輪が白く光を放つと


泣き叫びうずくまる。


どうやら人間族に逆らうと


首輪が罰を与えるのだろう。


人間族は尖った耳の子供に


向かい長剣を構える。


怯える子供に対してこの人間は


狂喜とも言える表情を浮かべ


無慈悲で冷酷な一撃を


子供に振り下ろす。


紅き眼のゴブリンは、


化物らしからぬ感情が噴き出す。


弱者に与える圧倒的な暴力への怒り。


そして暴力に抗えぬ弱者に対しての慈しみである。


気が付けば長剣を振り下ろす

人間の頭を石で殴る。


本来ならば非力なゴブリン

ごときの一撃などこの男には

通じない。


しかし、人間の男は当たり所が悪かったのか…。


はたまた天から与えられた報いなのか。


そのまま絶命する。


仲間の命を奪われ怒り狂う

もう一人の人間が何かを叫ぶ。


そして紅き眼のゴブリンに

向けて斧を振り回す。


何故だろうか。


弱者であった紅き眼のゴブリンに

身体に力がみなぎる。


ゴブリンは相手の生命を絶つ事で強くなる。


つまり男の生命を奪う事で


その力を得たのだろう。


人間族の巨体から振り下ろす

斧を躱すと、心臓を目掛け右手を穿つ。


男は何が起きているのか…。


気付かぬままに絶命する。


首輪を付けた子供は、

異質な化物を見つめ怯えていた。


そうゴブリンは邪悪で醜悪な


化物である。


次は自分の番だと思い、

震えていた。


だが、紅き眼のゴブリンは、


悪しき化物であるが


善の心を持っているのだろうか。


「オビエルナ、ナニモシナイ。」


己の言葉で相手に伝える。


しかし、唇が恐怖で青ざめ

震える子供には、その言葉が

通じない。




そして、耳の尖った子供は、

その一言により恐怖を覚えた。


何故ならばゴブリンは、言葉を


知らない。


獣の様に生き、悪魔の様に奪う


魔物の中でも邪悪そのもの


耳の尖った子供は、親に


そう教えられてきたのだから。


しかし目の前にいるゴブリンは


子供が怯えている事を感じ


あえて恐怖を与えない様に

遠くに座りじっとこちらを

見ている。


「₤₣₢₡₠₦€₭?」


紅き眼のゴブリンは、子供が何を言っているのか理解出来ない。


すると耳の尖った子供は、


指先から暖かい魔力を集め


ゴブリンに向けて放つ。


「私…言…が分かる?」


子供の声が徐々に理解出来る。


「アア、分かる。」


すると子供は、ゴブリンに

向かい頭を下げる。


紅き眼のゴブリンは、


その行動が理解出来ず


同じ様に頭を下げて返す。


耳の尖った子供は、


その行動が滑稽だったのだろうか。


ケタケタと笑い緊張がほぐれる。


「違うの、助けてもらったから

ありがとうと頭を下げたの。」


「ありがと?何だそれは?!」


子供はタメ息をして少し考えて


「ごめんね。」


「まずお互いの事を知ろうか。」


「私の名前はエルフのカフエリ。」


「あなたの名前は?」


そう言われても紅き眼のゴブリンには

名前など無い。


そもそもゴブリン達には


個別の名称自体、存在しない。


強さのみを求められる。


そう奪った生命の数が


化物達(ゴブリン)の価値であり


名称なのだ。


「………。わからない。」


紅き眼のゴブリンは、


そう答えるしかなかった。


「じゃあ、お父さんかお母さんに何て呼ばれてたの?」


その一言で紅き眼のゴブリンを


産んだ母親の声を思い出す。


「メル。」


カフエリは、長く尖った耳を

ピクピクと動かし


「メル、良い名前だね。」


ゴブリンのメルは、そう言われてなぜか胸が熱くなる。


するとカフエリは

「メルは何で笑っているの?」

と不思議そうにしていた。


メルは自分の顔を触り


口角が上がっているのを

確認すると


「これが笑う?」


「笑うとは何だ?」


ゴブリンのメルは、


産まれて3日しか経っていない


故に感情もまだ理解していなかった。


その言動にカフエリは、


お腹を抱えて笑う。


「可笑しいよメル。」


「それは嬉しいとか楽しい時に笑うんだよ。」


メルは首を傾げ


「嬉しい?楽しい?」


「何だそれは?」


カフエリは一生分を笑ったと

言わんばかりに転げ回る。


「何も知らないんだねメルは。」


端から見ていたら馬鹿にされているとしか

思えない。


だがゴブリンのメルは、


楽しそうに笑うカフエリの姿を


見ると身体が熱くなりやはり

口角が上がっていた。


これが嬉しいなのか。


良いものだ。


身体が心が暖かい。


今まで感じた事の無い感覚だった。



カフエリは、笑い疲れたのか


