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風の龍王「ああそうだよ、勝負だ。ここは狭いから外で勝負しよう」
そう言って出口に飛び込んでいく風の龍王。
颯が空中から涼を見る。
涼「このまま二人がかりで水龍王をやっても良いんですが…」
あ、っと一瞬固まる水龍王。こめかみ付近に汗が流れている。
涼「そうなると風の龍王がすぐに戻って来て、結局2対2になるでしょう。そのまま風の龍王を追ってください」
颯が少し考えを逡巡させる。
水龍王の額からさらなる汗が流れだした。
(涼“まさかこうなる事を想定していなかったのか”)
涼は内心少しあきれながらも、右自然体の姿勢を崩さず警戒を怠らない。
数秒の逡巡の後、颯は涼に向かって頷き、超速のスピードで出口に侵入する。
そのスピードで衝撃波が発生したのだろう、出口付近の壁が崩壊した。
水龍王「え?」
その様子を見て唖然とする水龍王。
唖然とする水龍王をみて“カードが一つ増えたな”と思う涼だった。
水龍王「ふ、ふん。少ないチャンスを逃したな。洞窟を闘いの場にしたのは水と火の精霊力を補充させないためだ」
涼「白状したな。風の精霊王に対する対策はしていないという事を」
ブラフという名のカードを1枚切った。
水龍王「確かに、風と大地の対策は出来ていないが、この状況下では水と火の精霊王の本調子は出まい」
(涼“大地の精霊王が戻っていると勘違いしているのか?もしくは、まさかじょう君に危険が!?…だがあせってはいけない…”)
涼「私と敵対するという事は、水の精霊の加護を得られぬという事を知らないわけではあるまい?水の精霊力の加護を受けられぬ水龍王など、ただのドラゴンと変わらんのではないか」
水龍王「その只のドラゴンの身体能力があれば、今の貴様など圧倒できるだろう」
(涼“確かに、堅牢な肉体とその身体能力は、本来の姿に戻って戦っても厄介だろうな。ましてや精霊力を補充しづらいこの状況では…ならば”)
ブラフというカードをもう1枚切る。
涼「大地の精霊王と…」
先ほど得たカードも切る
涼「風の精霊王…どっちが先にこの場に駆けつけると思う?」
答えが“駆けつけるのは大地の精霊王”か“風の精霊王”という2択になるように思考誘導し、水龍王に他の選択肢、他の龍王が応援に来るかもといった事を考えさせないようにする。
そして涼は、ゆっくりとやや腰を落として前傾気味の姿勢をとり、
氷の刀を顕現させ、左腰横の位置に置いて左手で持ち、右手で柄を持っている。
“刀の届く範囲に近づけば切る”
嘗て師に教わった剣技の構え。
居合の構えだった。
地の利が不利な状況下でとれる苦肉の策は“味方が来るまで時間稼ぎ”“敵を焦らせて自滅を誘う”これしか無かった。




