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風の精霊王である颯が学校に通うようになり数日が経過した。

放課後に涼が颯を呼びだし、二人は校舎の屋上に到着する。

屋上の扉から外を伺い、誰もいない事を確認した後、屋内側の扉に“現在立ち入り禁止”の紙を貼り付けて二人で屋上に出る。

屋上側から涼が扉を凍らせて、万が一にも人間が屋上に来られないようにしてから颯に声を掛けた。

涼「これでOKです。」


颯が涼に向かって頷くと同時に、颯の体はふわりと浮き上がり、クルリと回転すると同時に強風が周囲に吹き荒れ、そして颯の身体は消えてしまった。

その強風の後は何事もなかったように無風の静寂が訪れる。

静かに時が流れ、数分後に再び静寂を破壊する強風が吹き荒れたあと、颯が竜巻の中から現れた。

涼「どうでしたか?」

颯が芳しくない表情を見せながら首を横に振る。


涼「もう少し時間を取れれば良いのかもしれませんが、無許可で屋上を立ち入り禁止にしているのが明るみになると、それはそれで問題があります。ここからの捜索はあまり頻繁にはできないと思います」

颯「わかりました。では次は夜に以前行ったあの場所で…」

涼「そうですね。私も同行します」


冬休みの間に捜索活動を行った際に、ちょっとした丘の上にある公園から風の王の捜索術を行ったことがある。

同じ場所から何回か行う事で土地勘がつき、高台は目につきやすいので戻って来るときにわかりやすというメリットを発見し、結構な頻度で利用していた公園だった。

元々、夜には人の往来が無くなり、かつ闇に紛れて術を行えるので、日没後に江連邸の人間で連れ立って行っていたのだが、だいぶ慣れたころに颯が一人で行こうとしたところ、

警察官「ちょっと良いかな?僕」

職務質問されたことがあった。

中学生程度の背格好の少年が日没後の暗闇の人気ない公園に向かおうとしているのだ。当然といえば当然の事だった。

その時は仕方なく引き返し、江連邸にて身分証明して事なきを得たのだが、

涼「見張りの意味も含めて、誰かが一緒に行った方が良いですね」

という事で、風の王が捜索術を使う際は、誰かが同行する事となった。



1月末日

颯を中心に捜索を行う江連家一行だったが結果は芳しくなかった。


ある日の夜、姫の寝室にしずくが訪れた。

ここ最近は恒例行事のようになっている

しずく「大王様からの(ふみ)をお持ちしました」

姫がベッドでマンガを見ながら返事する。

姫「うむ。いつもの場所に置いといて…」

返事もそこそこに集中をマンガに戻す姫。

窓の前にある学習机の上には、同じ封筒が十数枚重ねられていた。

最近は頻度を減らしてくれてはいたが、それでも2~3日に一通届き、姫の開封頻度はそれを上回るスピードで減少していたのだった。

初期のころはしっかり開封していたのだが、書いてある内容に大差がないのに数通目で気づき、最近では“精霊界でもコピー機を導入したのか”と思うほどの同一文章でになっていた。頻度減少やむなしだろう。

しずく「下に重ねておきますね」

姫「うむ。心得た…」

しずくは静かに退室し、姫も静かにマンガを読み続けた。



2月13日

バイトを終えた焔が店長に話しかける。

焔「じゃあお疲れ様です。でも店長、本当に明日は休んで良いんですか?」

店内にいた一部女性店員と一部女性客が“え!?”という顔をする。

店長「いいのいいの。クリスマスから年末年始、ずっと助けてもらったし。」

店内にいた一部女性店員が“よくない!!”という顔をした。

(焔“…じゃあ明日の夜は風の王の護衛を買ってでるか…”)

焔「じゃあお言葉に甘えます。お疲れさまでした」


帰路を歩く途中で〇〇町交差点に差し掛かった。

かつてここから山の方に向かって行き、中腹で敵と交戦したことがある。

そんな事を思い出しながら交差点に差し掛かろうとしたとき、交差点の陰に人影のようなものが見えた気がした。

(焔“なんだ?”)

そう思った瞬間に交差点の影が逃げたように見えた。

反射的に走って交差点に向かう焔。

交差点から影が逃げた先の方、かつて上った山の方を見ると、影が走って逃げているのが見える。

(焔“敵か?しかし携帯端末に連絡が来た形跡はない。…何者か、直接聞いてみるか”)

焔も走って影を追いかけだした。


やがて以前“邪なるもの”と交戦した山の中腹の街灯までやってきた。

もう少しで追いつくか?と思った瞬間、影の目の前に強風が渦巻き、風のゲートが顕現した。

影は戸惑い無くそのゲートに飛び込み、

焔は心では一瞬戸惑いながらも身体は戸惑わずに続けてゲートに飛び込んだ。


ゲートを抜けた先は直径は30メートルぐらいの円形の部屋となっており、広いドーム状の洞窟のようになっていた。

どういう理屈かはわからないが天井の土が発光しており、照明となっていてあたりを見渡す事に不備はなかった。

他には出入り口である穴が一か所しかないのが見て取れる。

そして焔の位置と出口との間に先ほどの影が立ちふさがり、その影の傍にはもう一つ影がいた。

視界が明らかになったので、2つの影の正体が判明する。

手足は2本づつ、顔は一つと一見人間のようだが、決定的にちがうのは背中に生えた翼竜のような羽だった。


「ありがとよ、どうもゲート術は苦手でな。助かったぜ」

「この術、結構大変だ…」


焔「炎の龍王、風の龍王…」

焔が正体の名前を呟いた。



風の龍王「じゃあ僕はもう行くよ」


そう言って風の龍王は、出口の方に向かってスウっと空中移動した。

焔は動かない。炎の龍王が好戦的な顔でこちらを見ており、それを警戒しているのだった。


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