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【幕間・下僕たちの暴走する桃色妄想】

【幕間・下僕たちの暴走する桃色妄想】


都内の一等地――誰もが羨む超高級住宅街にそびえ立つ、瀟洒な高層マンション。

飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長を遂げ、今や莫大な資金力を有する芸能事務所『スノー』が、所属タレントやスタッフの社宅寮として丸ごと一棟を買い上げている物件である。


しかし、その真の目的は単なる福利厚生ではない。敵対勢力からの物理的・魔術的な襲撃、そして情報の盗聴というあらゆる危険を完全に排除するため、社長であり1000年を生きる大陰陽師・立花雪が、幾重にも強固な結界を張り巡らせた「鉄壁の要塞」なのだ。


豊富な資金力のおかげで、今はスノーの関係者全員に専用の個室が与えられている。

マンションの防衛の要として、一階には雪自身の部屋が構えられている。

その上層階には土御門朔夜や、奴隷扱いであるシャーロットの部屋、そして今後のための空き部屋が続く。

さらに上階には、エティエンヌ、アスタルテの部屋。

そして最上階の一つ下――ここは、持子の絶対的な忠臣たるツートップのフロアだ。第一下僕の鮎と、第二下僕の美羽の部屋が並んでいる。

そして、マンションの最上階ペントハウスは、極黒の魔王・恋問持子のためだけに用意された絶対領域となっている。


今日の女子会の会場は、美羽の部屋だった。


「……それにしても美羽の部屋、いつ来ても本当に何もないですわね」

「私は普段、実家で家族と暮らしてますからねぇ。ここはほとんど使ってないんですよぉ」


第二下僕という確固たる地位ゆえに、美羽に与えられた部屋はとてつもなく広い。だが、生活感も荷物も極端に少ないため、だだっ広い空間が余計に強調され、声が少し響くほどだ。

第一下僕である鮎の部屋はここよりもさらに少しだけ広いのだが、鮎は自身の下僕(?)であるルージュと同居しているため、アンティーク家具や衣装などの荷物が多く、逆に狭く感じてしまうほどだった。


大禍つ炉・最深部での絶望的な死闘を潜り抜け、無事にこの安全な要塞へと生還した彼女たち。

激闘の疲労を癒すため、美羽の部屋の最高級の絨毯(雪が用意してくれた)の上に車座になり、極黒の魔王・恋問持子に忠誠を誓う「愛の下僕同盟」の少女(?)たちは、何やら熱を帯びた雑談に花を咲かせていた。


「……はぁぁ。それにしても、前世の持子様……『董卓』様、凄まじい迫力でしたわね……」


第一下僕である本多鮎が、ピンク色の髪を揺らしながら、うっとりとしたため息を漏らした。


「今の美しく気高い持子様ももちろん最高ですけれど……あんな見上げるような巨躯と圧倒的な暴力で、この私を理不尽に抱き潰してくださったら……ああ、どうなってしまうのかしら……ッ!」


