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そんな風の精霊王の思いをよそに、情報を伝える涼。
涼「おそらくこの付近の森林内に居るとは思うのだが…」
風の精霊王が数秒思案したのちに言った。
風の精霊王「やってみます」
そう言ってふわりと浮き上がりながら、体をスケート選手のように回転させると、360度全方位に強風が吹き始めた。
強風は姫と涼をかわし、先々で分離して木々の隙間を縫うように吹き抜けていく。
風の精霊力をまとった強風、言うなれば風の精霊王の分身が、広大な山々を一人ローラー作戦ともいうべき行動で、あっというまに捜索しきってしまった。
「みつけました!」
同時に“まさに今、火の精霊王を攻撃しようとしている敵々”の存在も認識し、その攻撃をかわすことを最優先する。
林の隙間という隙間から分身の風が集合し、焔の体を竜巻のごとく巻き上げて、すでに日没し星の輝く夜空へと飛び上がった。
そして上空で本来の姿、風の精霊王の姿へと戻る。
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風の精霊王「大丈夫ですか?」
焔「か、風の王か?」
焔を抱えながら、ゆっくりとゲレンデに降り立つ風の精霊王。
地表に到着し、焔は風の王の支えから外れようとする。
よろめく焔に対し、再度支えようとする風の王。
焔「だ、大丈夫だ…」
焔はそれを固辞する発言をし、手のひらを風の王に向けてみせるが、上半身はそのポーズのままで下半身は地面にしゃがみ込んでしまう。
焔を気遣う様子を見せながらも風の王が言う。
風の精霊王「敵に襲撃もされていました。」
その言葉は風に乗り、直接、姫と涼の耳に振動する。
やがて合流する涼、少し遅れて姫も到着する。
おぼろげな焔の視界の隅に滑り降りてくる二人の姿がうつる。
風の王は姫と涼が滑り降りてくる方向とは逆方向を見ていた。
先ほど焔が滑落した場所だ。
そこからやつら、邪なるものが現れて此方を認識する。
険しい顔で敵をにらみ、戦闘態勢を取るべく手を前に出して体を前に進めようとする涼だったが、
風の精霊王「僕にやらせてください」
涼“風の王が戦闘を…先の戦いではまだ幼かったとはいえ、あの心優しき風の王が…”
戦いを行う決意をした、引き締まった表情の風の精霊王の顔を見て、ここは譲るといわんばかりに手を下げる涼。
風の精霊王「…あの時、僕がもっとしっかりしていれば…」
怒気を含んでいるような、悲しんでいるような、複雑な表情を見せながら敵に向かって手を向ける風の王。
次の瞬間、敵の周りに数百の見えない強風が発生し、強風同士が擦れ合うことによって無数の真空の刃が発生して敵を切り刻んだ。
切り刻まれた敵はそのまますべて霧散した。
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青息吐息状態だった焔も風の精霊王のすさまじい攻撃には目を見張り驚愕していた
焔「すさまじいな…」
涼も同意のうなずきを行う。
そして周囲に“邪なるもの”の気配が感じられないのを自身でも確認しつつ、(焔への説明の意味も含んで)声を出して涼が風の精霊王に聞く。
涼「風の王、先ほどの周辺探索の時に、他に“邪なるもの”は見られなかったかどうかはわかりますか?今、この周辺は湿度が低く、私の捜索方法では充分に探れているかどうか微妙なのです」
風の精霊王「さっき滅した三体しか見られませんでした。ついでに結構な範囲を捜査したので周辺には敵はいないと思います」
その言を聞き、一安心してしずくに連絡をとる涼。
涼「しずく、火の王と合流する事に成功した。そして敵を滅する事も完了した。じきに宿に戻れるのだが、宿の主人にもう一人宿泊者が増える旨を伝えてもらえるか?風の精霊王が合流したのだ」
しずく「風の精霊王様が!」
水の精霊と風の精霊はさほど相性が悪くはない。というより水と火の相性が悪すぎるだけなのだ。その差が敬称になって表れた。
涼「詳細は後程話す」
そう言いながら時計に目をやる涼。時間は午後6時を指していた。日没して夜空になっていたので時間の感覚に疎くなっていたのだろう、もっと遅い時間になっていると思っていたのだが、時間は思ったほど経過していなかった。
涼「宿の主人に急で申し訳ないが夕食の用意も追加一人分頼むと伝えてほしい」
しずく「了解しました。」
しずくが即時に動いたようで、数分後には返答の連絡がきた。
しずく「宿の主人より快諾のお返事を頂きました。“道中お気をつけて。心より到着をお待ちしております。”との事です」
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涼がしずくと連絡を取っているとき、姫は風の精霊王と話をしていた。
姫『大儀であった。風の王』
「お褒めにあずかり、光栄でございます」
そう言って跪く風の王だったが
姫『あ、人間のいる前では跪かずとも良いぞ。むしろ不自然となるのでな』
風の王「は、はい」
そう言って跪いたまま頭をさらに下げる風の王。慣れるのには少し時間がかかるようである




