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水のゲートの向こう側には中央に3人の人物がおり、周りは側近が数名いた。

中央の一人は王族の精霊大王、精霊姫の父親である。

もう一人は精霊姫の母親である精霊女王。

そしてもう一人は風の精霊王だった。

声を聴いて風の精霊王は(ひざまず)いた。


精霊大王が満面の笑みで叫ぶ。


精霊大王「姫ちゃん!!!」

固まる周囲の側近。

精霊女王「あらあら姫、お久しぶりです」

精霊女王はマイペースを崩さない。

精霊大王が周囲の空気を読み、威厳を取り戻して言った

精霊大王「ど、どうだ、そちらは?」


姫『父上、母上、元気でやっております。風の王も来ていたか』

跪いた男、風の精霊王が答える

風の精霊王「ご機嫌(うるわ)しゅう、姫様」

涼が頷き、焔が笑顔で手を上げる。

しずくは少し後ろで跪いていた。

姫『楽にせよ、風の王』

姫の言で立ち上がる風の精霊王。

あどけない少年のような顔をしているが、じくじたる思いを内に宿している、そんな表情をしていた。


涼「捜査の報告ですが、進展は…ありません。申し訳ございません。つきましては術式解読調査班の方の進捗は如何でしょうか?」

精霊大王が画面外に目を向けると、男が一人フレームインしてきた。

調査班の男「申し上げます。調査班の解析によりますと、場所は変わらず日本の〇〇市、時期も前後数年以内が最も確率が高いとの調査結果です。前回解析は40%程度の出現確率でしたが、今回の計算では70%以上の精度となりました」

涼「確率が上がりましたね。喜ばしい事です」

調査班の男「姫様、始め、皆様の捜査と調査によるところが大きいと思います。計算に“現在未接触因子”を組み込めるのが大きいかと。あとは“もう出現されているのか”、“まだ出現されていないのか”、ここの部分が…」

調査班の男が苦汁をなめるような表情をして言葉を濁す

涼「仕方ありません。過去にたった1度だけ偶発的にしか行われていない術を、一度見ただけのうろ覚えの状態で解析を行うという無理な依頼なのです。気に病まれぬように」

調査班の男「お心遣い、感謝します」

精霊大王に即されて、調査班の男が各人にお辞儀をした(のち)フレームアウトする。


精霊大王「こちらの方は変わった様子は無い。引き続きよろしく頼む」

精霊女王「よろしくお願いします」


姫『ではごきげんよう』 


ゲートによる通信が終了した。

姫『やはり、風の王は何か言いたそうじゃったな。まあ言わんでもわかるんじゃが』

涼「はい」


姫『ところで涼』

涼「なんでしょうか?」

姫『雨天の場合はゲートはどうするのだ?』

涼「…いざという時は雨天をコントロールして一時的に降雨を止めますが…そこまでせずとも風呂場を利用する事を推奨します」

姫『なるほど』


姫が上空を見上げ、つられてそこに居た皆も夜空に目を向ける。

雨天の心配は無用と言わんばかりの星空が広がっており、きれいな月が天空に浮かんでいた。


姫『…!、思い出したぞ!』

涼「どうなされました?」

姫『月の綺麗な夜にはお団子を食べねばならないのだ!』

涼「…“ねばならない”では無いはずですが」

姫『こ、細かい事は良いではないか。しずく、明日の夕食後のデザート、頼むぞ』

しずく「御意にございます」

しずくが微笑して答える。


(涼“いざという時はコントロールして一時的に降雨を止めますが…”)

そう考えながら携帯端末を取り出し、翌日夜の予想降水確率のサイトを閲覧する涼だった。



焔が学校に通い出して一か月ほど経った。

学校生活にも大分慣れてきており、生活も大方ルーティン化されていた。

姫とダッシュで帰宅する曜日が1日、他に姫と帰宅する日が2日、他の曜日は涼が姫と帰宅可能で、焔がその時間に合わせて待つとなると、そこそこ長時間を待つことになる。

なので、姫から

『先に帰宅しても良いぞ』

との許可は出ていた。

しかしだからと言って、特段用事があるわけでもなかったので、姫の帰宅時間まで待ってから、姫と涼と合流して帰宅する事が多かったのだが、最近はある事を考えていた。

アルバイトである。

(「あとは、何をするにもお金ってのがかなり重要だな。というかお金が無ければ人間界では何もできないんじゃねえか?」)

焔が人間界に来てすぐの頃に持ったお金に対しての感想であり、今でもお金に対しては同様に思っていた。



学校にて雑談中にクラスメートの桜 春香に質問してみる焔。

焔「アルバイトやってるって言ってたよな。どんな事やってんだ?」

桜 春香「私はコンビニ。アルバイトに興味あるの?」

焔「まあ、どんな感じなのかなと」

桜 春香「普通のコンビニだよ。レジ打ちやって、品出しやって、ホットスナック揚げて…」

焔「日本に慣れてないやつでも務まるかな?」

桜 春香「あ!今うちのコンビニちょうどアルバイト募集してるから…!あ…えーと…」

最初は嬉しそうに言いだした桜 春香だったが、段々とトーンが下がっていき、最後は少し悲しそうな顔になっていた。


チャイムが鳴り、自分の席に戻っていく桜 春香。

その背中を横目で見ながら、桜 春香の友人である野原 秋奈が焔に言った。

野原 秋奈「彼女のアルバイトしているコンビニが何故アルバイト募集しているかと言うとね、例の3年生がアルバイトやめちゃったからなんだって」

例の3年生とは襲撃事件の3年生の事だ。

野原 秋奈「やめた理由は…まあ普通に気まずいでしょうしね。でだ、そこに入れ替わりに当事者である焔君がアルバイトに来たら…春香本人は嬉しいけど、春香本人はとても嬉しいけど、春香本人はとってもとっても嬉しいけど、でも焔君に迷惑が掛かるかもって考えたんじゃないかな。直接じゃなくても、噂とか間接的にね…」

焔「そこら辺の感覚が…よくわからないんだ。なんかすまん」

野原 秋奈「こういうのって日本人的な感覚なのかな?あと大事なところはがっつり強調したのに、やっぱりしっかりそこは流すのね」

複雑な笑顔で野原 秋奈が言う。

焔「?」

話もそこそこに、野原 秋奈も自分の席に戻っていった。



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