【三つの真実と、崩壊する理性】
【三つの真実と、崩壊する理性】
『チーン』
エレベーターが到着し、プラチナブロンドの絶世の美女、シャーロット・シンクレアが姿を現した。
「……お待たせいたしましたわ、雪社長。朔夜様も……」
彼女は優雅に振る舞おうとしているが、その瞳は血走り、指先は小刻みに震えている。
「遅いわよ、シャーロット。早速だけれど、仕事をしてちょうだい」
雪は容赦なく、シャーロットの正面に立った。
「今の状況、そして未来を。あなたの能力で、全力で視てみなさい」
「……っ。あ、ああっ……は、はい。視て、視て差し上げますわぁっ!」
シャーロットが叫ぶようにして瞳をアメジスト色に輝かせた。
次の瞬間、彼女の視界に、三つの矛盾した「真実」が奔流となって流れ込む。
(あ、ああああッ!? なぜ!? なぜ、今、この瞬間に……氷川神社で清らかに舞を捧げる持子様の姿が視えるのです!?)
一つ目の真実。
氷川神社の静謐な空気の中、巫女装束を纏い、魔王の威厳など微塵もない、ただの美しい少女として舞う『持子』。
(それなのに……未来の情景では、豪華絢爛なヨーロッパの街並みの中で、歩いている持子様が視える……! そしてっ!!)
二つ目の真実。
……目の前!! 目の前のこの部屋の奥に……今、まさに下僕たちを蹂躙し、魔力を吸い上げている、禍々しいまでの魔王の気配が……っ!! どれが本物!? 本物の魔王はどこにいるのですわぁっ!!
(東京ダンジョンで縦横無尽に暴れている持子様が視える……! そしてっ!!)
さらに、七星宝剣の中に封印された董卓の魂の残滓までもが彼女の脳を焼く。
「ひ、ひぎぃぃっ!! おかしい……おかしいですわぁっ!! 世界がバグっていますわ!! 持子様が、持子様が三人も視えるなんてぇぇっ!!」
シャーロットは頭を抱え、床にのたうち回った。
「……そこまでよ」
雪の氷のような声が響く。彼女は朔夜に目配せをした。
「朔夜。連れて行きなさい。……魔王の寝室へ」
「……了解。さあ、来い、シャーロット。お前の大好きな『お仕置き』の時間だぜ」
朔夜は「俺様」モード全開で、抵抗する力を失ったシャーロットの髪を掴み、乱暴に引きずり始めた。
「嫌、嫌ですわぁっ! 朔夜様! 放して、放してくださいましぃっ!!」
【影の魔王の再教育〜奴隷への絶対支配〜】
『バタンッ!!』
重厚な主寝室の扉が、乱暴に開け放たれた。
「ひっ……!? あ、あああ……っ!」
シャーロットの目に飛び込んできたのは、極上の魔力と情念がドロドロに溶け合い、紫色の霧となって充満する淫靡な光景だった。
ベッドの中央。
上半身を露わにし、黄金の瞳を獰猛に光らせているのは、影持子だった。
その周囲には、鮎、美羽、エティエンヌ、アスタルテの四人が、すでに発情の極致にあるような蕩けた顔で、影持子の四肢に絡みついている。
「……ほう。客が来たようだな」
影持子は、傲岸不遜な態度でシャーロットを見下ろした。
(ひぃっ! 朔夜、また面倒なのを放り込んできたな!? わし、もう体力限界なんだが……いや、でもやるしかない! 朔夜に褒めてもらうために!)
