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姫『しかし…涼、いつ判ったのだ?じょう殿が気づいていることに』

涼「前々から薄々感じていることは伝えていた通りですが、確信したのは先の野ざま温泉村で帰路につくまえの駐車場にて姫が記憶消去の術を掛けたときです。術の発動より一瞬早くじょう君が気を失っていました。」


姫『!全く気付かなかった…』

焔「ホントかよ!俺も気づかなかったぜ」

颯「僕もわかりませんでした」

姫「ヌシは雪山にうまっていたではないか」

涼「雪山に颯を突っ込んだのは姫ではありませんか」


面々に笑顔が戻り、車内の空気が軽くなったように思えた。


クルマは“地元の高速出口まで残り60km”の標識の下を、時速80kmで駆け抜けていった。



高速道路を降りてから、クルマは士郎じょうを降ろすべく士郎家を目指して走行し、やがて士郎家門前に到着した。

涼「じょう君。くれぐれもお願いしますね」

士郎じょう「はい」

とても重大な秘密を持ったのだけれど、なぜか心は軽くなっている気がする士郎じょうだった。

(士郎じょう“もう気絶して覚えていないフリをしなくて良いようになったからかな?”)

玄関で士郎知恵と挨拶をし、手土産を渡してから一行は江連邸に帰ってきた。


クルマから降りて焔は自室に戻り、涼は颯を滞在のために用意していた部屋に案内した。

しずくは門に行ってポストを確認したのち、屋内に戻るべく門から玄関に移動しようとしたところ、庭に封筒が大量に落ちているのを発見した。

拾ってみると10通ほどあり、全ての封筒には「姫ちゃんへ、お父さんより」と書かれている。


しずくが屋内に戻り、居間にて座っていた姫に封筒全10通を差し出す。

しずく「大王さまより文が届いておりました。」

姫『その数、何事じゃ!?』

3日間で10通の手紙が届いたことを察し、不穏を感じて急ぎ開封する姫。


「お元気ですか?」

「心配しています」

「大丈夫ですか?」

「無事でしょうか?」

「変わりなくお過ごしですか?」


一通に一文しか書かれていない…

手紙の数に感じた不穏は無用の心配であったことに安堵したのだが、同時に怒りを覚えた姫だった。


ゲートを開いて姫が言う。

姫『父上!心配してくださるのはありがたく思いますが、少し手紙の数をお控えください』

大王「…だって、心配だったんだもん…」



大晦日が過ぎ、年が明け、新年を迎えた。

そして三学期が始まって数日後、姫と士郎じょうのクラスに転校生がやってきた。

颯「江連颯です。よろしくお願いします」

涼「私と姫の親類になります。皆よろしくお願いしますね」


もともと学校が冬休みの間は江連邸に滞在して捜索活動を行う予定であり、実際に連日、颯は捜索に心血を注いでいたのだが、必死の捜索にもかかわらず結果は得られなかったのだった。

そして冬休みの最終日、颯からの懇願があった。

颯「私もこちらに残って捜索を継続したいのです。滞留することをお許しください」

姫が思案の顔色を浮かべて涼に助言を求めるべく声を掛けた。

姫『涼…如何なものか?』

涼「実は風の王が滞在を継続される事も想定して、既にある程度まで滞在延長を考慮した準備は進めてあります。」

涼が全員を見渡しながら話を続ける。

涼「それに、あの野ざま温泉スキー場で見せた風の王の“幾多の風に分裂して捜索する術”は、こと捜索という点では他に追随を許さぬ能力です」

焔「そうは言っても涼の“水の結界”も範囲は相当なもんじゃねえか?」

涼「私の大気水分結界は、空気が乾燥している場合は感知精度が少し落ちるようなのだ。そして風の王の術とは範囲も大きく違う」

颯「僕の場合は自身が風になって分離しているのですから、分離した各々が視覚などの感覚を共有できます。もっとも、無限に分離できるわけでは無いのと、手分けして探す”を分身で行っているようなものですので、スピードを限界まで上げても僅かながら時間を必要としますが…」

焔「それでも相当なスピードが出せるんだろう?」

風の精霊王が本気を出せば…とその場の皆が思ったのだが、

颯「スピードはもっと上げられると思うのですが、これ以上スピードを上げると人間界に迷惑がかかりそうなのです…」


しかし、と涼が言う。

涼「たとえスピードを抑えた状態であろうとも、その術は我々の捜索能力不足を補って余りある能力です。」

姫『よし、決めた!風の王、こちらでの捜索に助力せよ』

颯「ありがとうございます!」

涼「そうなるとやはり学生という身分を持っておいた方が良いでしょう。もう少し大人な背格好であれば学生ではなく自由に行動できる身分も考えたのですが、やはり今、準備を進めている中学生となって姫と共にすごしてもらいます」

颯「わかりました」

涼「事前に充分人間世界の事を勉強されているので、学生生活に関してはおそらく大きな問題は無いと思いますが…」

姫『勉強でもなんでも、わからぬ事があったら何時でも我に聞くがよいぞ』

頼もしい笑顔で姫が言う。

涼「勉強と言えば、本日が冬休み最終日ですが、冬休みの宿題の方は…」

姫の先ほどまでの頼もしい笑顔がしぼんで消えていった。


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