鮎の頬はすっかり紅潮し、究極のドMとしての狂信的な本性がダダ漏れになっている。


「分かりますわ、鮎! あの規格外の巨漢……」


五百年の時を生きる真祖の吸血鬼でありながら、持子の性癖に刺さるためだけに185センチの絶世の金髪美女へと女体化したエティエンヌが、豊満な胸の前で両手を組んだ。


「私のこの不死身の肉体が軋むほどの暴力で貪られたら……想像しただけで、下腹部が熱くなってきますわ……!」


「ああぁんっ、我が神のあの猛々しい雄姿……っ! 豊穣の女神であるわたくしでも、あんな巨体に乱暴に扱われたら、一瞬で堕とされてしまいますわぁっ!」


かつて男の悪魔アスタロトに貶められていた元女神のアスタルテも、サファイアブルーの瞳を潤ませて身悶えしている。


「ちょっとお待ちになさいな!!」


ここで、鮎の隣に座っていた三百年の時を生きる吸血鬼の元女王・ルージュが、鋭いツッコミを入れた。


「あなたたち、頭が沸いていますの!? 先ほどまで自分たちを殺そうとしていた、あの醜悪な肉の塊を思い出して欲情するなんて、正気の沙汰じゃありませんわ!」


「ルージュさんは分かってないですねぇ」


小柄でふわふわとした茶髪の美少女、花園美羽が、ヤンデレ特有の淀んだ瞳でルージュをねめつけた。


「そういえば、私が首を刎ねた敵の軍師の李儒りじゅさんって……今のエレーヌ・リジュさんの前世なんですよね?」


「「「確かに」」」


下僕たちが一斉に頷く。


「今のエレーヌさんとは似ても似つかない、青白い顔の男でしたわね」

「でも、根っからの悪党感が凄かったですし、なにより持子様(董卓)への執着と忠誠心は本物でしたわ」


鮎が思い出すように顎に手を当てる。


「転生とか、今世の経験で人って大きく変わるんですのね。そう考えると、わたくしたちの前世って、一体どんなものだったのかしら?」


エティエンヌの疑問に、アスタルテが胸を張って答えた。


「わたくしは最初から古代オリエントの偉大な神ですから、前世という概念はありませんわ。……ですが、人間の価値観の変化によって、無理やり男の悪魔『アスタロト』に貶められていた時期がありましたの」


アスタルテは少しだけ寂しそうに目を伏せる。


「神でさえ、人間の都合や時代の流れで姿を変えられ、あるいは忘れ去られてしまう……。難しくもあり、面白いところですわね」


「あら、なんだかアスタルテのくせに珍しく深いことを言いますわね」


ルージュが感心したように頷く。


「あまり過去を気にしても仕方ありませんわ。今の自分を全力で楽しむのが一番ですのよ」

「ええ、そうですわね。だからエティエンヌも、今の自分を楽しむあまりに女体化までしてしまったんですものね」


鮎がクスリと笑う。


「楽しみすぎですわ!! 愛のために性別まで物理的に変えるなんて、業が深すぎますのよ!」


ルージュの的確なツッコミが、広すぎる美羽の部屋に虚しく響き渡る。

しかし、下僕たちの耳にはもうルージュの言葉は届いていなかった。彼女たちの脳内では、再び『もしも董卓様(持子)と夜を共にしたら』という危険で猥雑な妄想が、限界を超えた解像度でフル回転を始めていたのだ。



***



(ああ……っ、董卓様っ! もっと、もっと乱暴に……っ!! 息もできないくらいに、わたくしを蹂躙して……っ!!)


鮎の脳内には、己の狂信的なドM気質を満たす、究極のシチュエーションが鮮明なビジョンとなって再生されていた。


『ズシン……! ズシン……!』


豪華絢爛な中華風の寝所に、地響きのような足音が響き渡る。

シルクの薄着一枚で寝台に横たわる鮎の前に、巨大な影が落ちた。見上げるほどの巨躯、血と汗の匂いを漂わせた暴君・董卓の姿だ。


『ガシィッ!!』


「ひぐぅッ!?」


鋼のような、いや、丸太のごとき太く無骨な腕が、トップモデルである鮎の華奢な両手首を乱暴に掴み、頭上に縫い留める。

抵抗など一切許されない。完全な力の差。


『ふん。小柄なメスだが……顔だけは良い。大人しく啼け、貴様は今日からわしの便女べんじょだ』


「あぁっ……はぁっ、はぁっ……っ! もちろんですわ……わたくしのすべては、持子様、いえ、董卓様のものです……っ! 好きに、お好きなように壊してくださいませ……っ!」


『ビリィィィッ!!』


「ああっ♡」


最高級のシルクの衣服が、紙くずのように引き裂かれた。

あらわになった鮎の白い肌に、董卓の巨大な質量が容赦なくのしかかる。


『ミシィッ……!』


「が、はっ……!?」


肋骨が悲鳴を上げるほどのすさまじい重圧。空気が肺から押し出され、視界がチカチカと明滅する。

呼吸すらままならない圧倒的な暴力。しかし、その逃げ場のない「完全なる支配」こそが、鮎の脳髄を歓喜の麻薬で満たしていく。


『バチィィンッ!』


「あぁぁぁんっ♡♡」


ぶ厚い掌が、鮎の柔らかな太ももと尻を容赦なく叩き据える。ジンジンと焼けるような痛みが、一瞬にして極上の快感へと変換されていく。


『ゾクッ……ゾクゾクッ!』


(痛い……っ、苦しい……っ! なのに、奥の奥が、熱くて……溶けそうですわ……っ! 董卓様の、その巨大で凶悪な楔が、わたくしの奥深くまで蹂躙して……頭が、真っ白に……っ!)


