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『七星宝刀・精神決戦 ―魔神を喰らう恋問持子―』楓・雪編

『七星宝刀・精神決戦 ―魔神を喰らう恋問持子―』


楓編:修羅の巫女と、暴君の求婚


精神の檻、その最深層。


魔神マーラが作り出した情欲の迷宮は、もはや逃れられぬ泥濘と化していた。

漆黒の空間には、先ほどまで蹂躙されていた葉室姉妹の、白濁した甘い魔力の吐息と光の神術の残り香が重く沈殿している。


そこに、冷徹な北風を思わせる殺気を纏い、一人の少女が姿を現した。


第十幕:修羅の巫女と暴君の求婚


「……義理とはいえ、自分の姉妹を同時に圧倒して満足かしら。この最低の暴君殿」


霧を割り、凛とした足取りで現れたのは、黒髪の美少女、風間楓であった。


氷川神社の巫女であり、【TIA】の特級エージェントでもある彼女は、その冷たい瞳で、血と金にまみれた巨漢――董卓を射抜いた。

その背後では、満足げに微睡む桐子と鶴子が横たわっている。


董卓は、自身の内に湧き上がる罪悪感を、圧倒的な征服欲で塗り潰した。


(……ヌウ。桐子お姉さんや鶴子の精神まで侵食したこのわしを、その氷のような瞳で見下ろすか!)


