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やっとの思いでゲレンデに到着し、“スノーボードスクール受付”と書かれたドアを焔が見つけたのはレンタルショップを出てから1時間後だった。

途中、宿泊している宿の従業員の方や何人かのスキーヤーやスノーボーダーに

「大丈夫ですか?」

と声をかけられた。

余程不調に見えたのだろう。(実際不調なのだが)

「大丈夫っす」と険しい顔で答える焔。

顔が険しくなっている自覚はあるのだが、愛想笑いを作る余裕はなかった。


スクールのドアにはレッスンの時間割が書いてあった。

“初心者レッスン午前の部:10時から(受付締め切り9時30分)”

時計を見ると10時を少し回っている。

少し離れたところにビブスを付けた集団がおり、その中に姫としずくがいるのが見えた。


(どうしたものか…)

と思案していると、後ろの方から人の話し声が聞こえてきた。

少し年配のスノーボーダーが少し若いスノーボーダーと話をしており、その会話が聞こえてきたのだった。

「今時はスノーボードもスクールがあるんだな。私がスノーボードを始めたときはスクールなんて無かったよ」

「どうやって滑れるようになったんですか?」

「ゲレンデで頂上に行って、上手な人を観察しながら転んで転んで転びまくって覚えたよ。昔はスクールどころか教える事が出来る人なんてほとんど居なかったからね。」

「ケガしなかったんですか?」

「幸い、ひどい打ち身程度で済んだけど、下手したら大怪我だったよ。今から考えるとひどい話だ」


焔「…よし」

“リフトチケット売り場”と書かれた建物に向かい、焔は歩き始めた。



11時、涼は山頂を訪れていた。本日4回目の山頂である。

姫をしずくに任せ、自身は調査のために早々に山頂へ向かったのだが誤算があった。

正直、野ざま温泉スキー場がこれほど広いゲレンデとは思っていなかったのである。

野ざま温泉スキー場は信州でも屈指の広大なゲレンデであり、山頂からは多岐にわたるコースが広がっていた。

周辺に注意を払いながら2回ほど山頂から(ふもと)までコースを違えて滑り降り、3回目の山頂行きゴンドラに乗る際にスタッフに質問してみた。

涼「山開き前の安全祈願はどの辺で行われるのでしょうか?」

スタッフ「すいませんアルバイトなのであまり詳しいことはわからないのです」

涼「いや、こちらこそ。」


ゴンドラに乗車し考えを逡巡させる。

涼(管理事務所に行って聞き込みしてみるか…。いや、怪しい人物と思われるかもしれない…)


…ならばアレで…

“空気中の水分を利用した結界網による索敵”を試みてみる、が、ここにも誤算があった。

思いのほか湿度が低く、大気中の水分が少なくて上手くいかなかったのである。

(涼“これほど雪があるのに大気は乾燥する…知識としては知っているのだが…うまくいかぬものだな”)

そう思ってすぐに今朝ほどに自分が焔に言った言葉 “…知識としては知ってはいるが…”を思い出し、自嘲を含んだ笑みを浮かべて涼は思った(私もまだまだだな)。


結局、それ以上、他に妙案は浮かばず、しばらくは山頂で見渡すだけ見渡し、(あまり山頂に留まっていても怪しいので)、周囲を警戒しながら(ふもと)に滑り降りるのを繰り返す事とした。



12時、レッスンを終えた姫としずく、調査を行っていた涼、別行動で遊んでいた前田羽美とその友人、そして士郎じょうが合流し、ゲレンデにある食事処で一緒に昼食をとる事となった。

姫『もう大丈夫じゃ。前にこけようが後ろにこけようが100%受け身がとれるようになったぞ!』

しずく「レッスン終盤には転ばずに滑り降りておられましたよ。」

姫『しずくも見事な滑りであったではないか』

しずく「わたくしの場合はズルを行えます故…」

そう言って意味ありげにほほ笑むしずく。

前田羽美とその友人はピンとこないといった顔で、頭にハテナを浮かべていた。

士郎じょうはうつむいていた。


やがて運ばれてきた料理に舌鼓をうつ面々。

友人「噂では聞いてたけど、姫ちゃんは本当に美味しそうに野ざま菜食べるのね。私の分も食べる?」

そういって付属の小鉢を姫に差し出す友人。

姫『ほ、本当に良いのですか?一生恩に着ます!』

そういって差し出された小鉢の野ざま菜を勢いよく食べる姫だった。


前田羽美「そうか、焔君は体調不良か。昨日から顔色優れなかったものね」

涼(昨日の時点ではさほど変化があったとは思えないのだが…)

涼「気づいておられたのですか?」

前田羽美「専属トレーナーだからね」

友人「ふむ。いや、それは愛の力だね」

友人が“ね”を言った瞬間、目の前に前田羽美のこぶしが寸止めされていた。

友人「じょ、冗談よ」



13時、昼食後に涼が焔の携帯電話に電話をかけてみたのだが、

「おかけになった電話は電波の届かない場所にあるか、電源が入っていないためかかりません…」


涼がしずくに話しかける

涼「焔が電話に出ない。万が一を考えて様子見に行くべきかとも思うのだが…」

しずく「…となると…調査続行するものと様子見に宿へ戻るものと分担すべきという事ですね」

涼がうなずいて言う

涼「もし“邪なるもの”との戦闘となった際のことを考えると…」

しずく「止むを得ませんね。私が様子見に戻りましょう」

涼「すまん」

しずく「しかし姫は…」

二人が視線を向けると、スノーボードを片手に持ちながら、満面の笑みで手を振る姫がいた。


涼(初心者の姫と一緒となると…山頂からもう1回か2回ぐらいを滑り降りるのが限界か?)


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