呼吸を整える。


自分の住んでいた場所に戻りたい。


だがカフエリは自分の首に


付けられた冷たき呪縛を手で触れ

帰れる場所が無いと嘆く。


何故ならば

一度奴隷の呪縛である

従属の首輪を付けられた者は


穢れた者として扱い、魂の気高きエルフは

受け入れる事など無い。


そして従属の首輪を外せるのは


人間族のみなのである。


その現実が幼きカフエリには


残酷な事であり、


また人間族の元で一生を奴隷として生きる。


それしか生きる術が無いのである。


カフエリの瞳は、濁り淀んでいた。


メルはそれを聞くと紅き眼が

鈍く光る。


カフエリに”ここで待て”と伝える。


メルは倒した人間族の亡骸を漁る。


そして自分に使えそうな物を

探す。


人間族の汗と血が付いた長剣と


皮の鞣した靴とバンダナを奪う。


亡骸の左耳を削ぎ落とす。


バンダナは、顔に巻き付け


靴を履く。


カフエリは

「メル…どうしたの?」


メルは、赤く穢れに、染まった手を亡骸の

衣類で拭うと


「カフエリ…助ける。」


その一言だけを残す。


そして長剣を腰に下げ


悪鬼達の住まう根城に


戻って行くのであった。


メルは、嗅覚が鋭い。


人間族特有の臭いが


根城の方角からする。


カフエリの首輪を取る為に


人間族を助けに行こうとして

いたのだ。


何故人間族に助けが必要なのか…。



紅き眼のゴブリンであるメルは、

悪鬼を束ねる者の恐ろしさと強さを

知っていた。


自分の攻撃で死ぬような者ならば返り討ちにあっている。


そう確信していたのだ。


たどり着いた時。


メルの直感…。

いや本能が確信へと変わる。


人間族の戦士と従属の首輪を


付けた者達が悪鬼達に囲まれ


一人、また一人と餌食となっていく。


メルは、遠吠えをする。


とても小さな雄叫びである。


そして削ぎ落とした左耳を


悪鬼達を束ねる者に放り投げる。


それを見ると一際大きく


無数の傷が全身を覆う化物が


地響きと共にメルへと近づいて来る。


その者の背後から感じるもの。


それは絶対の死である。


左耳を放り投げる行為。


メルにとって自殺行為とも

よべる愚かで無謀な事で

あった。


それは、長を決める決闘の

申し出である。


他のゴブリン達は、その行為に


驚愕と無謀とも、とれる行動に


狂喜乱舞していたのだ。


人間族との争いを中断すると


化物の長とメルを中心に


悪鬼達が囲む。


ゴブリンの決闘それは…。


敗北すれば軽くて死。


大抵は、永続的に非常食として


生きたままに

少しづつ喰われるのである。


ゴブリンは再生能力も高い。


指や足など切りとられても


一週間もすればまた生える。


だが痛みは、勿論ある。


耐えがたき苦痛に舌を噛もうとする者もいるがそれは出来ない。


何故ならば。

舌は焼かれてしまい

自害できない様にするのである。


醜悪で残酷な悪鬼達らしい


おぞましき最後である。



人間族は、今まで自分達を


襲う化物達の動きをみて


これは、決闘だと理解した。


その隙に逃げようとこころみるが…。


複数のゴブリンが獲物を

逃がさない様にその者達も囲む。


小さく赤い眼を持つゴブリンが


戦いに敗北をした時点で


次の標的は自分達である。


少しだけ寿命が延びるだけであった。


悪鬼達を束ねる者は


「ヒリキナモノヨ。」


「ワガ、チトナルコトヲ、ホコリニオモエ。」


そうメルに告げると幾人もの


生命と魂を奪った赤い錆が


覆う(ハルバード)を構える。


メルは、使い方も知らぬ長剣を


震えながらも同じく構えた。


杖を持つゴブリンが雄叫びを


あげる。


巨大な悪鬼、絶対の死がメルに襲いかかる。


重いハルバードを軽々と振り回す者に

経験と技術、なにをおいても

勝ち目などある筈もない。


軽い一撃をメルは長剣で受けると3メートル程度、吹き飛ばされる。


木々に叩き付けられあばら骨も


数本折れたのだろうか。


口から紫色の液体がボタボタと


流れる。


何度も言おう。


メルに勝てる要素など微塵も

無い。


だがメルの紅き眼から

光が消える事が無いのである。


当然の結果になるであろう。


悪鬼達を束ねる者は、


決闘を申し込む以上多少は


戦いを楽しめる。


そう感じて期待をしていたのだが…。


まだ本気には到底及ばぬ一撃で


死に瀕している弱き者に


呆れかえる。


「オマエナド、イラヌ。」


その一言をメルに伝え


首を目掛け新たな獲物の魂を


奪う一撃を与えようとする。


メルは、その瞬間を逃さなかった。


