84
少女-新しい地の龍王が大声で大地の精霊王に向かって叫ぶ
地の龍王「地味なんだよ!もっと戦える力をよこしやがれ」
(大地の精霊王“ご、ごもっとも。って口に出しちゃうともっと怒るんだろうな”)
少女-地の龍王の爪が伸びる。
爪は大地の精霊力で水晶化され、地の龍王はその爪を振りかざして大地の精霊王に飛びかかった。
大地の精霊王が身をひるがえして躱そうとするが、それでもわき腹に一撃をもらってしまい、鉱石が砕けるように大地の精霊王のわき腹部分が砕け散った。
苦悶の表情をみせる大地の精霊王。
見ていた龍族大王は、予想していた展開と違っていたのか少し驚いており、地の龍王は大きく驚いていてその理由を叫んだ。
地の龍王「なぜ壁を作って防御をしない!?」
大地の精霊王「いや、固い壁だとケガしちゃうなと思って」
“え?”と呆気にとられる地の龍王。
大地の精霊王が言葉を続ける
大地の精霊王「大地の精霊力で大地の精霊王には攻撃できないんですよ。ほら」
そういって地の龍王の爪を指でさす。地の龍王が自身の爪を見ると水晶化がいつのまにか解除されていた。
大地の精霊王「あと、ここでは大地の精霊力が使いたい放題だから…」
そう言って“大地の息吹術”が大地の精霊王の身体を包み込み、あっという間に大地の精霊王は全快した。
大地の精霊王「確かに、戦いには向いてないかもしれません。でもご存じの通り、堅い防御は得意なんですよ」
そう言ってガーネットの壁を展開する。
水晶より硬い壁であることを察し、先程この壁を作られて、かつ水晶爪を無効化されているのに気づかず突っ込んでいたら、自分の方が大怪我をしていただろうと予想がついてしまい唖然とする地の龍王。
龍族大王「完敗だな」
龍族大王も同じ予想をしたのだろう。
そして改めて言葉にされ、完敗を実感してしまいがっくりと肩を落とす地の龍王だった。
大地の精霊王「でもこれぐらいの薄いガーネットウォールは龍族大王がいとも簡単に割った事がありましたけど、もっと分厚いガーネットウォールは龍族大王でも割れなかったんですよ」
そういって大地の精霊王が手を横にのばすと、そこに分厚く巨大なガーネットの山が現れた。
大地の精霊王「勝てないまでも引き分けには出来ます」
にっこり笑って大地の精霊王が言う。
龍族大王「結果、撤退だからな。引き分けでなくて俺の負けだったさ」
龍族大王もにやりと笑って言い、そして言葉を続けた。
龍族大王「フン、あと二千年か三千年ほど待ってろ。ガーネットくらい一撃で砕けるようになるまで身体を鍛えあげてくるからな」
(龍族大王“まあ、そうなったら硬度上げてくるんだろうけどよ”)
地の龍王「…くれ」
小さな声量を聞き返すように大地の精霊王と龍族大王が同時に地の龍王の方を見る。
地の龍王が声量を上げて、叫ぶように言った
地の龍王「ガーネットウォールの作り方を教えてくれ!」
大地の精霊王「良いですよ」
あっさり返事する大地の精霊王。
地の龍王としては、相手に懇願するなど今までなかった。それ故、意を決しての叫びだったのだが、思いのほかあっさりした返事に唖然としてしまう。
大地の精霊王が龍族大王の方を向いて言う
大地の精霊王「でも良いのですか?」
少し龍族大王に近寄って、ささやくように言う
大地の精霊王「私の気の持ちようは、あまり竜種族向きでは無いでしょう。その影響を受けてしまうと…」
早い話、精霊界でも優しすぎる部類の大地の精霊王が関わることで、戦闘ありき、戦いが常の龍族界で生きるには、その優しさが仇となる事が容易に想像できる。
それを危惧しているのだった。
龍族大王「大丈夫だ。成りたてとはいえ地の龍王として見込まれているだけの事はあるんだぜ。大抵の龍族に後れはとらねえよ、こいつは」
大地の精霊王「それならば良いのですが…。でも本当に良いのですか」
龍族大王「?」
今度は近寄らずに、声量も絞らずに言った
大地の精霊王「ガーネットウォールを地の龍王が覚えてしまうと、龍族大王と地の龍王が勝負したら“撤退を余儀なくされる”事になりますね」
にっこり笑って言う大地の精霊王。
地の龍王が龍族大王を指さして笑顔で言う
地の龍王「やった!そんときは勝負だ!撤退したら負けだぞ!!」
龍族大王「…ちゃっかりしてやがる」
3人でひとしきり笑ってから大地の精霊王が聞く
大地の精霊王「ところでゲート術は?」
龍族大王「さすがにあれは出来ねえよ。あの術は難しすぎだ。ここへ来るのも精霊大王にゲートを開いてもらった」
(大地の精霊王“精霊大王様お手製のゲートだったのか…。というか精霊力の加護が無いのに龍族大王はゲートに挑戦を?竜種族なのに負けを容易く受け入れる度量といい、やはり龍族大王は大したお方だな”)
地の龍王「それも、ゲートも教えてくれ!」
大地の精霊王「では私から一つお願いがあります。この地では火、水、風、そして大地の精霊力それぞれを微妙にバランス調整する事によって成立しているので、大きな力を使うとバランスを保てなくなってしまう可能性があります。ですので私が竜族界に伺いますからそちらでやりましょう」
龍族大王「一刻とか、そんなにすぐに覚えられるもんでも無いだろう?」
大地の精霊王「おそらくは。でもずっと龍族界に居座るわけにもいきませんし…」
龍族大王「おめえさえ良ければ、龍族界に居座っても良いんだがな」
地の龍王「!」
地の龍王が少し顔を朱色に染めてうつ向いた
未知の感情に出会ったようで、これが一体何なのかも判らないし、どうして良いかわからないといった風だ。
大地の精霊王と龍族大王は気づかない。
大地の精霊王「ここの管理と、ある星の観察を続けているので…。ですので習得するまで日を決めて、私が龍族界に通うようにしますよ」
―
ここまでだまって聞いていたしずくが“通う”という単語を聞いた時に少し目を見張った。
隠しきれない穏やかならぬ心内があふれているかのようである。
大地の精霊王「大したもので、トパーズ生成まで修得されました。大地の息吹術もそこそこのレベルまで出来るようになりそうですよ」




