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決戦予定日、地球の暦で4月1日が予想の通り決戦予定日となった。
その前日は万全の体制を整えるべく休息日とし、各々が身体を休めていた。
そんな最中、涼から招集が掛けられる。
招集されたのは残りの精霊王2人、焔と颯。
龍王4人、精霊大王、そして精霊姫。
招集された場所は観測班用に用意された1室である。
広さと内装は来賓室と似ているが、観測用に天井が元から無い状態で新築された部屋だった。
ちなみにこの部屋と同様の会議室然とした広さの部屋は他にも3部屋ほどあるが、その他には小さな個室部屋が数部屋あり、水の精霊の協力により天井に氷の凸レンズが張られていて、観測班に抜擢されたものがそこで寝転んで四方八方の天空を交替で監視していた。
全員が集合した時点で涼から説明が始まった。
涼「まずは天空の望遠による敵の状況を見てください」
部屋の上の天井があるべき部分の空間に氷の凸レンズが形成され、天空の彼方に発生した邪なるものが映し出される。
涼「比較対象が無い状況ではわかりづらいが、観測の結果、今回の敵は前回よりも巨大であると判明しました」
全員の様子に変化は見られない。
もはや明日の事であり、今更どうこうしてもやる事に変わりはなく、少々大きさが変わろうが、“やる事は明日の決戦で殲滅するだけである”と全員の覚悟が決まっている状態だった。
涼「こちらから一方向で、しかも長距離で見ているだけでは判らない事があるかもしれない。そこで斥候を出して近くで様子を見てきてもらう事にしました」
風の龍王「なら僕が適任だね。スピードが必要だろう?風の精霊王よりかは遅いけどさ」
涼「斥候を担当する事を強く希望した者がいて、実はもう先行して現場近辺に到着しているのです」
涼が氷のレンズをコントロールすると少し引きの映像になり、その斥候担当者が映像に映し出された
龍族大王「俺だ!」
ニカっと笑って親指で自信を指さして言う龍族大王。
水分子糸電話により音声も届けられていた。
炎の龍王「やろう…」
風の龍王「最近見ないと思ったら…」
水龍王「抜け駆けか」
龍族大王「俺はどうも団体行動ってのが苦手でな」
“貴様が指揮下に入れと言ったんだろうが!言っておきながらよくもぬけぬけと!”
龍王4人の心が一つになった瞬間だった。
代表して炎の龍王が叫んだ
炎の龍王「この手で殺してやる!戻ってこい」
龍族大王「言われなくても戻ってやる」
竜王四人が驚きの表情を浮かべた。
龍族大王の性格上、進めなくなるまで猪突猛進すると思っていたからだ。
龍族大王「総指揮官の命令だ。“偵察ってのは無事に情報を持って帰るのが仕事”だと。まあこれは今見ている映像で伝えているようなもんだから良いだろう。もう一つ、“本体が進軍する前に死者を出すな。士気に関わる”との事だ」
“自身が総指揮官の指示に従っているのだ。おまえらもちゃんと従え“という主張を案に伝える龍族大王。
龍族大王が笑いながら続けて言う
龍族大王「ちゃんとお前らに殺されるためにも、無事に戻れることを祈っていてくれ」
―
龍族大王「さて、そっちの一方向から見た感じだと“奥行き”がわからねえだろ。そしてその距離だと細かな状況もよく判らなかったが、近づいて、角度を変えてみるとよく判るな。」
一呼吸おいて言葉を続ける龍族大王。
龍族大王「まず急に巨大化した様に見えたのは、敵が細かく分離したんだな」
涼の眉間にしわが寄る。
龍族大王「奥行きを言葉にして伝えるのは難しいが…、こう言えれば伝わるかな?」
龍族大王が一旦言葉を切ってから言った
龍族大王「前の時より10倍はでかいな」
流石の龍族大王からも笑顔は消えた。
しかし、その表情は真剣な面持ちのみで構成され、その目は真っすぐ相手を捉えていた。
観測室内にいる面々も同様の面持ちで画面を見据えていた。
全員、すでに覚悟は決まっており、相手の規模が大きいのはただの情報の一つであるにすぎないからだった。
龍族大王「さて、もうちょっと近づいて見てみたい気もするし…」
分離した敵のうち、特別スピードの速い個体なのだろう、先行していたその個体が龍族大王に襲い掛かった。
龍族大王はカメラ目線のままパンチ一撃で敵を粉砕する。
龍族大王「敵に突っ込んで暴れたい気持ちもあるんだが…今回は我慢だな」
次の個体が襲い掛かって来たが、同様に一撃で消滅させる。
龍族大王「俺のスピードだとこの辺が限界だ。撤退するぜ」
スピードの速い敵の個体があと5体ほど先行しており、龍族大王へと同時に襲い掛かってきたが、まとめて薙ぎ払うように殴って消滅させる龍族大王。
そして龍族大王は自身が出せる最高速度の飛行で撤退を開始した。
幸いにも他の敵個体に追い付かれることはなく、敵全体は進軍スピードを変える事も無かったので、数刻の後に龍族大王は無事に帰還した。
無事に帰還はしたのだが、最高速度の飛行を長時間続けてきたのでかなり疲労をしていた。
涼の依頼により大地の精霊が息吹術にて龍族大王に回復を施す。
涼「では次の仕事を依頼します。最終防衛ラインとなって精霊大王と精霊女王、そして精霊国の民の守護をお願いします」
龍族大王「解かったぜ。」
龍族大王が龍王4人の方を向いて言う。
龍族大王「聞いての通り、新たな任務だ。だからお前らと殺しあうのは奴らをやった後だな」
一呼吸置き、龍王4人を見渡したのちに言葉を続けた
龍族大王「だからお前らも無事に帰ってこい。」
龍王4人は真剣な表情をしつつも口角をあげ、その言を聞いていた。