董卓の皮膚に浮かぶ「顔」たちが、新たな獲物を求めて一斉に醜く蠢き、叫びを上げた。


「フハハ! 満足かだと? 否ッ! 貴様という『修羅の巫女』を跪かせてこそ、わしの宴は完成するのだ、楓ッ!!」


董卓は地鳴りのような咆哮を上げ、丸太のような太い腕を伸ばして、楓の細い腕を強引に掴み寄せた。


だが、相手は「須勢理毘売命」の転生体であり、武の極致を知る女である。


「……汚いです。触らないでいただけますか」


楓は神速の歩法「無足」で董卓の懐に潜り込み、掴まれた腕を支点に、鋭い肘打ちを董卓の肉厚なみぞおちへ叩き込んだ。


「グハァッ!!?」


「お前は、いつまで甘えているのですか」


楓は冷酷な宣告と共に、董卓の巨体を武術の理合いで制し、手首に関節技を決めて完璧に組み伏せた。

当身を入れ、関節を極める。楓の抵抗は苛烈であり、一切の容赦がなかった。


「お、おのれ……ッ! 何故だ! 何故そこまでわしを拒むッ!?」


董卓は激痛に顔を歪めながらも、自身の内に眠る情念と、持子としての不器用な感情を爆発させた。


「楓ッ! お前にずっと憧れていたのだ! わしのすべてを受け入れてくれ! わしと……わしと結婚してくれッ!!」


そのあまりにも唐突で、知性の欠片も感じられない絶叫。


「……は?」


楓の手が止まった。彼女は、信じられないものを見るような目で董卓を見下ろした。


「……あんたは中学生ですか? そんな『告白』もどきの言葉で、私のすべてを奪おうと? ……本気で殺しますよ?」


楓の殺気が絶対零度まで跳ね上がったその時。

背後で横たわっていた桐子が、くすくすと笑いながら身を起こした。


「あらあら。……楓、そんなところで許してあげなさいな。この子は元々、こういう『バカ』なんですもの」


「そうですよ、楓ちゃん。お兄ちゃん、一生懸命なんだから……」


鶴子までが、頬を赤らめながら董卓を庇い立てする。


楓は、自身の主君であり姉でもある桐子の言葉に、深いため息を吐いた。


「……全く。スノーの連中も、この精神世界も、どいつもこいつも狂っていますね」


楓は呆れ果てた顔で董卓を解放すると、震える指先で、自身の纏う装束を緩め始めた。


「……きなさい。……あなたの望み通り、私の全部の力を注いでやります。ただし、中途半端な真似をしたら、その首を撥ねますからね」


楓は自ら霊的な防御を解除し、その研ぎ澄まされた白い肌を、精神世界の暗闇に晒した。


「……魔力を解き放ちなさい。……何を見ているのです、早く」


その、強気でありながらも固有の緊張を孕んだ誘いに、董卓の理性が決壊した。


「……ヌウウゥゥッ!! 楓ッ! 楓ぇぇぇぇッ!!」


第十一幕:修羅の陥落と覇王の死闘


董卓は、もはや我慢の限界であった。

楓の術式解除が完全に終わるのすら待てず、彼は咆哮と共に彼女の精神を組み伏せ、獣のような本能のままに、自身の巨大な極黒の魔力を彼女の深淵へと突き立てた。


「ひ、あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!?」


だが、董卓の興奮はあまりに頂点に達していた。

長年憧れ、恐れ、守り抜きたいと願っていた存在が、目の前で全てを許したという衝撃。

繋がった瞬間、董卓は自身の覇王としての魔力の種を、勝手に一人で、全て解き放ってしまったのである。


静寂が流れた。


まだ本格的な融合は始まっていない。

ただ、董卓が一瞬で魔力を放出し、虚脱モードに突入しかけているという、あまりに情けない状況。


「……こら。董卓」


楓の、氷よりも冷たい声が響いた。

彼女は、自身の両手で、ドロドロの虚脱感に沈もうとする董卓の顔を無理やり正面から固定した。


「……ここまでしておいて、中途半端で終わるつもりですか? 私を、このまま放置して逃げる気ですか?」


楓の黄金の瞳が、修羅の光を帯びて燃え上がっている。


「……死にたいのですか? 私を満足させられなければ、お前の魂をここで微塵切りにします」


「あ、あらあら……。董卓、頑張りなさい? 中途半端だと、本当に楓さんに殺されるわよ?」


「お兄ちゃん、頑張って! 最後まで、ちゃんと頑張ってぇ!」


桐子と鶴子の、激励という名の死刑宣告が響く。


董卓は、冷や汗を流しながら、再びその巨躯の魔力を奮い立たせた。


「……す、すまぬ! すまぬ楓ッ!! わしが、わしの全霊を以て、貴様を極楽へと連れて行ってやるわぁッ!!」


――ドズウゥゥゥンッ!!! 魂の檻が軋み狂うほどの、狂気的な死闘が始まった。


董卓は、もはや快楽を楽しむ余裕などなかった。

楓の器を魔力で完全に満たし、従わせること。それだけが、自身の生存条件であった。


彼は、丸太のような重厚な覇気を、折れんばかりの勢いで楓の魂に叩きつけ続けた。


楓の精神体は、鍛え抜かれた鋼のように強靭であり、容易には堕ちない。

彼女は、董卓の衝撃をその強靭な霊性で受け止めながら、何度も彼のみぞおちを精神的な拳で突き上げた。


「……まだです! もっと奥! もっと強く!! 私の魂を、私を壊してみせなさいッ!!」


「おおおおおおおおおおおッ!! 死ぬ、わしは死んでしまうぞぉぉッ!!」


董卓は、自身の極黒の魔力を限界まで絞り出し、光と闇を融合させたカオス魔力さえも、その一撃一撃に込めた。

精神世界における時間は無限に近い。

董卓の意識が遠のき、魂が灰になろうとしたその時。


楓の器が、これまでにないほど激しく弓なりに反った。


その黄金の瞳が、サファイアブルーの魔力に染まって激しく点滅し、彼女の喉から、これまで誰も聞いたことがないような、凄絶で、巨大な絶叫が放たれた。


「あ、あ、あああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!!!」


――ドゴォォォォォォォォォォォォッッ!!!


