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突然侵入してきた精霊は、入るなり水の精霊王に向けて手の先から水を噴射する。
「お兄様、スキあり!」
水の精霊王は直撃寸前に霧散させようと思い準備したのだが、それより先に隣にいた大地の精霊王がダイヤモンドの壁を作って防いだ。
しずく「す、すいません。来客が居られるとはつゆ知らず」
侵入者、まだ少女の如き容姿のしずくが謝罪した。
泣きそうな顔になっている。
水の精霊王「“スキがあればいつでも攻撃して良い”と言った私にも責があります」
続けて“すいません”と謝罪の言葉を続けようとしたのだが、大地の精霊王がニコニコの顔で両手の平を前に出してそれを制した。
そして耳元に近づいて小声で言う大地の精霊王
大地の精霊王「取りようによっては“彼女のせいで王が謝罪した”とも見えてしまいます。お気持ちだけで大丈夫です」
はっとする水の精霊王。
大地の精霊王は笑顔をそのままに、未だ泣きそうな顔のままのしずくに近づいて言った。
大地の精霊王「こんにちは、お兄さんに水の精霊術を教わりに来た者です。よろしくね」
そして
大地の精霊王「ほら見ててね、えい!」
手を振るが何も起きない。
大地の精霊王「おかしいな、えい!えい!」
やはり何も起きない。
それをきょとんと見ていたしずくだったが
しずく「こうだよ!」
そういって手から水を噴出させる。
大地の精霊王「すごいすごい!」
大地の精霊王がニコニコ顔でしずくに向かって言い、
そしてしずくも笑顔になった。
そんな二人を水の精霊王が微笑ましく見ていた。
―
それからさらに時間が流れた。
水の精霊王の王宮に風の精霊王が訪れる。
風の精霊王「僕の所にも来られましたし、火の精霊王の所にも来られたそうですよ、大地の精霊王は」
水の精霊王「そうですか」
何でも燃やしたがる奴の事などどうでも良いのだが、顔には出さずに無難な返事をする水の精霊王。
そんな会話をしていると、大地のゲートが開く感覚を感じて水の精霊王が王宮のテラスに出て外を伺う。
風の精霊王も続いてテラスに出ると、やはり大地のゲートが開いていた。
中から大地の精霊王が出てきて二人に手を振る。
テラスから水の精霊王と風の精霊王が手を上げて振り返しつつ様子を見ていると、大地の精霊王に走り寄る少女がいた。しずくだ。
そのまま飛びつかんばかりのスピードで近寄ったのだが、飛びつくことはなく手前で停止し、大地の精霊王に向かって丁寧に挨拶をしている背中が見える。
そして大地の精霊王はしずくを見ながら変わらずニコニコしているのが見て取れた。
水の精霊王と風の精霊王も王宮から外に出て大地の精霊王に近づく。
大地の精霊王「先日はありがとうございます」
風の精霊王「いえ、お役に立てたのでしたら僕もうれしいです」
笑顔で答える風の精霊王。
水の精霊王も笑顔で頷いて同意した。
大地の精霊王「それで先日お話ししていた環境を作る件がひと段落したので、よかったら招待しようと思ったのですが…」
すこしだけ困惑の苦笑いをして大地の精霊王が小声で言葉を続ける。
「火の精霊王も遊びに来ているんです…」
今更、水の精霊王と火の精霊王との間柄には困惑することもないのだろうが、その場にいたしずくと火の精霊王とを会わせて良いかどうかを考えての困惑だったようである。
水の精霊王がしずくに言う
水の精霊王「これから訪問する先に、下品で野蛮な精霊がいるのだ。しずくは水の精霊国に残るべきだと思うのだが」
大地の精霊王と風の精霊王が苦笑いする。
しずく「いざという時はお兄様が居られれば問題ないかと…」
大地の精霊王と居たいという気持ちがあふれて見え、押し切られる形でしずくも同行する事となった。




