表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/105

ウチュウ



絶望に沈み微動だにしないメル。


精霊族の元女王でありカフエリの姉であるクリエラがメルへと歩み寄る。


そして…。


穏やかな表情を浮かべ

その静かな怒りをメルへとぶつける。


「メル…あなたは今、何をやっているのですか。」


「妹を…カフエリを、そして私や仲間達を救ってくれたではないですか!」


「それに、早くしないと本当にパルが死んでしまいますわ!」


その言葉がメルの凍り付いた思考と心を溶かす。


メルはスッと立ち上がり肉体にめり込んでいたドワーフ達の

鉛玉を、強靭な筋肉の収縮のみで弾き飛ばす。


そして静かにクリエラに問いかける。


かつてクリエラは、マーディンのドワーフ達と共にターメルを封じる神殿と黒鉄の構築に携わっていた。


「パルの魂は、まだ消滅していません。」


「封印の扉に繋ぎとめられていますが…。」


「早くしないと、マーディンの

一部となってしまうのです。」


「そうなれば…パルの魂が永遠に失われてしまう…。」


メルの顔を見上げるクリエラ。


「頑張ってくださいね。メル…。」


いつもの優しいクリエラと同じ表情と声で笑う。



その頃、カヨウの必死の幻惑も限界が近い。


自由を取り戻し始めたターメルが不気味に動き出す。


だが…メルの表情は曇ったままであった。


「俺では…ターメルに勝てない。」


メルは己の『アンチマジック【スキル封印】』の力が制御できない事に苛立ちを感じていた。


「メルさん!良いものがあります!!」


「これをどうぞ!」



そこへユウトが駆け寄り、古ぼけ汚れた本をメルに握らせる。


それは、メルが読もうとして

弾かれ拒絶された”神の日記”。


メルは視線をユウトへと向ける。


ただ薄ら笑いを浮かべ、顎で読めと合図するユウト。


仕方なくメルは日記に触れる。


するとその瞬間。


メルの脳内に、直接どこか懐かしく、そして……温かい声が響き渡る。


その声の主は自分の事を神と名乗っていた。


その者からメルが、成すべき事しなければならぬ全ての使命を聞かされる。


薄気味悪い高笑いが響き渡る。


「ごめん…限界。」


カヨウが力尽きて倒れる。


「よくも…よくも…私をあんな所に…屈辱だよ…。」


口を曲げ睨みつけるターメル。


神の杖が神々しく輝きカヨウへと凄まじい雷が落とされた。


それを切り裂くメル。


メルは再びターメルの前に立ちはだかる。


「まさか…また私に歯向かうのか?」


「悪いが…君では無理だよ。」


蠅を払う様に手を上下に振るターメル。


鼻で笑うメルの右手には千切れた耳がぶら下がっていた。


今まで感じた事のない痛みを感じるターメル。


そしてターメルの左側からなにかが滴り落ちる。


ターメルは自分の顔に触れると左耳が無いことに気付く。


メルはゴミでも扱うように千切れた耳をターメルへと放り投げた。


それはゴブリンの長を決める時に行う儀式。


決闘の合図であった。


その瞬間…。ターメルの中で

なにかがブツッと大きな音をたてて切れる。


口の中で鉄の味がするターメル。


「望み通り…グチャグチャにしてやるよ!!このゴミクソが!!」


怒り狂うターメルの攻撃は、

もはや常人ではその陰すら映らない。


しかしメルはそれを軽く弾く。


メルの剣筋は以前の爆発的な破壊力とは異なり、驚くほどに静かで穏やかな太刀筋。


その圧倒的な理に追い詰められた、ターメルは神の杖を自らの肉体に取り込む。


肉体が軋み大気が震える。


黒い渦がターメルを包みこむ。


そして…。


黒い渦が消え失せると背中に

六枚の漆黒の翼を宿したターメル。


その姿は神の反逆者、堕天使ルシファーを彷彿とさせる。


それを見ていたクリエラが仲間達へと念波を送る。


(メルはターメルを封印の神殿に。)


(カフエリ!あなた達は封印の神殿にいるパルの魂を回収してきなさい!)


