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まず士郎じょうと前田羽美をおばあさんの家の前で降ろして、江蓮家の4人は予約していた宿に向かう。

物の数分で宿に到着し、チェックインを済ませて部屋に案内される。

しずくが湯呑に人数分のお茶を入れ、皆で一息ついた。

涼がパンフレットを手に取り読み上げる。

涼「野ざま温泉村は村内に点在する無料の温泉設置、所謂(いわゆる)“外湯”と呼ばれるところで入浴するのが醍醐味の一つ…なのですが、本日は宿の浴場を利用しましょう」


焔「…俺は飯の後に入るぜ」

涼「そうか」

姫としずく、涼が浴場に向かう。


(焔“涼の家で風呂に入るのは問題なくこなしているのに…なんだ?この感情は?風呂に入るのをなぜ今さら戸惑うんだ?”)



姫『温泉は…すばらしい』

ほくほく顔の姫が浴場から部屋に戻られての第一声がこれだった。

しずくや涼までも笑みを浮かべており、姫の言葉を無言で肯定していた。


そんなほくほく顔の姫だったが、何かを察したのか眼光鋭く睨んだ。

睨んだ先には時計があり、午後6時59分を表示していた。

姫『いよいよだ!いざ、夕食へ!野ざま菜へ!!』

一行は宿の食堂へと向かった。


姫が泣いている。

感極まり、涙しながらボリボリと野ざま菜をかき込む。

走馬灯のように思い起こされるのは、あえて遠ざけた野ざま菜の小鉢の思い出…数時間前の今日のお昼の話である。

姫『野ざま菜よ、ああ野ざま菜よ、野ざま菜よ…』

無意識に思わず一句読んでしまう姫だった。

こうなることを予想し、追加料金を払う故に、野ざま菜を多めに出してもらうように宿と事前交渉をしていて良かったと思う涼だった。


満腹となり、おなかを摩りながら姫が言う。

姫『やはり見事であったな。流石は本場といったところか。国に帰ったら本日12月27日を我が国の野ざま菜記念日と定め…あれ?』

涼「人間の使う暦と我々の暦とでは違いがありますので…どうしましたか?」

姫『なにか大事な事を忘れているような…思い出せん…』


そのころ、信州の壮大な山々の森林の中を、一陣の風が気持ちよさそうに飛び回っていた。



食事を終えて部屋に戻り、軽く確認の会話をする。

涼「旅行の日程は2泊3日です。明日はゲレンデでスノーボードを行うのですね?」

姫『うむ』 

涼「前田さんのアドバイスに従い、ゲレンデでスクールに入り、レッスンを受けて頂きます。その前にレンタルショップに行って道具をひと揃えレンタルします。」

姫『テレビで見た感じでは簡単そうに滑っていたのだがな』

涼「前田さん曰く、“最初はすごく難しく感じる”との事です。そこは私も同意見です。」

焔「同意見って…ひょっとして涼はもう出来るのか?」

涼「ああ、ある程度はな。なんどか経験して覚えた。スキーとスノーボードを両方な」

姫『あと“ケガがしやすいスポーツなので注意よ”とも言っておったな』

涼「はい。ですのでスクールでのレッスンは必須です。逆算して明日は7時に起床して食事となります」

涼が携帯端末の目覚まし機能をセットしながら言う。

姫『朝ごはんも野ざま菜出るかな?』

ニコニコ顔の姫が言う。

涼が笑顔で頷き返す。宿側に事前確認しておいたのだった。


会話が終わり、姫としずくは別室の寝室へ引き上げる。

部屋には涼と焔が残り、会話を続けた。

焔「2泊3日か…」

涼「まあ、短いな。だが確証の無い情報の調査が目的だからな。長く期間をとっても仕方あるまい。まずはアクセス方法の確認といったところだ。明後日に引き上げた後に新情報が入れば、再度ここに来訪する事も考慮するさ。もちろん明日中に未確認の情報がはっきりと確認出来て、懸案事項が解決してしまえればそれに越した事は無いのだがな」

そう言って布団に潜り込む涼。

やがて焔も瞼の重さを感じ、そのまま布団に入って眠りについた。



翌朝、朝食を終えて宿のそばにあるレンタルショップで道具を一揃えレンタルし、店外に出たときに焔が思わず言葉に出した。

焔「ちくしょう、どうなってんだ!?」

昨日から感じていた原因不明の体調不良が悪化しているのだった。

青い顔をしている焔を心配そうに見る姫。

しずくまでもが憂慮の顔色を浮かべて焔を見ている。

涼「おそらくだが…」

そういって道路わきに残っている雪山から雪を一握りつかんで焔の前に差し出した。

涼「雪だ」

焔「…知ってるぜ。それぐらい」

涼「実物を見るのは昨日が初めてだろう?火の王が氷点下の産物を見ることなど今まで経験があるまい。雪の存在を知識としては知ってはいるが、未知な“水の変化物”である雪に対し、本能が警戒しているのだ…と推察している」

焔「…」

涼「ましてや…」

そう言って周りを見まわす涼。つられて焔、しずく、姫も見回す。

涼「これだけの雪、いわゆる水の一種に囲まれている状況なのだ。火の王が不調となっても不思議ではない」

涼が言葉を続ける。

涼「言ってしまえばさらに意識してしまうかと思いだまっていたのだが…悪いことは言わん。今日は一日、宿の部屋で待っていろ」

そう言ってゲレンデの方に向かう涼。

しずくと姫が同意をしめす頷きを行い、涼の後に続いた。


しばらく青い顔のまま立ち尽くしていた焔だったが

焔「…ここまで来てそりゃねえだろ」

すさまじく重い足取りで、焔もゲレンデに向けて歩みだした。


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