『どうした? もっと啼け。貴様のその生意気な顔が、快楽と苦痛で歪むのを見せてみろ』


「ひやぁっ、あぁっ……! 壊れますわ……わたくし、中から真っ二つに引き裂かれてしまいますわぁっ……!!」


『フハハハッ! ならば引き裂かれるが良い! わしの腕の中で狂え!』


(もっと……っ! もっと激しく! わたくしの自我が吹き飛ぶくらい、獣のように犯し尽くして……っ!!)



***



(ふふっ……持子様……♡ 私だけの、優しくて大きな魔王様……♡)


一方、美羽の妄想は、暴力的な見た目とは裏腹の、甘く歪んだ独占欲に包まれていた。


「……美羽」


真っ暗な寝室。地獄の底から響くような、重く低い魔王の威厳に満ちた声が鼓膜を震わせる。

月明かりに照らされたのは、見上げるような巨体の董卓。だが、その黄金の瞳は、美羽だけに向けて驚くほど甘く、優しく細められていた。


「持子様……っ、寂しかったですぅ……」


美羽は、董卓の巨大な胸板にすり寄る。


『……お前は、小さくて脆い。少しでも力を込めれば、すぐに壊れてしまいそうだ』


魔王の丸太のような太い指先が、美羽の頬から首筋にかけて、羽毛で撫でるようにそっと、慎重に這う。

『ゾクァッ……』と、強烈なオスとしての熱と、圧倒的な体格差がもたらす恐怖、そして「特別扱いされている」という優越感が、美羽の背筋に甘い電流を走らせた。


『だが……お前は、わしのものだ。髪の毛一本、血の一滴まで、わしだけのものだ。誰にも渡さん……誰にも、見せはせん』


「あ……んっ、はい……っ♡ 私は、持子様だけの、美羽ですぅ……っ。私の全部、持子様が独り占めしてくださいね……っ」


『チュッ……ジュルッ……レロォ……』


董卓の大きな口が、美羽の小さな唇を、そして首筋の静脈を、まるで極上のスイーツを味わうかのように、ゆっくりと、しかしねっとりと舐め上げる。

その巨大な舌の感触に、美羽はビクビクと身体を震わせた。


(……あぁんっ♡ 持子様の、大きくて熱いものが……私の中を、優しく、でも絶対に逃がさないって感じで、満たしてくれますぅ……っ。こんなに大きいのに、全然痛くなくて……ただただ、気持ち良くて……っ)


見た目は恐ろしい暴君。しかし、自分にだけは特別に甘く、決して壊さないように慈しんでくれる。

その絶対的な独占欲と優しい愛撫が、美羽のヤンデレ心を限界まで満たしていく。


『愛しているぞ、美羽。お前の内側すべてを、わしの熱でドロドロに溶かしてやろう……』


「あぁっ……はぁっ、持子様……っ、持子様ぁ……っ♡ 好き、大好きですぅ……私を、空っぽになるまで愛してぇ……っ♡」



***



(ああぁっ……! なんという猛々しさ……っ、これぞ真の『オス』! 私の血が、本能が沸騰しますわ……っ!)


エティエンヌの妄想は、人間性など欠片もない、野性の獣たちによる死闘のような交尾そのものだった。


『ガァァァンッ!!』


「あぁっ!?」


廃墟の石壁に、背中から激しく叩きつけられるエティエンヌ。

185センチの長身で、真祖の吸血鬼であり、並の魔物など素手で引き裂く彼女でさえ、董卓の暴力の嵐の前では手も足も出ない小動物に過ぎない。


『グルルルッ……! 生意気な女吸血鬼め……その誇り高いツラを、絶望と快楽でグチャグチャにしてやる……!』


董卓は獣のような荒い息を吐きながら、エティエンヌの豊かな金髪を鷲掴みにし、そのまま背後から無理やり押さえ込んだ。


「ひぎぃっ……! あぁぁっ、痛い……っ、痛くて……最高ですわぁっ!!」


『ガブッ! ブチブチッ!』


最高級のドレスが紙のように引き裂かれ、エティエンヌの白磁のような豊満な肌が夜気に晒される。

董卓の巨大な手が、その双眸を乱暴に揉みしだき、さらに吸血鬼である彼女の首筋に、逆に鋭い牙を立てて深く噛み付いた。


「ああっ!? 噛まれた……っ、真祖である私が、血を吸われるなんて……っ!!」


(あぁっ……っ! 真祖の力でも抗えない、この圧倒的な蹂躙……っ! 私の不死身の肉体が、董卓様の巨大な牙と暴力に引き裂かれては再生し……終わりのない快楽のループに叩き落とされますわ……っ!)


