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高さ1000メートルほどの鉱物の塔の先端で、全力の火炎術を放つ火の精霊王。
これだけの距離をあけても凄まじい熱波が地表に届く。
一部の弱い精霊は苦悶の表情を浮かべていた。
水の精霊王が術を展開して地表を冷やしにかかる。
ぐっと温度が低下はしたが、それでも皆、表情を歪ませていた。
水の精霊王「なんと凄まじい攻撃力だ…」
(水の精霊王“先ほど地上から撃っていたのは、やはり手心を加えていたのか”)
そして以前、大地の精霊王が言っていた言葉を思い出す。
(大地の精霊王“きっと根はやさしい方なんですよ。…”)
手の平から放たれた火の精霊王の最大火力攻撃は、直径100mほどの巨大な火柱となって敵に向かって伸びていった。
そして火柱は直撃し、敵の中央に直径100mそのままの巨大な穴を穿つ。
火の精霊王が手の角度を変え、放出角度を変えてそのまま敵の上部分、アナログ時計で言うところの12時部分を消滅させた。
そのまま時計回りに手の角度を変えていき、1時の部分から2時の部分と順番に敵を火炎で消滅させていく。
(火の精霊王“いいぞ、このまま行けるぜ”)
と思った火の精霊王だったが、敵が9時の方から特攻を行ってきた。
今までのような小さな突起物による攻撃ではなく、自身の体の四分の一程度を使っての突進だった。
普段、火の精霊王は敵の攻撃を躱さない。
大体の敵の攻撃や、敵の身体など、ある程度の物理物体は火の精霊王に到達する前に熱で燃え尽きて消滅してしまうからだ。
回避の必要が無い戦闘スタイルが火の精霊王には擦り込まれてしまっており、今回も敵の攻撃が届くとは思っていなかった。
一方、敵の方は熱で体が消えるのも織り込んでの、捨て身の特攻だったのだろう。
身を削り、消滅しながらも、火柱の出ていない方から周りこんで、体の一部を突進させてぶつけてきた。
火の精霊王「ぐぁ!」
敵は体を削られながらも残った質量による体当たりを火の精霊王に対して成功させ、火の精霊王は鉱石の塔から吹っ飛ばされてしまい落下する。
可能な限り柔らかい鉱石の薄い壁を、火の精霊王の落下軌道上に何枚も展開する大地の精霊王。
少しでも落下のダメージを軽減させたい、その為に落下の勢いを落としたかったのだった。
薄い壁をパリンパリンと割りながら、落下する火の精霊王。
少しでも勢いがつく前に、高い位置で受け止めようと、再度鉱石の塔を作って火の精霊王に近づいていく大地の精霊王。
やがて鉱石の塔が落下する火の精霊王のところまで伸び、大地の精霊王が火の精霊王を何とか受け止める
受け止めた大地の精霊王と受け止められた火の精霊王、地面にたたきつけられるよりはマシではあるが、それでもノーダメージとは行かず、加えて、火の精霊王は敵の捨て身の突撃によるダメージも大きかった。
受け止めた方の、低い方の塔を段々と低くしていき、地面に戻ってきながら大地の息吹術で自分と火の精霊王のダメージの回復する大地の精霊王。
やがて2本目の塔は高さを無くしていき、大地の精霊王と火の精霊王は地上に戻ってくる。
火の精霊王「も、もう一回塔の上に上げてくれ」
そう言って、先ほどまで自分が載っていた“高い方の鉱物の塔”に手を伸ばしながら、立ち上がろうとする火の精霊王。
だが立ち上がろうとした火の精霊王はよろめいて立ち上がれなかった。
今までに無い初めての経験、“疲労”だった。




