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レイモウノウンカイ




冷たい日差しがメルフォード達を照らし、一日の始まりを告げる。


「な…なんか…ひ…冷えるな。」


全身を震わせ手で身体を擦っていたメグラ。


麻の半袖で基本は過ごし

あのマケアンディの雪山すら

それで通していた。


「あなたにも寒いって感覚があったのね…。」


鼻水を垂らして震えるメグラに冷ややかな視線を送るユウ。


「本当に冷えますね…。」


手に息を吹きかけるメルフォード。


鼻の先がほんのり赤くなる。


「えぇそうかなぁ?僕達は温かいよ…、ねっミレイさん。」


何故か顔を赤らめるミレイ。


その柔らかい手を握り締める

ユウト。


「若い…ていいにゃ〜。」

欠伸をしながら身体を伸ばすネミル。


カフエリとフエンは黙々とテントを畳んでいた。


そして無謀にもカフエリとフエンへと愛の詩を唄うギラン。


二人の容赦無い口撃を浴びせられていた。


「おっ、お前達起きたか!!」


この肌寒い中。


上半身に貝殻の胸当てを付けて笑っているドワーフ。


屈強なギルアは爽やかな汗を流していた。


どうやらいつもの鍛錬をしていたらしい。


それを見ていたメグラは余計に寒さを感じ身体を丸めていた。


     


そして…やっと準備を整え

マーディンから旅立つ

メルフォード達。


ネミルとギルアは手を振り笑顔で仲間達を見送るのであった。


◆◆


「しっかしよ…あんたらすっげぇ〜強えよな。」


先頭を歩くカフエリとフエンの周りをウロウロするメグラ。


何故か無性に苛立つフエン。


そしてそれに続く様にギランも


纏わりつく。


髪の毛を逆撫でて怒るフエンを笑うカフエリ。


そしてフエンとカフエリの

背後ではユウトとミレイが戯れている。


「ミレイさーん!ねぇねぇこっち見て…。」


呼ばれてユウトに視線を送るミレイ。


「あっ…振り向く…ミレイさんも、もぅ〜可愛い!」


身体をくねらせて喜ぶユウト。


「穢らわしい…。」

その姿に嫌悪感を示すユウ。


メルフォードは黙々と考え事をしながら歩いて行く。


独特な匂いと濃密な深い瘴気が漂う。


急にフエンとカフエリは、歩みを止めた。


その視線の先には、地平を埋め尽くすほどの魔物の群れがいた。


『カオスコボルト』


『デスオーク』


『ブラッドウルフ』


そして闇に染まった。

『ダークゴブリン』


更にその上空にはブラックワイバーンの群れが旋回している。


「うっわわわ!これは大変だよ。」


ギランが眼を細め雄叫びをあげている魔物の群れに驚く。


今、世界を巡る魔力は衰退し、代わって闇の魔物たちが蹂躙する時代。


魔力と聖なる生命力を好む化け物。


強大な力を秘めたカフエリ達は、抗いようのないほど芳醇な獲物に見えたのだろう。


凄まじい殺気が押し寄せる中。


カフエリとフエンはあえて

自分達の武器を抜かず立っている。


ただ静かに、メルフォード達に向かって「あれを片付けて…。」と命じた。


「よっしゃーー!やっと試せるぜ!」


酒吞の棍棒を軽々と振りまわすメグラ。


「はぁ〜やっぱりですか…。」

どこか諦めているユウ。


「はい!頑張ります。」


黄金の剣を構え魔物達に立ち向かうメルフォード。



ユウトは錬金釜から怪しげな薬を取り出す。


紅く鋭い長爪を舐めるミレイ。


樫の木で出来た杖を構えるギラン。


加勢に向かおうとすると背後からフエンの声が聞こえる。


「…待って…大丈夫…あの子達なら。」


それだけを言うと、ただメルフォード達の動きを見つめていた。


メルフォード、メグラ、ユウの三人が蠢く魔物の海へと飛び込む。


まるで木屑の様に飛び散る肉塊。

次々と魔物達が薙ぎ倒される。


100年前の魔物よりも今は遥かに禍々しく狡猾になっている。


更に苦戦を強いられたであろう圧倒的な群の数。


かつてのメルフォード達ならば

恐らく魔物達に囲まれ、彼らの腹に収まっていたであろう。


今のメルフォード達には一切の無駄な動きが無い。


洗練された、一撃、一撃が

確実に魔物の命を絶っていく。


ギルアの洞窟での過酷な修行。


メルフォード達をより強者の高みへと近づけた。


気がつけば最後の一体。


ブラックワイバーンの首をはねるメルフォード。


息一つ切らすことなく、容易く群れを全滅させた。



彼らの背中を見ていたカフエリは満足げに笑みを浮かべ。


フエンは誇らしげに見守っていた。


「はぁ〜…本当に凄いや…。」

思わずため息をもらすギラン。


そんな善戦を見物もせずに

ユウトはミレイを見て

甘いため息をこぼしていた。


やがてカフエリ達は、視界を白く染める忘永の雲海の入り口へと辿り着く。



底の見えない深い霧の奥から、甘くそして切ない呼び声が風に乗って聞こえて来る。


「誰か…呼んで…る。」


その声に吸い寄せられる様に、メグラがふらふらと雲海へ足を踏み出そうとした瞬間。


「駄目!メグラ!しっかり気を確かに持ちなさい!!」


カフエリの鋭い制止がメグラを現実へと引き戻す。


ハッと我に返り冷や汗を流すメグラ。


そんなメグラを横目にフエンは古びて汚れた

背負い袋をゆっくりと下ろす。



そして、黒と紅の混じった独特な模様のコカトリスの卵を取り出す。


フエンは迷わず硬い殻に魔力で穴を開ける。


ドロッとした紅緑の中身を自らの身体に塗りつけた。


腐った木の葉の様な甘ったるい匂いが鼻に纏わりつく。


卵を持ち「ほら…みんなも塗って。」とフエンが声をかける。


メルフォード達も教えられた通り、強烈な異臭を放つその液体を肌に纏っていく。



鼻にこびりつく様な独特の嫌な臭いに顔を歪めるメグラ。


ふと素朴な疑問を口にした。



「……あのさ…フエンの炎の巨鳥に乗って高く飛んでさ…。」


「上空からよ…雲海を越えればこんなん塗らなくてもよ…よくねぇか?」



それを聞いたフエン。


返事の代わりに馬鹿にしたように鼻で笑う。


「それ…したらどうなるか教えてあげる…。」


いきなり後ろの草陰へと魔力の鎖を放つ。


不気味な悲鳴が聞こえてくる。


その鎖を指先で手繰り寄せるフエン。


複雑に強く縛られたダークゴブリンが悶えている。


「ごめん…これを咥えて…。」


炎の巨鳥の嘴にダークゴブリンをぶら下げ、雲海の上空へと飛ばす。



その瞬間、静かだった霧の中から無数の白い手が蛇のように伸び上がる。



逃げる間もなく、空中の獲物を掴み取った白い手は、一瞬にしてダークゴブリンを雲海の底へと引きずり込んだ。



「ねっ……無理でしょ?」


フエンの冷徹な微笑み。


たった今起きた光景の恐ろしさに、メルフォード達は背筋に冷たいものが走るのを感じた。



メルフォード達は言われた通りに執拗なまでに卵の中身を身体に塗りつける。


そして異臭を盾に、死者が手招きする霊妄の雲海の中へと、ゆっくりと歩みを進めていく。


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