『どうした? 吸血鬼の女王とやら。もっと腰を振れ。わしの雄叫びを腹の底で受け止めろォッ!!』


「あひぃぃっ……!! もっと……っ、もっと奥まで……っ! 私の腸が千切れるくらい、激しく……っ、あなたの野性の熱で、私をメチャクチャに犯し尽くしてくださいませぇっ……!!」



***



(董卓様……わたくしのすべてで、あなたを癒やして差し上げますわ……っ。そして最後には、極上のご褒美を……っ♡)


アスタルテの妄想は、ひたすらな『献身と奉仕』、そしてその先にある『絶対的な肯定』であった。


「はぁっ……はぁっ……董卓様、玉座での長時間の執務、お疲れのようですわね……」


豪華な天蓋付きのベッドでうつ伏せになる巨躯。

アスタルテは、豊穣の女神としての完璧なプロポーションを武器に、董卓の巨大な背中にピタリと張り付いた。


『ムギュゥゥッ……』


女神の柔らかな双丘が、董卓の岩のような筋肉に押し付けられ、形を変える。


「わたくしの、神の魔力を持ったこの指先で……董卓様の隅々まで、トロトロに気持ち良くして差し上げますわ……っ」


『ヌチャ……ジュルッ……』


最高級の香油をたっぷりと手に取り、アスタルテの白い手が、董卓の太い首筋から厚い胸板、そして腹部へと滑らかに這っていく。

自らの柔らかな太ももや腹を擦り付け、女神の甘い体臭と体温で、暴君の全身をマッサージしていく。


『……ふん。悪くないぞ、アスタルテ。神とやらも、便女としての使い道はあるようだな』


「あぁっ……! 董卓様に、わたくしの御奉仕を褒めていただけるなんて……っ! わたくし、嬉しくて……下腹部がキュンキュンと疼いてしまいますわ……っ!」


極上の奉仕の果て。

全身の筋肉を弛緩させた董卓は、ゆっくりと仰向けになると、アスタルテの身体を軽々と抱き上げ、己の巨大な胸の中にスッポリと収めた。


『ガシッ……』


『よくやった。お前の身体、存外に心地よい。……褒美に、わしがたっぷりと可愛がってやろう。わしの熱を、神の腹の底まで注ぎ込んでやる』


「ひやぁぁんっ♡♡」


(あぁっ……! 頑張って御奉仕した後に……最後は董卓様の大きくて太い腕に、ギュッと優しく抱きしめられて……っ! わたくしの奥の奥の、一番敏感なところに……熱くて濃い愛を、ドクドクと注ぎ込んでくださる……っ! 神であるわたくしが、ただの幸せなメスにされてしまいますわぁっ……!)


「董卓様……っ、董卓様ぁっ……♡ わたくしの子宮、全部あなたのもので満たしてくださいませぇっ……♡」



***



「「「「あぁぁぁぁぁぁっ♡♡♡」」」」


何もない広々とした美羽の部屋で、四人の美女たちが己の妄想だけを限界突破させ、大量のよだれを垂らしながら完全にイったアヘ顔を晒して絨毯の上に崩れ落ちた。


「……妄想して勝手にイかないでくださる!? ここ、神聖な女子会の場ですわよ! 少しは恥じらいというものを持ちなさいな!! しかも声ダダ漏れですわよ!」


三百年の時を生きる元女王ルージュの、常識的すぎるツッコミと哀愁漂うため息だけが、鉄壁の要塞である超高級マンションの一室に虚しく響き渡っていたのだった。


【大禍つ炉編 幕間・愛の下僕同盟、最上階への強行突入】


「「「「あぁぁぁぁぁぁっ♡♡♡」」」」


何もない広々とした美羽の部屋で、四人の美女たちが己の妄想だけを限界突破させ、大量のよだれを垂らしながら完全にイったアヘ顔を晒して絨毯の上に崩れ落ちてから数分後。


「……ハッ! わたくしとしたことが、己の欲望に溺れて本来の目的を見失うところでしたわ!」


最初に正気を取り戻した第一下僕・本多鮎が、バッと勢いよく上体を起こした。

そのピンク色の髪を乱しながら、彼女の瞳には先ほどまでの淫靡な熱とは違う、狂信的なまでの使命感がギラギラと燃え上がっている。


「どうしましたの、鮎? まだ董卓様の巨大な腕の感触が……ふふっ」

「違いますわエティエンヌ! 妄想で満足している場合ではありませんのよ!」


鮎はビシッと指を突きつけ、まだ床でモジモジしている下僕たちを一喝した。


「よくお考えなさい! 持子様は今、あのダンジョンの最深部でご自身の過去……醜悪な董卓としての姿を見られたことで、激しいトラウマと自己嫌悪に陥っていらっしゃるのですわ! きっと最上階のペントハウスで、お一人で膝を抱えて震えておいでのはず……っ!」


