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そうこうしているうちに風の精霊王が戻ってきた。
心地よいスポーツを堪能した、そんな笑顔をしている。
風の精霊王「すごいですね。風の精霊国を滑空するのとはまた違った楽しさがあります」
大地の精霊王が風の精霊王と水の精霊王を交互に見て言う
大地の精霊王「ここは皆さんの精霊力による加護の賜物なのですから、いつでも来ていただいて良いですよ。ただ、この世界の構築はそれぞれの精霊力を絶妙なバランスで用いつつ、成立するまでに結構時間を必要とするので、大規模なケンカは遠慮をして欲しいのですが…」
水の精霊王「だいたいは向こうが吹っ掛けてくるのです。あちらに自重するように伝えてください」
実は少し前に火の精霊王から同じようなことを言われており、
(大地の精霊王“ホントは気が合うんじゃないかな、この二人”)
と思った大地の精霊王だったが、口には出さずにいたのだった。
やがてその心地よさから精霊王達が大地の精霊国の一区画に通い出すようになる。
精霊大王の一族もご訪問されて絶賛し、それを龍族大王にも話されたのだろう。
ちょっとした事件は精霊大王が訪れて、その事を龍族大王に話し、しばらく経ってから起きた。
―
水の精霊国に風の精霊王が訪れた。
連れ立って大地の精霊国に行こうと風の精霊王が水の精霊王を誘いに来たのである。
風の精霊王「大地の精霊王がお怪我をされたそうなんですよ。それで是非一緒にお見舞いをと…」
そこまで聞いて、水の精霊王の隣で聞いていたしずくが青い顔をして狼狽する。
そしてしずくが床面に手をつけると水のゲートが開き、その中にしずくが飛び込んだ。
呆気にとられる風の精霊王と、飛び込む直前にとっさにゲートの安定化を行う水の精霊王。
二人とも“まさかしずくがゲート術を使える”とは露にも思っていなかったのだった。
後を追ってすぐにゲートを通り、大地の精霊国を訪れる水の精霊王と風の精霊王。
そこには変わらぬ笑顔を見せる大地の精霊王がおり、先行して到着していたしずくの頭をなでていた。
大地の精霊王「心配をかけてしまったようで」
そう言ってペコリと頭を下げる大地の精霊王。
風の精霊王「何があったのですか?」
大地の精霊王「少し前に龍族大王が地の龍王と来られた事があったんですよ」
―
ゲートを通って龍族大王とまだ幼さが見える龍の少女が大地の精霊国に訪れる。
少女はなぜか不機嫌な顔をしていた。
龍族大王「よう。久しぶりだな。良い所じゃねえか」
大地の精霊王「ご無沙汰しています。」
挨拶もそこそこに、龍族大王が来訪の理由を話し出す。
龍族大王「前の地の龍王が“龍王をやめる”って言いだしてな。この子に大地の加護を渡したんだ。」
龍族大王は内心“知っているんだろう?”と思っており、実際、継承を行っているのは感覚でわかっていた。
ただ、精霊王の加護によって得た力を手放して渡すなどという事は前例がなく、珍しい事だなとは思っていた大地の精霊王。
龍族大王「まあ、先代の地の龍王も考えあってやったんだが、そんなことすんのも初めてなもんで、ちゃんと2代目に継承されているかもわかんねえ。だから見せに来たんだ。貸してもらっている力だしな」
大地の精霊王が目を閉じると少女、地の龍王の居る地面が少し光った。
確認が行われたようである。
大地の精霊王「問題なく継承されていますね。でも軽く継承と言ってもなかなか大変な行為なんですけど、余程の意思の力をもって継承されたんでしょうね」
龍族大王「まあ変わったやつではあるな。力の使い方を思案するような、龍にしては珍しいやつだ」
大地の精霊王「それで“継承できる”ところまで思案がたどり着いたのですね。それでも独学でそこまで行くのは大したもんだと思います」
龍族大王「まあ長いこと龍王やってたからな」
一呼吸おいて龍族大王が続けて言う
龍族大王「でだ、改めて新しい地の龍王から挨拶があるぜ」
ニヤリと笑いながら言う龍族大王。
その笑い方から察するに、手荒な挨拶なんだろうなと予想した大地の精霊王。
そしてその予想は当たった。




