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全員がデザートを食べ終わり、お茶を飲みつつ涼が言う。

涼「明日の予定ですが10時チェックアウトの後に…」


姫『涼、頼みがあるのだが…』

焔「俺からも頼みがある」

奇しくも二人の願いは同じものだった。


“もう一日、スノーボードをしたい”


涼が少し驚いて焔に問う

涼「大丈夫なのか?」

焔「雪か?おかげ様でだいぶ慣れた。おそらく大丈夫だ。次に似たような機会があったときの事を考えて、スノーボードを滑れるようになっておきたいんだ」

先にゲレンデ中腹で涼と姫と合流したときに、姫が普通に滑っていた。

姫も未経験だったはずが、普通に滑られている…初心者レッスンっていうのはそれほどのものなのか?レッスンを受ければ滑れるようになるのだろうか?

そう考えての発言だった。


涼「姫は…」

聞くまでもなく“スノーボードでもっと遊びたい”と言わんばかりの笑顔だった。


涼が携帯端末を取り出し電話をする。

「もしもし、じょうくんですか?明日の合流時間なのですが変更を…」

2回の電話を終え、士郎じょうと保護者である士郎知恵の許可がおりたので、明日は夕方までゲレンデで過ごして、その後に帰宅する予定となった。

姫『前田さんは?』

涼「前田さんは明後日までここに滞在後、ご両親と合流して年末年始は御実家で過ごされると伺っています」



翌日

早めに朝食を取り、宿のチェックアウトを済ませて皆でゲレンデに向かう。

ゲレンデに着くと焔と颯は初心者レッスンを申し込んだ。

スクール受付「ではこのビブスを着て10時5分前には集合して下さい」

そう言って二人はビブスを渡される。


普段通りの顔色をしている焔に向かって涼が声を掛ける。

涼「大丈夫なようだな」

焔「おかげさまでな」

姫『では昼にここで待ち合わせじゃ』

そう言って姫と涼としずくはゴンドラに向かって行った。


程なくしてレッスンが始まった。

インストラクターの言う通りに体を動かす焔と颯。

颯「風に乗るのとは違った面白さがありますね」

焔「そうか、スクール、学校だもんな。授業みたいなもんだな」

今更ながら焔はそう思った。

そして慣れ親しんだ学校の延長みたいなものだと思うと、さらに気が楽になった。

順調にレクチャーは終わり、焔と颯はそこそこスノーボードをコントロールできるようになった。



昼食を堪能した後、皆でゴンドラに乗り、山頂まで登る。

昨日に続き快晴が広がっていた。

全員が雪化粧を施された美しい景色に見とれてしまう。

姫『やはり見事だな』

しずく「ええ…」

涼「はい」

焔「…正直、昨日は景色を見る余裕なんて無かったんで…」

颯「…この美しい景色が、あの方がこの地を愛された理由の一つなのでしょうか…」


全員でゆっくり景色を堪能しながら滑り降りたので、麓に降りたころには夕刻となっていた。

夕焼けに染まる空を見ながら、レンタルショップに道具を返却に向かう。

姫『次は山頂からの夕焼けを見たいな。きっと昼間に負けず劣らずの絶景だろう』

しずく「それは妙案です」

姫『それにゲレンデが広大で、まだまだ滑っていないコースがある。ぜひ制覇してみたい』

涼「1日では無理のある広さでしたね。2日か3日は必要でしょう」

姫『そうなると道具を所持した方が借りるよりも良いのではないか?』


そんな会話をしながらレンタルショップに道具を返却し終え、駐車場までやってきた。

車の前で待っている少年がいる。待ち合わせしていた士郎じょうだった。


その瞬間、颯が士郎じょうに向かって走り出した。

あ、っと思った姫が慌てて追いかける。

デジャブの如き、以前経験した似たような状況を思い出したからだった。


颯「お、お探ししておりました!!」

そう言いながら目じりに涙を貯め、士郎じょうに飛びかかろうとする颯を道路わきの雪山に突き飛ばして、返す刀で士郎じょうに記憶消去術を行う姫。もはや慣れたものである。

士郎じょうも気絶したふりをする。こちらも慣れたもの、慣れすぎた感すらあった。

そんな光景を涼はじっと見つめていた。



一行を乗せて、一路、クルマは江連邸への帰路を走り出した。

颯「すいません。いや初めまして、江連颯です。よろしくお願いします」

士郎じょう「いえ、あ、いや、その、は、初めまして、士郎じょうです」

車内で互いにあいさつをする二人。

(颯“本当に精霊力を感じない…。”)

しばらく走ると疲労を持った人間の身体も相まって、姫と焔と颯は眠ってしまった。

士郎じょうは後ろの席で窓の外に目をやりながらぼんやりと考え事をしている。

助手席のしずくが運転席の涼に声を掛ける。

しずく「皆様お疲れですね。お兄様は大丈夫ですか?」

涼「先ほど水分補給したのでな。」

水の精霊王はある程度までの人間体の不調なら、局所的な水の精霊力展開による干渉で人間体のままでも調整し好調化できる。

人体の50%程が水分であるが故に可能な術だった。

しずく「…顔色が若干優れぬようにも見受けられますが…」

涼「…少し考え事をしている…」

バックミラー越しに後席の様子を伺う。やはり士郎じょう以外の三人は寝ている。

見えない位置で水分子糸電話を使い、さらにボリュームを絞ってしずくにしか聞こえないように涼がしゃべった。

その言を聞き、しずくが驚愕の表情をもって涼を見る。

そのまましずくの視線が後席に向かおうとするのだが、それを制するように、涼がしずくを見る。

しずくはその眼力から涼の想いを感じ取り、ゆっくりと顔を進行方向に向け直した。

涼以外からは気づかれることは無いのだが、少しこわばった表情でフロントガラス越しの進行方向を焦点の合わぬ目で見つめているしずくだった。


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