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大地の精霊王が展開していた防御壁が薄くなっていき、空が姿を見せる。
暗黒だった空は無くなり、以前と同様の精霊大王の国の空が見られた。
邪悪な気配も感じられない。
危機は去ったのだ。
誰からともなく認識し、そして確信し、自身に言い聞かせるように小さな声を出し、それが伝播していき歓声となっていた。
歓声に沸く群衆の中、誰からともなく声があがる
「大地の精霊王だ!」
塔の先端に大地の精霊王の背中が見えた。
群衆が全員、“歓声を上げよう”と想いが一つになった…その時、
大地の精霊王がよろけて後ろに倒れこみ、そのまま塔から落下した。
そして地面まで落下し、地表に叩きつけられてしまった。
群衆は全員が息を呑んでしまい、静寂が訪れた。
静寂は悲鳴のような呼びかけによって破られる。
「大地の精霊王!」
精霊大王の一族と風の精霊王が呼びかけながら駆け寄り、火の精霊王と水の精霊王、そして龍族大王と龍王たちも駆ける事はまだ無理だったがなんとか傍までやって来る。
ただ一人、地の龍王だけはまだ気絶から覚めていなかった。
地面で倒れて動かなくなっている大地の精霊王を全員で囲む。
大地の精霊王の身体からは光る粒子が拡散していた。
大地の精霊王「どうやら無理に力を使いすぎたようです。消耗のスピードが回復のスピードを上回りました。」
幼き精霊姫が悲しみに顔を歪ませながら叫ぶ
『大地王!大地王!』
精霊王の消滅が初めての事態で、どうしていいか判らない精霊大王と他の精霊王たち。
大地の精霊王「大丈夫です。以前思いついた術と術を合わせて使う事により、精霊力あふれる星に緊急避難して潜伏する事ができます」
“上手くいけば”な話で、“危険なので試したことは無い”という事はだまっていた。
やがて大地の精霊王の身体は透明になっていき、消滅してしまった。
―
涼「その後、我々は大地の精霊王が残した“観察ノート”やその他の記録などの調査を開始します。
紙で出来たノート類を調査するために化身人化術を使えるようになり、化身人化術を使える者を増やして解析班とし、ノートと記録書の解析を進めました。
同時進行で地球へ来訪しての調査も過去に何度か行っています。
もしかしたら復活した大地の精霊王に会えるかもしれないと一縷の期待を持っての来訪だったのですが…、結果は芳しくありませんでした。
やがて解析班が大地の精霊王が行った最後の術のしっぽを掴みます。
細かく言うともう少し複雑なのですが、解りやすく言うと
“最終的には地球の人間に転生して正体を隠すべく潜伏し、やがて充分な回復と精霊力をもって復活する”
という術なのです。
恐ろしく複雑な術式です。
なにせ“精霊王が精霊力を維持できなくなる”などという発想も無かったですし、“枯渇しているので精霊力をあまり必要としない状態からの術式”、どうやら人間でいる事で省エネ化を図る意図があるようで、その為の“化身人化術”と“ゲート術”。
そしてその化身人化術は転生して潜伏する為か、普通の術よりも殊更複雑な術式になっているようです。
この凄まじく複雑な術式の解析は、方針を“いつ大地の精霊王は復活するのか”という点を優先する事にしました。
と、言うは易しですが…。
それでも、術式解読調査班は必至の解読をしてくれました。
その結果、前後数年に日本のこの市にて復活する可能性が高いとの解析結果が出たのです。」
涼が一呼吸おいて言う。
涼「我々はこの地球に、大地の精霊王を迎えに来たのです。」




