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精霊界王宮の庭で元気に走り回る少女がいた。
姫『わっはっはっ』
幼き精霊姫だった。
従者の精霊たちが必死に追いかけている。
王宮2階のテラスにいる大地の精霊王に気づき、無邪気な笑顔で手をふって叫ぶ姫
姫『大地王!~大地王!~』
ほほ笑んで手を振り返す大地の精霊王。
やがて再び走り出す姫。
それを見届けテラスから来賓室室内に移動する大地の精霊王。
王宮の来賓室には錚々たる面子が集められていた。
精霊大王、精霊女王、火の精霊王、水の精霊王、風の精霊王、
龍族大王、炎の龍王、水龍王、風の龍王、地の龍王。
全員の招集を依頼したのは大地の精霊王だった。
炎の龍王「龍族大王たっての頼みだってな」
水龍王「しかたねえ」
たんこぶを見せながら言う二人の龍王。
大地の精霊王「皆様、今日は御呼び立てして申し訳ありません。急を要する事態がありまして」
精霊大王がにこやかに手をあげて謝辞不要の意思表示をした。
大地の精霊王「精霊大王様、王宮の天井を一時消しますね。後で元に戻します故」
そう言い、返事が来る前に天井を消してしまった。
皆が唖然としてる中、大地の精霊王が天井のあった部分に透明の板、ガラスを展開する。
大地の精霊王「これからかなり遠い天空を見せます」
大地の精霊王がそう言うと、空に浮かんだ龍族界の星が近づいてきた。
(えっ?ぶつかるっ!?)
殆どの者がそう思ったが、景色は龍族界の星の横を通り過ぎて、先の先をズームアップしていく。
大地の精霊王「実際に近づいているのではなく、遠くの景色を見えるようにしているだけなのです」
天井のガラスを凸型に湾曲させてレンズ化し、景色を拡大させながら大地の精霊王が言う。
地の龍王だけが行っている術は理解していたが、湾曲したガラスにそんな効果があるというのは初めて知った。
そもそもガラスなどという脆い鉱物の必要性が今まで無く、術は知っていたが顕現させたことが無かったのだった。
龍族大王「フン、相変わらず意味の判からねえ奇怪な術を使いやがる」
やがてその場にいた全員が悪寒を感じた。
精霊たちは邪悪なる存在を直感で感じて悪寒し、龍王たちは相手が強者であるときに直感する悪寒だった。
巨大な漆黒の雲のような形をした“邪なるもの”がそこにいた。
大地の精霊王「ある星の者が使っているこのレンズというものを試してみた時、偶然発見したのです。この黒雲のようなものは、その星でとても邪悪な行為を行っており、“邪なるもの”と仮に呼んでいます。今は天空の先の遠くにいるのですがどうも近づいているようで…」
そこまで大地の精霊王が言った時、龍族大王が叫んだ
龍族大王「おもしれえじゃねえか!!」
声の振動で天井のガラスが割れて、王宮の一部が瓦解する。
急に天井の映像が消えて、龍族大王含めた全員がきょとんとしている中、大地の精霊王が、術で王宮と天井のガラスを修復した。
水龍王「要はこの天空のはるか上の方にさっきの黒いやつがいて、そいつを倒せば良いんだろう。他愛もない」
炎の龍王「飛んで行って全力でぶっ飛ばしてやるぜ」
テラスに出て、天空に向かって飛び立つ水龍王と炎の龍王。
風の龍王「一番乗りは僕だね。そのスピードじゃあ…」
笑顔でそう言いながら飛び立ち、先行する水龍王と炎の龍王をあっという間に追い越す風の龍王。
地の龍王は大地の精霊王に向かってほほ笑んでから飛び立っていった。
そして最後、
龍族大王「まったく…、強い相手に目が無いからな、あいつらは。さて約束通り、荒事を片付けてくるぜ」
ニヤリと笑いながら言い、最後に飛び立つ龍族大王。
精霊大王と女王、そして精霊王たちはテラスに出て、飛び立つ彼らを見送った。