油断、それは強者が唯一持つ


弱点である。


メルは激しいハルバードから

出る風圧を耐え懐に入る。


そして悪鬼達を束ねる者の


心臓を目掛け渾身の力を込めて


右手を穿つのだった。


斧を振り回した人間を仕留めた技である。


どうやら長剣の持ち主であった者はアサシンだったのだろう。


人間族の技、一撃必殺の秘技

(死閃)を会得した。


死閃は、どんな強者であろうが関係が無い。


どんなに鍛えられた肉体でも


当たれば貫き確実に

相手の生命を奪うのである。


そして今も本来ならば有り得ぬ出来事が

悪鬼達と人間族。


そしてそれを束ねる者の目の前で起きていた。


メルの一撃が鍛え上げられ

幾人もの生命を奪った悪鬼の肉体を貫き

心臓に小さな穴が空く。


絶対的な強者であった


束ねる者は、何が起きたのか


理解が出来ずにいた。


だが死を無を感じた時には


メルはハルバードを奪い


首を切り落としていた。


自分達の絶対的な存在


それが小さき弱者と蔑み


馬鹿にしていた者に討ち取られる。


悪鬼達は、恐怖に怯え


我先にとその場から


逃げていく。


メルは、束ねる者を討ち取る事で更なる力を得る。


強靭な肉体を得たのである。


地面が震える程の遠吠えをする。


悪鬼達は、その圧倒的な恐怖に


立ち止まる。


メルは、ハルバードを構え


渾身の力を込めて横に一振。


全ての悪鬼達は、今までの


罪を悔い改める時を与えられず


ただの肉塊と化す。


人間族の戦士と従属の首輪を

している奴隷達は、


次は自分達が

あの亡骸達と同じ運命を辿る。


その恐怖で息をする事を


忘れる程に怯えていた。


するとカフエリが、


森とメルの異変に気付き


従属の首輪を付けた奴隷達に


駆け寄る。


メルは、カフエリに尋ねた。


「従属の首輪は、人間族ならば取れるのか?」


カフエリは見た目が変わって

しまったメルを見て驚く。


しかし、優しく紅き眼を見て

安心したのか、小さく頷く。


メルは人間族に肉片が付いた

ハルバードを向ける。


「人間、この者達の首輪を外せ。」


「さすれば、生命だけは見逃そう。」


人間族の戦士と従属の首輪を

付けた奴隷達はその一言に驚愕する。


それはそうだろう。


醜悪で凶悪で残酷な悪鬼が


奴隷を解放すれば生命を見逃す


その様な事を言うのである。


長き尻尾を持つ奴隷の一人が


「何か魂胆がある。」


「醜悪な化物が…。」


「そんな事を言う訳が無い!」


その者は決して頭の良い方法では無い行動を取るのである。


メルに向かい石を投げ


自分の鋭い爪を突き刺そうとする。


だがメルはその者の一撃を


躱そうとはせずにその身に

受ける。


左腕から紫色のおぞましき液体がタラリと

流れる。


メルは、突き刺さる爪を優しく己の身から引き抜く。


「信じろとは言わぬ。」


「だが何も言わずにこの場から去って欲しい。」


メルの本音であった。


何故ならば強者の生命を

絶った事で急激に成長してしまった。


メルは破壊衝動を必死で抑えていたのである。


人間族の戦士は、


生命が助かるのならと


カフエリを含めた全ての奴隷達を解放すると必死で逃げる。


奴隷達は、古来から醜悪な悪鬼と

伝えられてきた者に救われたのである。


その驚きと解放の喜びで


森の中を走り駆け全身で


生きる事を感じていたのである。


だがメルはそれどころではない。


殺戮と破壊の欲望を必死で抑える。


カフエリは苦しみ踠くメルの側に近付く。


「来るな!頼む。」


「壊したくない。嫌なんだ…。」


悲鳴にも近い言葉をカフエリに伝える。


カフエリは、森の精霊達を


呼び寄せる。


そしてメルの吹き出る瘴気を


浄化しようと試みる。


さっきの獣人族の者も


炎の精霊を呼び出しメルの


瘴気を燃やそうと力を貸す。


メルの衝動が徐々に収まっていく。


そのままメルは意識を失いそうになる。


万が一誰かを襲ってはいけない


そう考え咄嗟に長剣を自分の脚ごと

地面に突き刺しそのまま

気絶してしまうのであった。


だがカフエリ達のお陰なのか


メルのゴブリンに対する嫌悪からくる

執念なのか…。


衝動が収まり醜悪な悪鬼である


メルの見た目が変わっていく。


深緑の肉体が白く、変化していくのだ。


紅き眼のゴブリンであるメルは


この日を境に特別な小鬼として生きる事となるのであった。


























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