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夕食を終えて全員が準備を行う。
とは言っても特段準備するものがあるわけでも無く、“何かの間違いで衣服が消失した場合の戻ってくる時の為の予備”を用意し持っていくのに留まっていた。
焔、颯の2人はそれ故カバン一つなのだが、姫は巨大なバッグを持ってガレージに現れた。
姫『焔、持ってくれ』
焔「はい」
持ってみると体積の割には思いのほか軽かった。
持ち上げて車に積み込む焔。
颯「中は何が入っているんですか?」
姫『ふっふっふっ、秘密じゃ』
涼「カップ麺の蕎麦ですね」
唖然とする姫に向かって涼が言葉を続ける。
涼「しずくへの口止めをされておりませんよね」
そう言いながら涼は手に持った大き目のバッグからヤカンを取り出して笑って見せた。
姫『“腹が減っては戦はできぬ”先日授業で学んだ教訓だ』
焔が素直に感心しながら言う
焔「中等部の授業も面白そうですね」
“教師の脱線”という可能性もあるのだが、おそらくはアニメかマンガからの知識だろう。そう思う涼だった。
―
江連邸からクルマが出発した。
乗員は姫、焔、颯、そして涼が運転を行い、帰りの運転を担うべくしずくも乗車している。
向かう先は“丘の上にあり、日没後は人気が無くなる公園”、颯が大地の精霊王捜索の際に高頻度で利用していた公園である。
そこで最後の大地の精霊王捜索を行い、そのままその公園からゲートを開いて精霊界に行く段取りである。
クルマを数台停める事が出来る駐車場があり、そこに車を駐車した。
他に駐車している車は無く、やはり人気は無い。
念のために涼が身隠しの術を展開し、周辺広範囲が霧に包まれる。
颯が本来の姿、風の精霊王に戻る。
そして空中で軽く回転すると、360度全方位に風が吹き始めて狭範囲の霧を少し吹き飛ばしつつ、風となった颯は霧の範囲を出て街中に飛んでいった。
いつもよりも気持ちスピードを上げてしまう颯。
街中では、普段はあまり感じられない強めの風により、人々が“今日は風が強いな”、“この時間には珍しいくらいの強風だな”といった声が出ていた。
街中を飛びながら。学校などの公共の場所に設置されている時計を時々確認する颯。
23時59分。
風が山頂に集まり、一つになって風の精霊王、颯になる。
姫、涼、焔、そしてしずくの視線が颯に集まる。
颯はうつむいて目を閉じ、首を横に振った。
最後の大地の精霊王捜索は終了となった。
姫『考えようによっては、これで良かったのかもしれん』
姫が皆を見渡しながら発言し、言葉を続けた。
姫『あの時、大地王の文字通り身を挺した頑張りのおかげで我々は助かった。そしてそれを引き換えに大地王はすさまじく消耗した。大地王がしっかり回復して帰ってくるまで、今度は我々が頑張るべきだと思うのだ』
涼、焔、颯、しずく、4人共、その言葉に心の底から共感し、全員が大きく頷いたのだった。
涼、焔、そして颯がクルマからそれぞれの荷物を持ちだした。
姫の荷物は焔が持っている。
姫『颯、風のゲートを頼む』
颯が風のゲートを開いた。
跪くしずく。
そして俯きながら、消え入りそうな声でしずくが言う
しずく「皆を、頼む…」
聞こえた焔が視線を少し向ける。
俯いているのでしずくの表情は見えない。
焔「まかせとけ」
しずくが少し顔を上げてみるが、焔は背中を見せており表情は見えない。
しずくが跪いたまま皆を見送る。
姫『よしいくぞ!いざ精霊界へ』
姫、涼、焔、颯、4人がゲートに進み、ゲートの中に消えていった。




