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天空に布陣された軍の最前線に配置された火の精霊王-焔。

その焔の視線の先には“邪なるもの”の集合体がいた。

まだ距離があるせいで、集合体は一個の巨大な雲の様に見えている。

しかしよく見ると、偵察にて龍族大王が伝えてきた情報通り、個々の個体の集合となっているのが遠目からもわかった。


偵察の情報では前回の大戦より10倍の大きさとの事だったが、作戦には変更ない。


焔の役目は敵の中央の真正面に立ち、高出力火炎術を敵の真ん中から円を描くように放つ事。作戦の最も肝になる部分だった。


焔「始めるぜ」


姫(赤)の助力により、言葉は風に乗って軍の全員に届く。


火の精霊王-焔の手から直径150メートルほどの火炎の火柱が伸び、敵の中心に直撃する。

先の大戦以来、修練を重ねる事によって火柱の直径を大きくすることに成功していた。

今、焔は8割程度の力で前回の大戦時よりも大きな炎の柱を放っている。

力をセーブしているのは水の精霊王-涼との事前相談の結果だった。


数日前、精霊界大王王宮の来賓室にて3人の精霊王のみでミーティングを行った。

涼「先の大戦では全力を出して疲労により体を動かすことが出来なくなるという事態を招くことになった。以来、修練を行い“全力で精霊力を行使しても動けなくなる事のない身体”を手に入れてはいる。焔もそうだろう?」

焔「ああ、火の精霊国で散々最大火力術を撃ちまくって鍛えた。あの大戦以来な」

涼「そうは言っても実戦で全力の精霊力を試していないので、まだ不安要素は拭えない。なのでまずは8割ほどの力で火炎術を撃ってくれ」

焔「そうだな。不慮の事態に備えて余力は残しておくぜ」

涼「8割とはいえ、撃ち続けてもらうことになる。おそらく一番きついポジションであり、一番の肝であり、替えの効かない攻撃力だ。正直、その攻撃力に頼る事となる」


涼がわずかだが頭をさげる。

水の精霊王が火の精霊王へ頭を下げた。

他に目撃者がいれば大問題に発展しかねない行為だった。

その意味を焔もわかっている。

(焔“今回の総指揮を任せた時の意趣返し(おかえし)って所か…”)

大げさに振り返り、背中を見せる焔。

そうやって見ていないアピールを必要以上にやって見せてから焔が言う。

焔「炎をぶっ放すのは火の精霊にとって日常みたいなもんだ。なんら問題ないぜ」

そのまま焔は部屋から退出し、涼は微笑を浮かべながらそれを見送り、そんな二人を見てほほ笑む颯だった。



火の精霊王-焔から巨大火炎が放たれた瞬間から、焔を中心に周辺の温度が急上昇する。

それを見越して火に耐性のある炎の龍王軍と、耐久力に秀でている地の龍王軍が第一陣に布陣され、焔への側面からの敵攻撃を退けるために配置されていたのだが


地の龍王「なんて暑さだ…」

炎の龍王「俺たち火竜族が与えられている火の耐性力でもこれは…」


この熱を見越しての100mの距離を開けての配置だったのだが、焔の火炎が想像以上だった。

地の龍王と炎の龍王が後ろを見ると、第一陣に配属された炎の龍王軍と地の龍王軍の者たちが一様に険しい表情をしていた。


地の龍王「地竜軍、もう少し離れろ!ここで疲労しては元も子もない」

炎の龍王「火竜軍もだ!」


二人の龍王はさすがに耐性が高いのか、他の竜たちよりはマシな状態の様ではあるが

(炎の龍王“あいつの本気がこれほどまでとはな…”)

ドラゴンの本能が“強者である火の精霊王といつか闘いたい”と望んではいるのだが、この圧倒的業火に対して勝利する方法が思いつかず、生まれて初めて複雑な心境に陥る炎の龍王だった。


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