魂の最深部で、極大の爆発(魔力融和)が起こった。


楓は、自身の「修羅」としての理性が完全に吹き飛ぶほどの極限の衝撃へと叩き落とされ、そのまま白目を剥いて、崩れ落ちるようにトランス状態へと陥った。


「……はぁ、はぁ、はぁ……。……や、やった。わし、やったぞ……」


董卓は、真っ白な灰のようになりながら、楓の精神体の上に倒れ込んだ。


修羅を分からせた達成感。

だが、その代償は、自身の存在そのものを消滅させかねないほどの、凄まじい疲弊であった。


だが、物語は、ここから「究極の肯定」へと向かう。

霧の中から、最後に現れるのは……。


---


七星宝刀8 R15


『七星宝刀・精神決戦 ―魔神を喰らう真・恋問持子―』


雪編:聖域の陥落――母にして魔神、立花雪


精神の檻、その最深層。


修羅の巫女・風間楓との、魂を削り合うような凄絶な「死闘」を終えた暗黒の広間には、もはや逃れられぬほど濃密な、致死量を超えた精神の重圧が沈殿していた。


岩石のような筋肉を誇る暴君・董卓は、楓の強靭な霊性を屈服させた達成感と、魂のすべてを放出した後の凄まじい疲弊感の中で、肩で荒い息を吐いていた。


だが、そこで戦いは終わらなかった。


霧の向こうから、これまでとは比較にならないほど巨大で、あまりにも「神聖」な威圧感が立ち昇ってきたのである。


第十二幕:聖域の陥落――母にして魔神、立花雪


「……なまら、信じられんわい……」


董卓は、震える膝を叩き、どうにかその巨躯を支えて立ち上がった。


ふと辺りを見渡せば、そこには異様な光景が広がっていた。

消えていたはずの「愛の下僕」たちが、いつの間にか董卓を取り囲むように現れていたのである。


「持子様……わたくしの、愛しいご主人様……っ」


第一下僕・本多鮎が、魔力融和の余韻に肌を赤らめながらも、熱い視線を送っている。


「持子さんは、私の……私だけのモノですぅ……っ」


魂の錨・花園美羽が、ドロドロに溶けた瞳で董卓を凝視している。


さらには、エティエンヌ、アスタルテ、シャーロットら下僕同盟の面々。

そして目の前には、今しがた圧倒されたばかりの桐子、鶴子、楓が、いまだに激しく霊体をビクビクと震わせ、歓喜の余韻に浸ったままで横たわっていた。


それだけではない。

吸血鬼の元女王・ルージュや、天才電脳少女・風間高子、さらには合気武道部の女子部員や、聖ミカエル学園芸能科の女子生徒たちまでもが、暗闇の中から無数に現れていたのである。


彼女たちは一様に顔を火照らせ、発情した獣のように、期待と熱狂に満ちた瞳で中央の覇王を見つめていた。


そして、その中心。

すべての喧騒を静寂に変えるほどの存在感を放ち、彼女が立っていた。


「……さあ、持子。私を従えなさい」


優しく、慈愛に満ちた、しかし有無を言わさぬ「王」の響き。


芸能事務所「スノー」の社長であり、持子が「母」や「推し」として強烈に崇拝し、その前では魔王の威厳など一瞬で崩壊してしまう絶対的な恩人――立花雪である。


「ゆ、雪……ッ!?」


董卓の身体が、本能的な恐怖と、それ以上に強い「畏敬」によって硬直した。


「……い、いや、今のわしは董卓だ! 持子ではないッ!!」


「あら、そうね。……では、董卓。私を、貴方の極黒の魔力で塗り潰してみせなさい」


「……できぬッ! 貴様だけは……雪、貴様だけは別だッ!!」


董卓は、一瞬だけ逃げようと周囲に視線を走らせたが、そこには数多の「配下」たちの壁があり、逃げ場などどこにもなかった。

彼は、自身の内に眠る本能を必死に抑え込み、雪への聖域を守ろうと叫んだ。


「雪は、わしの母のような存在なのだ! 他の者たちのように、支配の対象として見るなど……そんな不敬なこと、わしにはできんッ!!」


「……ふふ。母のような存在であっても、私は女よ。董卓」


雪は、ゆっくりと董卓に近づき、その白磁の指先で、彼の肉厚な胸板をなぞった。


「……千年以上を生きる、私のようないつ果てるとも知れぬ『化け物』は、お嫌いかしら?」


その言葉に、董卓の覇気が激しく揺れ動いた。


「……そんなことはないッ! 断じてないわッ!!」


董卓は吼えた。

自身の汚れた魂を、雪の存在そのものが肯定してくれたあの日々を思い出しながら。


「雪は、化け物などではない! 美しいのだ……! この世の何よりも、気高く、美しいッ!!

