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食事が終わり、姫がテレビを点ける。
一瞬、ビクっと反応した火の王だったが
火の王「…これはゲートに遠くの映像を映すのと同じようなものか?」
涼「まあそのようなものだ。これも人間の知恵と工夫によって生み出された科学の力だ。人間界には科学の力があふれている。科学の力はあなどれんぞ」
テレビにはニュースが流れている。
アナウンサー「昨夜午後7時頃、〇〇市▲▲町のビルで爆発事故が発生しました。〇〇市▲▲町では昼間にも数軒隣のビルで火災が発生しており、警察では関連の有無を視野に入れた捜査を…」
しずくが食後のお茶を持ってやってきた。
ケーキと紅茶が並べられる。
姫が歓喜の表情と共にケーキを食べ始める。
姫や涼の食べ方を観察し、火の王も真似をしてフォークで食べ始める。
火の王「こりゃいいや、蕎麦もこの“フォーク”で食べちゃダメなのか?」
涼「あまり推奨は出来ないな。“ざる”という比較的もろい器で提供される事があり、金属のフォークで刺すのはざるが破壊される恐れがある。もっとも、箸の文化が無い他国の人の為に、フォークを用意する飲食店もあるようだが…」
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ケーキを食べ終え、紅茶を少し流し込みつつ涼が火の王に向かって話す
涼「実際、どれくらいの期間人間界にいるのか?それによっては覚える事は山ほど増える。人間界のルールをある程度は守らねば、秘密裏に行動など出来ないだろう」
火の王「…姫の、我らの目的が達成されれば引き上げるさ。それまでだ」
涼「…“確証の無い予測のみで捜索している”と言うのは知っているな」
火の王「…ああ、それしか手掛かりが無いというのもな」
涼「という事は、滞在期限は未定か…」
火の王「明日からは外に捜索に出るぜ。なあに、すぐに見つけ出してやるさ」
涼と姫が同時に言った
「だめだ」『だめじゃ』
火の王が“なぜ?”と言う前に涼が口を開く。
涼「さっきも言っただろう“人間界のルールを守らねば、秘密裏に行動など出来ない”と。我々が大きく人間界に干渉するのは色々とまずい事が予想される。貴様のその強大な火炎能力を知った人間が、嫌いな他人を、嫌いな他国を攻撃するために利用しようとするかもしれん。言葉巧みにな…」
火の王「そんな…」
火の王の言を遮って涼が言う
涼「侮らない方が良い。人間にもいろんな人間がいるのだ。知恵と工夫に長けて科学を得意とする者、話術巧みに人を欺くのを得意とする者、悪事を考え実行する者」
姫『もちろん心優しき人々もいる』
姫の言に涼は士郎家の人々を思い出していた。先日、士郎じょう君が身を挺して姫を守ろうとしてくれた事を。
姫は野ざま菜を提供してくれる士郎家の人々を思い出していた。
火の王「じゃあまずは…」
姫『テーブルマナーじゃな』
涼「ではなくて…日本の文字の読み書きは出来るのか?前に“文字に関する資料”は衣服と共に提供しただろう」
火の王「ある程度はな。ただ、漢字は種類が多すぎだ。全部は無理だったぜ」
涼「漢字に関しては、日本人でも全て覚えている人間の方が少ない。そこは大丈夫だ」
しずくが話の展開を察して一度退室し、手に書物を持って戻って来た。
涼はその書物をしずくから受け取り火の王に渡す
涼「日本においての、基本的な社会生活の一般常識に関して書かれている書物だ。姫には此方に来られる前に読んで頂いた。まずはこれを読んで内容を覚えてもらう」
火の王「…やっぱりこれを読むのか…」
涼「“やっぱり”?、見たことがあるのか?」
火の王「人間界に来る前に姫が読んでおられたのを、何度か見かけていたからな。」
そう言って火の王がページをめくると
「あれ?内容が少し違う気が…」
涼「姫に最初に渡したものが200年ほど古い情報だったので、現代版を作成しなおした」
火の王「これ、お前が書いたものだったのか!?」
涼「そういえば、姫にお渡しした本はどうされましたか?古いものをお渡しした後、ここ近年にこれと同じ現代版をお渡ししましたよね」
姫『風の王に渡したぞ。見たそうにしていからな』
涼「…下手に人間界に興味を持つ精霊が現れても困るので、持参して頂くか最悪処分をお願いしていたはずなのですが」
涼が氷の表情に怒気を載せて姫を見据えて言う
姫『だ、大丈夫じゃ。風の王には同様に言って渡したからの。ほら、なんと言ってもあの風の王じゃ。間違いない、うむ。』
(涼“まあ風の王であれば…”)
姫『その書も良いのだが、テレビで見て情報を得るのも良いぞ!楽しいし』
涼が火の王に向かって言う
涼「ただし、テレビにはフィクションも多いのだ。そこに気を付けないと、フィクションを一般常識と捉えるような間違いが起きてしまう」
姫『余のお勧めはこれじゃ』
テレビからは少女が特殊な能力を駆使して戦うアニメが始まった。
涼「…フィクションと心して見てくれ」




