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休憩を兼ねた携帯端末のレクチャーが終わり、ランニングが再開される。

森林公園を抜けて、かつて買い物をした商店街を通過し、最後に焔からのリクエストで駅から江蓮邸へのルートを走った。


涼「そんなに難しい道でもないと思うが…」

焔「確かに。案外簡単な道なんだな」

涼「そうか、昼と夜とでは印象ががらりと変わるからな。それに昼間は目印も見えやすくなるか」

焔「とにかく助かったぜ。サンキューな」

涼「早朝にジャージでランニングする分には、警察から職務質問される事もないと思う。あと注意点としては…もし道に迷ったら電話してくるといい」



邸内に入ると既にしずくが朝食の準備を整えていてくれていた。

朝食を取り、涼は姫と学校に向かう。

焔は部屋に戻り、ここ最近の日課となっているボクシングの自主練習と、涼から提供された小中学生用の教科書を読み漁る日々を過ごした。

涼「帰国子女として考慮はしてもらえるのだが、それでも最低限の高等教育を受けられる素養はあった方が良いだろう。それに“知らないことを知る”という経験は存外面白いものだぞ」

そう言って置いていかれた教科書たちだった。



2週間後、焔が初登校する日がやって来た。

焔、涼、姫、士郎じょう、の四人で歩いて学校に向かう。

焔「なんか…みんなこっちを見ていないか?」

周りの生徒たちがチラ見しているのを感じての発言だ。

涼「いつも3人で登校しているのが一人増えているのだ。変化が気になるのだろう」

焔「そんなもんか」


姫と士郎じょうは中等部校舎に向かい、涼と焔は高等部校舎に入って校長室に向かった。

校長室で担任教師を紹介され、

涼「ではよろしくお願いします」

涼は中等部に戻っていった。


担任教師に案内され、教室に入ってクラスメートに挨拶をする。

なるほど、転校生を扱ったアニメと似た展開である。

(こういった事を疑似学習する為にアニメ作ってんじゃないのか?)

そう感じるくらい、かつて見たアニメと似た流れだった。


登校直前に涼からもらったアドバイスは「基本は必要以上に喋らない事。喋ればボロが出やすくなる。それと“わからない事はわかりません”とちゃんと言えば、日本人は勝手に察してくれる」だった。

授業で一度だけ指名されて教師から回答を聞かれたが、「わかりません」と答えてみたところ、教師が頷いて「教科書はメーカーによって違っていたりするので、前の国の教育課程に則った教科書には記載が無かったのかもしれませんね。」そう言って教師は授業を継続した。

なるほど“勝手に察してくれる”というのはこの事かと合点がいった焔だった。


時間ごとに休憩をはさみ、専門分野に関してレクチャーを受けられるこの“授業を受ける”という行為は、それまで独学でやってきた焔にとっては新鮮でかなり楽しく感じた。

楽しい時間は早く流れ、昼休憩の時間となった。


中等部は給食があるが高等部には給食は無かった。弁当を持って来るか食堂を利用するか、各々各人で昼食を用意しなければならない。

焔はおにぎりとお茶を用意していた。

単純におにぎりが好きなのと、涼がしずくに声掛けして用意してくれたからだった…が、

しずく「お兄様たっての依頼により用意したのだ。感謝の念を持ち、心して食せよ!」

(焔“いつか自分で用意するようになってやる。メシを丸めるだけじゃねぇか!”)

結果として結局弁当の提供を受けているので声には出さないが、いずれ弁当の用意は自分でやる事を心に誓う焔だった。


それはさておき、好物の一つであるおにぎりのラップを剝いていると気配を感じた。

女子の視線が集中している…気がする。

チラチラと見たり、目を伏せたり…

焔“なんだ?この気配は…間合いを計っているかのような…違うか?”)


かつてテレビで見た、草食動物をおそう肉食動物がじわりじわりと近づいては止まり、近づいては離れ、それと似た気配を感じる気がする。そう思っていると


女子の一人が意を決して言った

「お昼、一緒に食べませんか?」

焔「あ、ああ。いいぜ」

それがゴングだった。


焔の机を中心に扇形に集まる女子軍団。

女子1「おにぎり好きなんですか?」

焔「あ、ああ」

女子2「足りますか?」

焔「あ、ああ(日光浴びてりゃ無くても大丈夫だし)」

女子3「すっごーい。私も痩せたい」

女子4「スポーツとかやってたの?」

焔「いや、スポーツはやってな…(格闘技とスポーツは違うよな?)」

女子5「じゃあ趣味とかは?」

焔「(趣味?)特にないかな…」

女子6「何か部活は入らないの?」

焔「いや、ボ(ボディーガードはまずいか!)、入らない…と思う」

女子7「中等部の江蓮先生とは親戚なんですよね?」

焔「あ、ああ、はい…」

一糸乱れぬ連携で質問攻撃を浴びせてくる。

そう、訓練された連携としか思えない。

その証拠に焔はおにぎりを口に運ぶ暇すら与えてもらえず、女子たちは自分の弁当を徐々に減らしていく。各々が役割を淡々とこなして行っているが如く、苦も無く矢継ぎ早に質問を焔に繰り出し続けた。

“次はあの子が質問して、その間に私はこれを食べて、次の子が質問している間に私は租借を終わらせ、私がこの質問をしている間に…”

少なくとも焔にはそう見えていた。


昼休憩が終わるチャイムが鳴った。あと5分で教師がやってくる。

女子「あ、ごめんね。喋りっぱなしで」

解散して各々の机に戻っていく女子をしり目に、必死におにぎりを頬張る焔だった。



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