化け物は……わしだ! この、醜悪な欲望にまみれた董卓こそが、真の化け物なのだッ!!」


「……そう。ならば、それを今ここで、私に証明して」


雪は、慈愛に満ちた微笑みを浮かべたまま、自らその圧倒的な霊的障壁を解き放った。

暗黒の空間に、千年の時を経てなお瑞々しく、神々しいまでの光を放つ霊性が露わになる。


「……ッ!! おのれ、おのれぇいッ! 雪ッ! 雪ぃぃぃぃッ!!」


董卓の理性の堤防が、跡形もなく崩壊した。


自身の「神」であり、「母」であり、そして「最愛の存在」。

そのすべてを奪い、食らい、自分の一部にしたいという、魔王としての究極にして最悪の支配欲が爆発したのである。


第十三幕:究極の交わり――聖母の蹂躙と奈落への口づけ


董卓は咆哮し、雪のしなやかな精神体を、魂が軋むほどの勢いで抱き寄せた。


丸太のような腕が、彼女の華奢な背中に食い込む。

董卓は獣のように彼女の魂を押し包むと、自身の巨大な極黒の魔力を、その「聖域」の最奥へと、力任せに叩きつけた。


――ドズウゥゥゥンッ!!! バチバチバチッ!!!


魔力が激突し、精神世界の法則そのものを破壊する勢いで凄まじい衝撃音が鳴り響く。


董卓は、もはや一片の手加減もしなかった。

激しく、激しく、激しく、激しく、激しく――。


これまでのすべての者たちに注いできたエネルギーのすべてを、この一瞬の霊的交わりに凝縮させた。


「雪ッ! 雪ぃぃぃぃッ!! 貴様をわしのモノにする! 魂の髄まで、わしの色欲(魔力)で染め上げてやるわッ!!」


「……ええ。いいわよ、董卓。……もっと、もっと強く。私を、貴方の愛で壊して……っ」


雪は、その凄絶な魔力の蹂躙を、すべてを包み込む海のような包容力で受け入れた。


董卓が覇気を叩きつけるたびに、雪の白い霊体には、覇王の魔力が漆黒の紋様となって浮かび上がり、歓喜の連鎖が空間を真っ白に染め上げる。

周囲で見守る下僕たちや少女たちが、その余りにも激しく、尊いエネルギーの交錯を目の当たりにし、一斉に魂の共鳴による絶叫を上げた。


「あ、あああああああッ!! 社長ぉぉッ! 持子様ぁぁッ!!」


董卓は、自身の存在そのものを解き放つように、最後の一滴まで魔力を雪の中核へと注ぎ込んだ。

幾度となく重なる、精神的臨界。


覇王と聖母の交わりは、精神世界という密室を、純白と漆黒のカオス魔力で満たし、ついに限界を超えた。


「おおおおおおおおおおおッ!!」


董卓は、魂のすべてを放出し、雪の霊体の上に崩れ落ちた。


疲れ果て、指一本動かす力も残っていない。

だが、その胸の内には、最愛の存在を完全に征服したという、これまでにない満足感と幸福感が満ち溢れていた。


「……はぁ、はぁ……。……やった。わしは、ついに……」


董卓が、満足げに雪の顔を見つめた、その時である。


雪は、優しく微笑み、董卓の頬に手を添えた。

そして、ゆっくりと顔を近づけ、彼の魂に、深い、深いキスを交わした。


だが。


「……ふふ。ご馳走様でした。……覇王様」


キスの最中、雪の慈愛に満ちた顔が、瞬時に歪んだ。

黄金の瞳が不気味に輝き、その顔は、冷酷な嘲笑を浮かべた魔王マーラの顔へと変貌していたのである。


「な、に……? 雪……ッ!? 貴様、マーラ……ッ!!」


董卓が気づいた時には、すでに遅かった。


足元に広がっていたはずの精神世界の床が、音を立てて崩壊する。

これまでに圧倒し、調伏してきた女たち、そのすべてが放った魔力のエネルギーは、マーラという名の巨大な「蜘蛛の巣」の糸となって董卓を絡め取っていたのだ。


「あなたの煩悩は、世界一美味しい。……さあ、その重すぎる欲望と共に、沈みなさい」


マーラがそっと董卓の胸を突く。


たったそれだけの衝撃で、力を使い果たした覇王の巨体は、光すら届かない、精神世界の最下層――『魂の奈落』へと、真っ逆さまに墜落を開始した。


「お、おのれぇぇぇぇッ!! マーラぁぁぁぁぁッッ!!!」


董卓の絶叫が、遠ざかる。

彼は、己の欲望に溺れ、最愛の幻影に裏切られ、暗黒の深淵へと、どこまでも堕ちていった。


だが。その堕ちていく闇の底。


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