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数日後の日曜日、恒例の稽古の場。

姫と士郎じょうの立ち会い稽古が行われようとしていた。

姫『かねがねの疑問であった“打突部を発声する”、その答えに、先日の稽古時ついに気づいたのだ。』

先日の稽古と言えば“物理パンチ未遂”の稽古の日である。

姫『あの時、この発想に気づいたときは雷に打たれたような思いだった。』

不敵に笑う姫。

姫『今日こそはじょう殿から一本取る!』


審判、士郎知恵から「始め」の声が発せられる。

中段の構えをとっている姫からは異様な気配が発せられていた。


姫『胴っ!!!』

発声から一秒後に姫が動き、思いっきり面を打ち抜いた。

鮮やかな面打ちが決まった。


姫『やった!思った通りだ!』

歓喜する姫。

勢いそのままに、姫が士郎知恵に向かって言う

姫『次は知恵殿、いざ勝負!知恵殿に通用できればこの技は本物という事だな!』

流石に諫めようとした涼だったが、士郎知恵が涼を制止し、ワザと芝居がかった言い方で言った

士郎知恵「くっくっくっ、よかろう。はたしてその技が私に通用するかな?」


試合が開始された。

胴→面、面→突き、『えーと…』、突き→小手…

あらゆるバリエーションで姫が攻撃するが、すべていなされてしまう。

そのうち疲れて来たのか、

胴→胴、面→面、小手→小手

発声と打突が普通に一致してしまうようになった。

いなしながら「姫ちゃん、根は素直だものね」

面の下で笑顔の士郎知恵が言う。


やがて肩で息をし始め、握力が低下した姫に、士郎知恵が小手をきめた。

姫は竹刀を落として座り込んだ。

姫『はぁ、はぁ…む、無念』


(涼“スピード差が圧倒的ではあるが、それにしても全く惑わされないのは流石…”)

士郎知恵が涼の考えている事を読んで、ニコニコ笑いながら声を掛ける。

士郎知恵「涼さん、高段者の試合見た事ある?」

涼「…いえ、観戦した経験はありませんが…」

そういえば生観戦も映像も、いわゆる高段者同士の試合を見た事は無かった。

士郎知恵「面も胴も小手も、全部“ちえぇぇぇぁ”って聞こえるのよ」

笑いながら言う士郎知恵だった。



稽古の後の食事会が今日も行われた。

その席で焔が士郎知恵に聞いた。

焔「一番強い格闘技ってのは何なんだ?」

涼が後頭部を、姫が顔面を叩いた。片づけに離席しているしずくが居たら同様の行動をしていただろう。

焔「…な、何なのでしょうか?」


士郎知恵「格闘技…格闘の技術って、状況とその時の調子次第って思うの。 たとえば薙刀とかは離れた相手に一番有効だと思うし、剣道も離れた相手に有効ね。でも武器の固さによっては相手を必要以上に痛めつけてしまうでしょう? 警察が柔道を採用しているのは相手を痛めるのではなく動きを止めるのに寝技とか極め技が有効だからって話ね」

焔を始め、全員が聞き入っていた。


士郎知恵「あとは体調ね。たとえば…涼さんと小学生はどちらが強い?」

姫『さすがに涼が小学生に後れを取ることは無いでしょう』

姫の即答にその場の全員が頷いて同意する。


士郎知恵「じゃあ涼さんと小学生柔道チャンピオンが、柔道ルールで戦ったらどっちが勝つかな?」

姫『…でも小学生相手ならば…』


士郎知恵「じゃあ、炎天下で水分補給せずにマラソンした直後の涼さんと、さっきまでエアコンの効いた部屋で寝ていた体調万全な小学生柔道チャンピオンとでは?」

この質問にはその場の全員が唸ってしまった。

特に精霊界の者たちは“炎天下で水分補給なし”の所が水の精霊王にとっては致命的だと知っているだけに。

士郎知恵「異種格闘技戦でどちらが強いかって話題になるけど、よっぽど実力差が無ければ、その日の体調、コンディションの良い方が勝つんじゃないかな。だから“どの格闘技か”を考えるよりも“試合の日に体調万全に出来るかどうか”よね。」


離席していたしずくがお茶を人数分持ってきて各々の前に置く。

お礼を言って少し口をつけ「あら美味しい」と言った後に士郎知恵が話を続ける。

士郎知恵「もちろん、目的があるならそれに合わせた格闘技を習うのが良いとは思うけどね。 剣での格闘技を覚えたいなら剣道。警察の例でも言ったように相手の動きを封じる目的なら柔道。」


焔「出来れば素手での格闘技を覚えたいんだ…ですが」

士郎知恵「素手での格闘技?」

涼「はい。そしてできれば知恵殿のように個人で教えて頂ける方が居られないかと…」

姫『知恵殿に教えて頂く事はできぬのですか?』

士郎知恵「うーん、剣道以外は専門じゃないからなぁ。 柔道やってる知り合いは居るけど、“自分が柔道強くなる”のに熱心で、柔道を教える方にはあまり向いていない人ばかりだし」

姫『そんなに違いがあるものなのですか?』

士郎知恵「昔、スポーツの天才選手が引退して監督になったとき、すごく高度なプレーを“教え子が何故出来ないのかわからない”って嘆いた話があってね。天才なので難しいプレーが苦も無く出来ちゃうから、出来ないで苦しんでいる人の気持ちが判らないんだって」

涼「“名選手、名監督にあらず”と言うやつですね」



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