仲間達は小さく頷く。


その時ネミルの本能がとてつもない危険を察知していた。


「や、やばいにゃー!!」


「みんなにげ$#£¢€!」


呂律が回らないネミル。


意識が無いフォードを抱え

クレアの手を引っ張る。


その言葉と同時にターメルとメルの攻撃がぶつかり合う。


二人にとってはただお互いの攻撃を躱し弾いているだけなのだが…。


その余波が黒と白の斬撃として大地や空間を切り裂いていく。


放たれた斬撃がぶつかる地面には、底が見えぬ程のポッカリと裂け目が生まれる。


その威力に腰が抜けたと笑う

ユウト。


ただ慌てふためき逃げるのが

精一杯のドワーフ達。


それはそうだろう。


もはや逃げ場など無いほどに

大地は激しく揺れ、その振動で遠くの山々が次々と噴火する。


力尽きているカヨウへと余波による斬撃が飛ぶ。


カフエリとフエンが二人がかりでそれを何とかはじき返す。


まだ心が残っているのだろうか。


「ほっとけば良いのに…。あんた達はバカね。」と皮肉を込めて笑うカヨウ。


「ほっとける訳ないでしょ!」

カヨウの左側を支える歩くカフエリ。


「死んだら…寝覚めが悪い。」

右側を支え歩きながら口をとがらすフエン。


その姿を見ていたギルアがドワーフ達へ向けて叫ぶ。


「お前らは、それでも男か!!」


「今こそドワーフ魂をみせろぉ!!」


雄叫びの様な戦士の一声。


老いぼれた一人のドワーフ魂に火をつける。


「うんだぁーー!そうだで行くべ!てめぇら!!」


クリエラの念波を聴いていたドワーフ達。


激しく揺れ瓦礫が次々と落ちてくるのも気にせず、先に封印の神殿へと向かう。


ターメルとメルの激しい戦いで

大地が持たないと判断したクリエラ。


「このままじゃあ駄目ね…。仕方ない。」


「叔母様…ごめんね。」


恐怖で震える叔母カフレアの魂をその手で引き抜く。


そしてそれを大地に捧げ精霊樹へと祈りを捧げる。


聖なる波動が大地を守り、裂け目から吹き出す溶岩が収まっていく。


綠炎の矛と剣そして神の杖が

お互いの力に耐えきれず砕ける。


拳を強く握り締めメルはターメルをなぐり続ける。


それをやり返す様にターメルも

両手に魔力を込めてメルへと放つ。


メルが放つ捨て身の攻撃がターメルの精神を圧倒させる。


徐々に神殿へとターメルは押し込まれていく。


その隙に、ドワーフ達。

そしてギルアがパルの魂を封印の扉から解き放つ。


淡い光を帯びた魂は外にいるパルへと飛んで行く。


魂が救われた直後、

メルはターメルを封印の神殿の奥深くへと叩き込んでいた。


「誰か!頼む!!」


全力で叫ぶメル。


「おーし!まかせどけ!!」


ドワーフの長が親指を上げて

叫び返す。


ドワーフ達は複雑な石板のパズルを動かし『黒鉄の檻』を発動させた。


崩れる締まる牢獄の門。


急いでメルはその場から離れようとする。


しかし檻が閉まる寸前。


ターメルは執念深くメルの足を掴み「共に永遠の苦しみを味わえ。」と嘲笑う。



その時、メルの影から黒い液体となったノボルが這い出す。


神の日記の力でターメルの呪縛を解き、自我を取り戻したノボル。


かつての傲慢さを捨ててターメルを強力に抑えつけた。


自らの罪を償うように。


「メル、お前は生きろ!」


「帰れる場所に!!」


そう言い残してノボルがメルを檻の外へと突き飛ばした瞬間。


黒鉄の檻はターメルとノボルを飲み込んだまま、アルメーリアの外側。


果てしない宇宙の深淵へと飛び立ち彷徨う事となる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