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大地の精霊王が王宮に気絶した地の龍王を運んでいる間に、残りの龍王たちと龍族大王はもう直接の目視で戦いの様子が分かるくらいにまで押し込まれていた。
そして敵は捨て身の突撃が有効と気づいたのか、それを躊躇なく行いだした。
疲労により、動きが落ちている龍王たちが順次迎撃されていく。
最後に残った龍族大王に捨て身の突撃が集中し、列をなして突進してくる。
「おぉおおおおおおぉっ!!」
怒声をあげながら数十までは殴り返して押し返した龍族大王だったが、最後は押し切られて地表に落下した。
―
龍王たちはうめき声をあげ、龍族大王は立ち上がろうとしている。
それにより、かろうじて死んではいない事は判るのだが、あくまで“かろうじて”だった。
その証拠に立ち上がろうとするも立ち上がれないでいる。
そのとき、地表から巨大な火柱があがった。
火柱は真っすぐ“邪なるもの”に向かっていき直撃する。
火柱の発射元をみると火の精霊王が天空に手を向けており、そこから業火が上がっていた。
直撃し、効いてはいる。
火の精霊王の火炎撃には邪なるものが悶え、拒絶反応を示したのだった。
悶える邪なるものが火の精霊王の火炎攻撃は有効である事を証明してはいるのだが、如何せん相手の体積が巨大すぎる。
火炎を放っている火の精霊王はというと、もどかしいといった表情をしていた。
大地の精霊王と水の精霊王が表情を見て考察する。
水の精霊王「あの表情は…」
大地の精霊王「おそらく…」
焦れた火の精霊王が自身に気合いを入れると一瞬火力が上がった。
反射的に水の精霊王は氷の壁で、大地の精霊王は防御壁で熱風の衝撃波を防ぐ。
しかし、他の精霊たちは、火の精霊王からかなり距離をとってはいたのだが、それでも苦痛に顔を歪めていた。
それを横目で見て火力を下げる火の精霊王。
あの焦れた表情は、火力を上げるに上げられないジレンマからくるものだった。
それに気づく大地の精霊王と水の精霊王。
大地の精霊王が水の精霊王に向かって言う
大地の精霊王「地表の冷却をお願いします」
水の精霊王「地表の冷却?」
返事をする余裕が無いのであろう、無言のままに防御壁を張りながら火の精霊王に向かって前進する大地の精霊王。
やがて近づく大地の精霊王に気が付き、火炎術を停止する火の精霊王。
大地の精霊王が先に口を開く。
大地の精霊王「高台を用意します。そこから撃ってみてもらえないでしょうか」
そう言うと大地の精霊王と火の精霊王の足元が盛り上がった。
盛り上がった部分は直径20メートルほどで、虹色の鉱石に姿を変える。
火の精霊王「よし、やってくれ」
火の精霊王としてはジレンマを解消できるであろう手段であり、願ったりかなったりだった。
火の精霊王の同意を得て、大地の精霊王が術を再開する。
火の精霊王と大地の精霊王の足元、直径20メートルの部分が、円柱状態にどんどん地上から伸びていく。
そしてそのまま直径20メートル程、高さ1000メートルほどの鉱物の塔とも言える円柱が完成した。
ギリギリ精霊界から精霊力補充の恩恵を受けられる高さでもあった。
円柱の塔の天辺にいる火の精霊王が、同じく隣にいる大地の精霊王向かって言う
火の精霊王「よし、最大火力で撃つ。お前も下で待っていろ」
大地の精霊王「しかし!」
防御の助力が必要なのではと考えた大地の精霊王だったが
火の精霊王「周りに誰かいると気になって全力出せねえんだよ」
大地の精霊王「…ご武運を」
そう言って鉱物の円柱塔に溶け込むように消えていく大地の精霊王。
火の精霊王「ああ、まかせとけ」
笑顔で大地の精霊王の撤退を見届けたのち、改めて上空の敵を見上げる火の精霊王。
そして手を天空の敵に向け、最大火力術を展開させた。




