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2月13日
6限目の英語の授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。
英語教師「それでは教科書の次のページの“What a good tackle! Stan is very good at tackling”は、次の授業までに皆さん各自で訳しておいて下さい」
清掃を行い、その後体育館に行って部活動を行う士郎じょう。
部活が終わって帰宅の為に校門を出る頃にはすでに日没していた。
帰路を行くメンバーは士郎じょう、顧問の涼、見学していた姫と颯、四人で帰路を歩く。
涼と姫と颯が住む江連邸と士郎じょうの家は隣り合って立っている。
そんな各々の自宅まで十数メートルほどの距離まで帰ってきたとき、姫が涼と颯に向かって口を開いた。
姫『今日もこの後出かけるのであろう?もう行って良いぞ』
涼と颯は困惑の表情を浮かべる。
第一に優先すべきは姫の護衛なのだから。
そんな二人の意図を表情から読み取り、姫が言葉を続ける。
姫『もう家が見えている。大丈夫じゃ』
涼は空気中水分の結界を再確認し、少なくとも“邪なるもの”が間近にはいないのを確認した。
その上で「では…」と言い、涼と颯は自宅とは別方向に向かって歩き出す。
向かった先は丘の上にある公園であり、目的はいつもの捜索だった。
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姫『まったく、涼は心配性なところは良い面なのだが、些か度が過ぎるような気がするのう』
士郎じょう「た、頼もしいじゃないですか」
姫『それはそうなんじゃが…』
士郎じょうは記憶消去術を受け付けない。その事実が発覚して以来、姫は士郎じょうとの会話をするときは、歯に衣着せぬ会話をするようになっていた。
そうやって姫と士郎じょうが立ち話を数分ほど行い、そろそろ自宅に向かおうかとした時に、姫と士郎じょうを中心として地面に直径数メートルの光る円が顕現した。
姫『むっ!!大地のゲート!?』
眉間に少ししわを寄せて光の意味を理解し、飛び上がろうとした姫だったが
「よっ!」
地面からフランクな少女の声がして、声の主である少女の上半身が地面から現れた。
現れた少女は姫と士郎じょうの足をつかみ、地面の中に二人を引っ張り込んで消えてしまった。
ゲートを抜けた先は直径は100メートルぐらいはあるだろうか円形の部屋となっており、広いドーム状の洞窟になっていた。
部屋の出入り口は一か所しかないように見える。
そして姫と士郎じょうとの位置と出口との間に、少女が立ちふさがっていた。
少女、と言っても背中には恐竜図鑑でみた翼竜の翼が生えており、手の爪は鋭く尖っていた。
姫『地の龍王!』
姫が少女の名前を呼んだ。
少女、地の龍王がニヤリと笑った。
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姫と士郎じょうと別れた涼と颯は徒歩で丘の上の公園を目指していた。
涼「姫にはもう少し慎重に行動して頂きたいのですが…」
颯「別れる前に索敵をされているのですよね?そこまでされているのでしたら…」
そんな会話を交わしていたら、涼が瞬時に表情を引き締めて、急に来た道を戻ろうと踵を返した。
同時に涼が端的に状況を伝える発言をする
涼「姫の気配が消えた」
颯が瞬時に意味を理解し、同様に表情を引き締めて踵を返すと、そこに風のゲートがあった。
ゲートの前には見知った二つの影があった。
「水龍王、風の龍王…」
水龍王「だまって付いて来てほしいんだが」
涼「あいにく急いでいる」
水龍王「姫の事か?地の龍王がエスコートした所だ。無事だよ、今の所はな」
颯の顔が険しさを増し、涼の顔も少し険しさを増した。
水龍王「詳しくはこっちで話すぜ」
そう言ってゲートの向こう側に行く水龍王と風の龍王。
風の龍王「この術、結構きついんで早くきてほしいんだけど…」
(涼“罠か…”)と思った涼だったが、
水龍王「どうした、姫もこっちの世界にいるんだぜ」
その言葉を聞いて、涼と颯は二人同時にゲートをくぐった。
ゲートを抜けた先は直径は50メートルぐらいの円形の部屋となっており、広いドーム状の洞窟のようになっていた。
おそらく地球でいうところのヒカリゴケのようなものを利用しているのか?天井の土が発光しており、照明となっている。
出入り口である穴が一か所しかないのが見て取れた。
水龍王「さて…やろうか」
涼「何をだ?」
水龍王「聞いていないのか?我々は貴様ら精霊界と戦う事となったのだ」
なぜ戦う事となったかは不明だが、水龍王の返事は予想の範囲内であり、涼は微動だにせず、水龍王に向かって右自然体の形で立っている。
颯は水龍王の発言「精霊界と戦う事となった」に対して驚愕の表情を浮かべていた。
そして颯が“なぜ戦うことに?”と疑問を発言するよりも先に風の龍王が言葉を発した。
風の龍王「風の精霊王はこっちに来て僕と勝負だよ」
そう言って風の龍王が疾風のスピードで空中を飛び、天井を旋回しだす。
颯が涼を見て、涼が颯を見て頷く。
颯が本来の姿に戻り、空中へ飛び上がった。
空中で風の龍王と対峙し、目を見据えて颯が言う
颯「…勝負…戦い、なのですね」




