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帰路を歩む途中、涼が焔に目を向けて喋り出す。

涼「ところで焔、大事な事をすっかり忘れていたのだが…」

そう言ってカバンから紙を取り出し焔に渡す。

焔「なんだこれは?」

涼「履歴書というものだ。アルバイトの募集要項を読むと持参するように書かれているか、書かれていなくても面接時に持参するように言われる事が大半だ」

住所、氏名など必要事項が埋められていた。

学歴を記入するところにはアルファベットで学校名が記されていた。

焔「これは…」

涼「そこが問題の所でな、帰国子女の焔としての経歴を協力者に用意してもらったのだ。海外のとある国の、実在する学校に居た事になっている。海外の協力者に骨を折ってもらった。卒業記録にちゃんと記録を追加してくれているのだ」

焔「助かるぜ。サンキューな」

涼「あとは面接時に「帰国子女ですが日常会話は問題ないと思います」と言えばいい」


学校からの帰路の途中には何件かコンビニがあった。

その内の一件を通り過ぎる時、自動ドア横のガラスには“アルバイト募集中”の貼り紙が貼られていた。

焔は学校で野原 秋奈が言っていた言葉を思い出す。

(“あの3年生と入れ替わりに当事者である焔君がアルバイトに来たら…春香本人は嬉しいけど、春香本人はとても嬉しいけど、春香本人はとってもとっても嬉しいけど、焔君に迷惑が掛かるかもって考えたんじゃないかな。直接じゃなくても、噂とか間接的に…”)

(焔“別に迷惑とかはあんまり感じないし、よくわからないんだが、桜のアルバイトしているコンビニは…たしか駅方面って言ってたから別の店だよな。ここならあいつが気にする事も無いだろう”)


焔「よし、ちょっと行ってくる」

そう言ってコンビニに入ろうとする焔。

涼「待て、行ってくるとは?何をするつもりだ?」

焔が“アルバイト募集中”の貼り紙を右手の指でさし、左手の指で先ほど預かった履歴書を持って言う。

焔「いや、ここでアルバイトを…」

涼「思い立ったが吉日とは言うが…まずは履歴書をよく見てみろ」

焔「?」

涼「“ここに写真を貼って下さい”と書かれているだろう。その履歴書は写真がまだ貼られておらず、未完成なのだ」

焔「写真って、携帯で撮影するもんだろ?携帯をここに貼るのか??」

涼「…教科書とかにたまに人物写真があるだろう。紙に印刷して貼り付けるのだ。履歴書用や他用途などの写真を撮影する機械が駅前にあったはずだ」


焔はその足で駅前に向かい、無事証明写真を入手した。

焔が最初に小遣いから使用したお金は証明写真代金800円だった。



焔はまず電話で面接のアポイントをとった。

その際に働ける曜日と時間も伝えておいた。

涼からのアドバイスだった。

涼「あとは向こうが“条件が折り合うかどうか”を検討したうえで面接を行える。まあこちらの就労可能日と時間が少なめだから、都合が合わねば面接で就労拒否されるが、それは仕方が無いと諦めるしかない」


電話の向こうで店長と名乗った人物が発言する

「それでは面接当日に履歴書を持参して来てください」

そういってアポイントの電話は終了した。



数日後、面接当日が来た。

コンビニに入り、店員に声を掛ける焔。

焔「おはようございます。アルバイトの面接で来ました」

店員「江蓮さんですね。お伺いしています。こちらに来てください」

そう言ってバックヤードを通過し、小さな休憩室に案内される。

店員「実は急な用事が入って、店長が本日は不在なのです。ここは支店なのですが駅前の本店でバイトリーダーやっているオーナーの娘さんが代わりに面接に来られます。もう少しお待ちください」

焔「わかりました」


数分後、ドアがノックされて店員が立ち上がり、ドアを半開きにしてノックの主であろうオーナーの娘と会話をしだした。少し会話をした後、やがて店員が部屋から退室し、入れ替わりでノックしたであろう人物が入って来た。

「失礼します…焔君!?」

桜 春香だった。


焔「そうか、駅前が本店でこっちは支店なのか。」

桜 春香「急な話だったから“人となりだけ見てきて”って言われて来たの」

焔「バイトリーダーなんだ。凄いな」

桜 春香「…う、うん。お手伝いの延長で…」

若干顔を紅潮させてうつむく桜 春香。

気が付けば、焔と少し狭い部屋で二人っきりというシチュエーション…意識すればするほど、面接をする側の桜 春香の方が緊張を増していた。


焔「あ!」

先日の涼のアドバイスを思い出した焔が言葉を続けた

焔「帰国子女ですが日常会話は問題ないと思います」

少し笑い、緊張が解けた桜 春香が笑顔で答えた

桜 春香「うん。知ってる」

焔の採用が決まった。


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