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2月下旬の日曜日、颯は前日夜から精霊界にある風の精霊国に帰国して不在だったが、江連邸では恒例の剣道稽古とボクシングのトレーニングが行われていた。


稽古前に涼から一つの申し出があった。

涼「春休みに諸般の事情で某国に行かねばならなくなりました。姫、焔、颯、そして私の4人で春休み初日に出発します。それで帰国の目処が立ちそうにないので…」

一呼吸おいてから言葉を続ける涼

涼「3月の第一日曜日か第二日曜日のどちらかを最後に一旦稽古を終了とさせて下さい。」

士郎知恵がいつもと変わらぬ感じで明るく言う

士郎知恵「OK!こちらこそ今までありがとうね」

前田羽美「私も、とても助かりました。とても良いペースで好きなボクシングに戻れたと思います。ありがとうございます」

前田羽美が改めて焔の方を向いて言う

前田羽美「ありがとう、焔君」

焔「こ、こちらこそ、ありがとうございます」

(全員”敬語上手になったなあ、焔(君)”)

士郎知恵「でも、日本にまた来られて“またお稽古しよう”って思ったら声掛けてね」

涼「もちろんです。よろしくお願いします」

心の底から素直に出た言葉だった。

士郎知恵「でもね、気づいているかもしれないけど…ネタ切れなの。涼さんに教える事ってもう無かったりするんだな。それでも良かったら一緒にお稽古してね」

涼「はい」

(涼“まだまだ力量差があるように思えるのですが…”)


焔「それで、俺からは前田さんに頼みがあります」

前田羽美「なんでしょう」

知り合ってからの期間はまだ短い前田羽美と焔だったが、この時はお互いがお互いの考えていることを相手も判っているだろうと直感していた。

それでも互いが相手の事を尊重し、“発言するもの”と“それを聞くもの”として振舞った。


焔「最後に本気のスパーリングをお願いします」

一呼吸は置いたが前田羽美は即答した。

前田羽美「わかりました。今の私の全力を出そうと思います。3分3ラウンドで良いですか?」

前田羽美自身が男子に交じってトレーニングしてきて慣れているのもあるが、男子である焔に合わせて1ラウンド3分を提案した。

焔「お願いします」


それを見ていた士郎知恵が涼に向かって提案する。

士郎知恵「じゃあ私たちも立ち会いましょうか」

涼「お願いします。あの奥義は無しで」

士郎知恵「うふふ。今のは一本ね」

そういって二人でほほ笑んだ。



この日の稽古&トレーニングが終わり、恒例の昼食会が開催された。

涼「じょう君、この後の予定は?」

士郎じょう「特にありません」

涼「では先日の手伝いの続きをお願いできますか?」

(士郎じょう“!”)

士郎じょう「わかりました」

涼「夕食の時間には帰宅してもらえるようにしますのでお願いします」

士郎じょう「はい」

士郎知恵「じゃあ、お母さんは先に帰っているからね」


そう言って士郎知恵と前田羽美は江連邸を出て帰宅し、入れ替わるように颯が江連邸に戻ってきた。

居間にいる皆の所にやってきて挨拶し、席に着く。

居間には涼、焔、颯、しずく、姫、そして士郎じょうが着席している。


涼が士郎じょうを見て言う

涼「お気づきと思いますが、“お手伝い”というのは方便です」


一呼吸おいて涼が言葉を続ける


涼「先日、全てお話しすると言っていた事、我々の全てをじょう君にお伝えしようと思います」


士郎じょう「はい」

士郎じょうが真っすぐ涼を見てはっきりと返事をした。


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