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涼が場外に戻るために目をやると、見ていた火の王-焔が驚愕の表情をしていた。
涼が近づくと案の定質問が飛んで来る。
焔「人間は…、人間の身体はあんなに早く動けるものなのか?」
涼「本人は否定するが、達人と呼ばれる類の人なのだ」
焔「手首を切り取られたかと思っちまったぜ」
涼「見えたのか。実際、模擬刀でなければ切られていただろうな」
剣道を初見の火の王焔があの太刀筋を見えた事に少し驚いた涼だったが
(人間界でいう命のやり取りといった類の事を、我々もあの時に経験しているのだからか)
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昼食は士郎知恵が午後に用事があるとの事で、士郎家の面々は辞退された。
江蓮家の面々のみで居間にてテレビを見つつ昼食を行った。
テレビでは柔道に関しての報道がされていた。
焔「…柔道?」
涼「素手で行われる格闘技の一つだな」
焔「素手の格闘技があるのか?」
涼「むしろ日本では武器を使った格闘技の方が少ないと思うぞ」
ぱっと思いつく武器を使用しての格闘技は剣道と薙刀だった。
涼「柔道は主に投げる技が主体の格闘技だな。少し違うがレスリングという格闘技もある。あとは拳で打撃するボクシング、手技と足技で打撃を打つ空手、ぱっと思いつくのはこの辺りか」
涼が昔に研究した際は、マイナーな格闘技も調べはしたのだが、上記以外の格闘技はマイナーゆえに体感体験するのに苦労があるといった感想を持った。
そんな中、縁あって士郎知恵と出会い剣道に出会った。
結果から考えると、剣道は自分に合っていたと思っている涼だった。
氷の剣を自在に顕現する事が可能であるし、何か理由があって精霊術が使えない状態でも、適当な長さの棒があればそれで良い。さらには剣が無くとも体捌きなどを知っているかいないかは、人間の身体で格闘を行う上では大きく違ってくる。そう思う涼だった。
姫『よし、物理パンチを持って格闘技界に殴り込みだ!』
涼「…柔道とレスリングは拳で殴るのを禁止していますので。あとそのパンチは士郎じょう君にも当てられない打撃でしたので、ここはご自重を…」
姫『それに関しては一つ妙案がある。次はじょう殿から一本とってみせるぞ』
そういって不敵な笑みを見せる姫だった。
隣では焔が自身の拳を握り締めながら見つめていた。
(こぶしで殴る、か…)
―
昼食後、江蓮邸は全員で揃って外出を行った。
目的は買い物だった。
外出の際には焔にマスクを着用させ、涼自身も、そしてしずくもマスクを着用する。
焔「なんだこれは?必要なのか」
涼「どうも顔に注目を集めるタイプの人間という存在があってだな、これを着けると注目が薄れるのだ」
初期の頃はなぜ注目を集めるのか理解ができず、“化身人化術を失敗したか?”などと考えていた涼だった。
しずくが着物で出かけた時は明らかに尾行とわかる男が多人数、尾行とは言えないただ付いてきているだけの男が多人数おり、タクシーで場所移動をし、降車後にやむを得ず身隠しの術を発動して帰宅した経験があった。
その際にタクシー運転手と「とても整った顔立ちですね?失礼ですが芸能人の方ですか?」といった会話をし、追跡者の意味を理解した。
それ以来、外出の際は服装を地味目にして、なるべくマスクを着用する事を心掛けるようになった。
しずくは姫とスーパーマーケットにて食材の買い出しを行い、涼と焔は衣料メインで扱っているチェーン店に赴いた。
涼「服を買う、という経験をしてもらう」
そう言って焔にいくらかの現金を渡した。
店員は慣れたもので必要な場所のサイズを計り、好みを伺って必要なサイズの服をピックアップし、試着を促した。
それに応ずるままに行動していると服購入のプロセスが終わりを告げた。
最後に現金を渡し、代わりに購入品を受け取って買い物が完了し、それによって幾らかの着替えが用意できた。
(涼“いつも同じジャージというわけにもいくまい”)
焔「案外簡単なもんだな」
涼「次は靴だな」
近くの靴屋にてスニーカーを購入し、そのまま履いて退店した。
焔「めちゃくちゃ動きやすいな、これ」
子供のように素直に喜ぶ焔。
涼「まあサンダルと比べればな」
姫としずくと合流し、帰宅のために歩き始める。
涼がしずくから荷物を2つ預かり持ち、焔も涼から荷物を1つ受け取り歩き出した。
途中、ボクシングジムがあり、大きめのガラス越しに、外から中が若干見えるようになっていた。
焔が思わず足を止めて中を見始める。
涼「どうだ」
焔「…なんだこれ?よくわかんねえな。これが言っていたボクシングなのか?」
中では反復トレーニングをしているか、サンドバッグを叩いているかくらいで、スパーリングをやっていなかった。焔はピンとこなかったのだろう。
涼「実践練習はやっていないな。反復練習で体に動きを覚えさせているのだろう」
反復練習の大切さを、涼は剣道を学ぶようになって痛感していた。
“考えて動く”では遅いとき、反射で対応できるかどうか、その為の反復練習だろうと。
焔にはどう見ても格闘技の練習をしているようには見えず、自身の必要としているものとは思えなかった。
涼と焔は同時に歩みを再開し、先に歩みを再開していた姫としずくに追いつくべく歩速を速めた。