内心ではパニック状態だが、魔王の演技に一点の曇りもない。
「朔夜様ぁっ! お助け……っ!」
シャーロットが振り返るが、朔夜は冷酷な笑みを浮かべて扉を閉めた。
「持子。……お前たちの魔力で、二度と良からぬことを考えられないよう、その脳髄まで焼き潰してやれ」
「ククク……良かろう。朔夜の頼みとあれば、断る理由はない」
影持子が指を鳴らす。
「っ……!? あ、鮎様……美羽様……!? いや、嫌ですわ、そんな熱っぽい目で……あぎぃっ!?」
シャーロットの言葉は、鮎による強引な蹂躙によって遮られた。
第一下僕としての狂信的な魔力を込めた鮎の指先が、シャーロットのデリケートな肌を、容赦ない「物理的制裁」として攻め立てる。
「ふふっ……シャーロットさん。あなた、持子様について、少し余計なことを視すぎましたわね?」
鮎が、耳元で冷たく、しかし艶かしく囁く。
「ひんっ、ひぃぃぃっ!! 鮎様、だめ、そこは、あつ、あついぃっ!!」
「にゃははっ! 泥棒猫同士、仲良くしましょうにゃあ。……まずはそのお口に、持子様の魔力をたっぷり注ぎ込んであげるんですにゃあっ!」
美羽が影持子の腕を強引に引き寄せ、その指先をシャーロットの口内にねじ込んだ。
影持子の体内には、先ほど四人から譲渡された膨大な『擬似魂の魔力』が渦巻いている。それが直接、シャーロットの神経系を直撃した。
「んぐぅっ!? んんんんんっ!! あ、あぎぃぃっ!!」
シャーロットの脳内に、暴力的なまでの快感と魔力の奔流が流れ込む。
彼女の能力で見えていたはずの「神社で舞う持子」や「未来の持子」といった情報が、目の前の影持子から放たれる圧倒的な『熱量』によって、次々と焼き切られていく。
(あ、あああッ!! 消える……っ! 神社の情景が、魔力の白光で塗り潰されていく……っ! わたくしの視界が……目の前の、この恐ろしい魔王様の色に染まってぇぇっ!!)
「フハハハハッ! もっと鳴け! 貴様のような卑小な悪魔の理性など、わしの魔力で塵に等しくしてやろう!」
影持子は、エティエンヌとアスタルテに命じ、シャーロットをベッドに完全に固定させた。
「あ、あああああっ!! エティエンヌ様ぁっ! アスタルテ様ぁっ! だめ、だめですわぁっ! そんなに激しく、わたくしの身体を……っ! ひぎぃぃっ!!」
エティエンヌの真祖の魔力と、アスタルテの豊穣の神気。
相反する二つのエネルギーが、影持子のパスを通じてシャーロットの魂の深淵へと突き刺さる。
それはもはや、性愛を超えた「魂の書き換え」だった。
「……シャーロット。お前が視た真実など、わしがすべて上書きしてやる。……お前の神は、わし一人だ」
影持子が、シャーロットの額に掌を当て、極太の魔力パスを強引にねじ込んだ。
「あ、ああああああああっ!! 持子様ぁぁぁっ!! い、いく、わたくし、壊れ、壊れちゃいますわぁぁぁぁっ!!」
――ガクンッ!!
シャーロットの身体が、絶頂の衝撃で大きく跳ね、そのままぐったりとシーツに沈んだ。
その瞳からは光が消え、ただ影持子への絶対的な恐怖と、それと表裏一体の「抗えない快感」への渇望だけが刻み込まれていた。
彼女の脳内にあった、エクリプスやオーウェンといった外部勢力との繋がりを示唆する断片的な思考も、この過酷な『再教育』によって、一時的に機能不全に追い込まれた。今の彼女にできるのは、ただ影持子の足元で、忠実な奴隷として喘ぐことだけだ。
「……ふぅ。これで良いのか、朔夜?」
影持子が、扉の向こうにいる朔夜に、魔王の口調を保ったまま念じた。
「……ああ。完璧だ。よくやったな、持子」
朔夜の、短くも確かな賞賛の言葉。
それを聞いた瞬間、影持子の胸の奥に、魔王の覇気とは無縁の、少女らしい喜びがパッと広がった。
(……やった! 朔夜に褒められた! わし、これからも完璧に魔王を演じてみせるぞ!)
【女帝・雪の支配力】
リビングで、雪は朔夜から届いた報告(霊的な波形)を見て、満足げに微笑んだ。
「……これで一安心ね。シャーロットの矛盾は、快感による『確信』へ変換された。彼女はもう、迷わないわ。……自分の目の前にいる存在こそが、絶対の魔王であるとね」
雪は、神社の方角を、一瞬だけ慈しむように見つめた。
「持子。あなたはそのまま、清らかに舞い続けなさい。……汚れ仕事はすべて、この偽物の魔王と、私たちが引き受けてあげるから」
こうして、本物のJK持子が静かに神への奉仕を続ける裏で、代官山のペントハウスでは、世界を欺くための淫靡で過酷な「騙し合い」の幕が、完全に、そして残酷に幕を開けたのである。




