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数日後の日曜日、江蓮邸道場にて剣道とボクシングの稽古が行われた。

中々予定が合わず、士郎知恵が稽古に参加するのは久々だった。

道場の3分の2は人数が多い剣道組が稽古を行っており、残りの片隅の方ではボクシング組の焔と前田羽美がトレーニングを行っていた。

前田羽美がパンチングミットを着けて焔に攻撃をし、焔はストレート系パンチの攻撃をヘッドスリップで(かわ)し、フック系パンチの攻撃はウィービングで躱す。的確に判断して各系統に最適な躱し方をする練習だった。

躱した後は構えられたミットにパンチを打つ。

ディフェンス主体で練習したいとのコンセプトで始めたボクシングトレーニングだったが、ボクシングのリズムで学ぶとなると、この方がテンポが良くなるから、とコーチである前田羽美の言で“躱してからパンチを打つ”というリズムでトレーニングをしている。

子気味良いパンチ音が道場内に響く。


元々格闘技には造詣が深い士郎知恵ではあったが、久しぶりに見たからこそ気づいた事があった。

(士郎知恵“逆に頻繁にボクシングの練習を見ている息子のじょうや、もしかすると涼君ですら気づいてないかもね。もちろん当人の焔君にも、ちゃんと気づかれないようにやってるんだろうな…”)

前田羽美の攻撃パンチスピードがトレーニング開始初期の頃とは比べ物にならないほど高速になっているのである。

そして焔はそれをしっかり躱し続けていた。


1分のインターバル中に、士郎知恵が前田羽美に、焔には聞こえない声量で話しかける。

士郎知恵「すごいね、久しぶりに見ると、というか久しぶり見たからこそか」

前田羽美「焔君が疑いなく、素直に言われた事をきっちりやってくれるんで、そこが大きいですね。ちょっと素直すぎるというか、悪い人に騙されないか心配になるぐらい少年みたいに純粋なところがあるのが気になりますけど、高校1年生だとこんなものだったっけかな…」

士郎知恵「本人には伝えないの?それともそのうち気がついて、魔法が解けちゃうかしら?」

前田羽美「このまま気づかれずに限界までスピードを上げ続けるのが理想なんですけどね。知っちゃうと一時的に油断が入る場合があるので。でも涼さんとか感が良さそうだから、気づいて伝えちゃうかも。それでもここまでイケてるんで、もう大分身体に染みついてるでしょうから大丈夫だとは思うんですけど」


少し離れたところでステップを踏み、シャドーを行う焔。

それを見て士郎知恵が言葉を続ける。

士郎知恵「パンチもなかなかなんじゃない。素人目から見たら十分凄いんだけれど」

前田羽美「まだトレーニングを始めて数か月っていうのを忘れそうになります。“躱すためにパンチの種類を覚えてもらう”って事でパンチも覚え始めてもらったんですが、これも素直にきっちり反復練習してくれてるんで、結果パンチ打つ方もかなりのレベルだと思います」

インターバルの1分が終わり、トレーニングを再開するために前田羽美は士郎知恵に軽く会釈をしてから焔の方に戻っていった。

前田羽美「じゃあ勝負どころのチャンスの為に、パンチのコンビネーションラッシュも覚えようか!」

焔「…えーとディフェンスメインで…」



稽古後には恒例の昼食会が行われた。

涼「もし良ければ自動車購入に関してアドバイスを頂きたいのですが」

誰かからアドバイスを貰いたいと考えた時、涼が最も信頼する人間が士郎知恵だった。

士郎知恵「そうは言っても、私おクルマにはそんなに詳しくないわよ。私が聞いた事と感じた事で良いなら少しはアドバイスできるかも、だけど。…でも後で調べなおしてね。当時と今とじゃ状況とかが変わって、古い情報だとダメな場合もあるから」

涼「はい」

士郎知恵「私の場合は、免許は学生の頃に取ったんだけど、学生の頃はお金が無かったのですぐにはおクルマは買えなかったなあ。最初に自分のおクルマ買ったのは就職してお金が貯まってから買ったの。それでもそんなにお金の余裕は無かったから中古車だったわ。ほんとは安いんで軽自動車が買いたかったんだけど、“少しでも頑丈なクルマに乗って”って両親に懇願されて、それで軽自動車じゃないけど小さくて安い1000ccのクルマを買ったの」

記憶をたどりながら士郎知恵が話を続ける。

士郎知恵「その時に私もいろんな人にアドバイス貰ったんだけど、“普段何人乗るのか”ってのを考えるように言われたの。私は独身だったけど、結婚して子供がいる人は子供の人数を考えないとねって。」

涼「なるほど」


士郎知恵「あとは出身地の長野県北部って凄く雪が降るんで、地元の人は当たり前のように四輪駆動のクルマを買うのね」

涼「雪が降る地方は四輪駆動の方が好ましいのですか?」

士郎知恵「タイヤが4つ回っていたら、1つ滑っても3つが回って進んでくれるんで良いらしいよ。それでも地元の人に言わせると、ちゃんとスタッドレスタイヤって雪道用のタイヤを履かないとだめなんだって言うんだけど。 まあ、そんな地方で育ったんで“4輪駆動を買えば良いんだ”って変にインプットされていたみたい。それで自分が最初に中古車買った時も4輪駆動を選んだのね。四駆って割高でおサイフに厳しいのに。 そしたらそれが大失敗」

涼「えっ?」

士郎知恵「大失敗は言い過ぎたかな。小失敗かな?だって肝心の当時住んでた近辺、雪降らないんだもん」

そう言って笑う士郎知恵。

士郎知恵「スタッドレスタイヤも高いし、4輪駆動って車自体が重くなるから燃費も悪くなるし…。だけどおかげで長野に帰省する時は、クルマで帰省できるのがラクだし楽しかったから…やっぱり小失敗でも無いかな? でも長い距離を頻繁にドライブするって人には燃費って重要よね」

涼「なるほど」


士郎知恵「まとめると、やっぱり一番重要なのは“普段何人乗車するか”と“実際に試乗してみて、運転し易いかどうか”じゃないかしら。 乗車人数が多いクルマってボディーも大きくなるから、小さいクルマよりも運転しづらいと思うし。 最近のクルマって大きくても運転しやすいように工夫されてるって話だけれどもね。 あとは雪降る所を走行する予定があるかどうかと、いっぱいドライブする人は燃費とかも考慮の対象かな。…こんなところかなあ。ごめんなさいね、なんかフワフワしたアドバイスで」


涼「いえ、とても参考になりました。ありがとうございます」


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