「ああっ……! 確かにそうですわ! 竜とかいう小僧にも心無い言葉を投げかけられて……今頃、孤独に打ちひしがれていらっしゃるに違いありませんっ!」


アスタルテもハッと我に返り、サファイアブルーの瞳に涙を浮かべた。


「そうですよぉ……。持子様は強がっていますけど、本当はすっごく繊細で傷つきやすいんです。私たちがこんなところで妄想して気持ち良くなってる間に、持子様が一人で泣いてるなんて……絶対に許せません!」


美羽がギリッと奥歯を噛み締め、ヤンデレ特有の重すぎる愛情を瞳に宿して立ち上がる。


「わたくしたちは、持子様の『下僕』ですわよ! ご主人様が限界を超えて苦しんでいらっしゃるのなら、わたくしたちが……ありったけの『愛』と『極上の奉仕』で、そのお心とお身体を、強制的にでも癒やし尽くさねばなりませんわ!」


「「「異議なしですわ(ですぅ)!!」」」


下僕たちの心が、持子を救う(という名目の過剰なスキンシップ)という一点において、かつてないほどの恐るべき結束を見せた。


「……嫌な予感しかしませんわね。持子様がさらにトラウマを拗らせなければ良いですけれど……」


ルージュだけが呆れたようにため息をついたが、暴走特急と化した彼女たちを止めることはもはや誰にも不可能であった。


「持子様を慰めるには、まずは胃袋から満たして差し上げるのが一番ですわ! 美羽、この部屋のキッチンに食材はありますの!?」

「普段住んでないので、調味料とミネラルウォーターしかありません!」

「ならば買い出しですわ! 持子様の愛するジャンクフード、高級肉、甘いスイーツ、そして極上の美酒をありったけ集めますのよ!」

「あ、あのっ! わたくし、持子様の心と身体を極限までリラックスさせる『豊穣の感度倍増ポーション』を調合いたしますわっ!」

「でかしたわアスタルテ! あとは人員ですわね。大量の物資を運ぶための……」


鮎が思案顔になったその時だった。


『ピンポーン』


部屋のインターホンが、間の抜けた音を立てた。

モニターに映っていたのは、両手にちぎれんばかりのスーパーのレジ袋と、デパ地下の高級紙袋を抱え、疲労困憊で顔を引きつらせた金髪の美女――スノーの最下層奴隷こと、大公爵シャーロット(中身グレモリー)であった。


『あ、あの……鮎様ぁ。お言いつけ通り、日用品と高級トイレットペーパー、それから指定の食材を買ってまいりましたわ……。ドアを、開けていただけますか……? 腕が、限界ですの……』


先ほど、外出先でヴィンセント・オーウェンからの恐ろしい念話テレパシーを受け、絶望的なスパイ任務を強要されたばかりの彼女である。心身ともにボロボロの状態だった。


「……ちょうど良いところに、都合の良い荷物持ち(どれい)が来ましたわね」


鮎の唇が、三日月のように吊り上がる。

ガチャリ、と重厚なドアが開いた瞬間、シャーロットは鮎たちの異常な熱気と、肉食獣のような眼光に射抜かれ、ヒッ! と短い悲鳴を上げた。


「シ、シャーロット、ただいま戻りまし――」

「ご苦労様ですわシャーロット! ですが、休む暇はありませんわよ! その荷物を抱えたまま、すぐについてきなさい!」

「えっ!? は、はいぃ!? わたくし、今帰ってきたばかりで、足の感覚が……っ!」

「問答無用ですわ! これからわたくしたちは、愛する持子様を孤独のどん底から救い出し、ドロドロに甘やかして差し上げる『慰安パーティー』を決行いたしますの! 奴隷であるあなたも、宴会要員として強制参加ですわ!」


エティエンヌがシャーロットの首根っこをヒョイッと掴み、そのままズルズルと廊下へ引きずり出した。


「いやぁぁっ!? 待ってくださいませ! わたくし、持子サマのお顔を直視できる精神状態じゃありませんのぉぉっ!」


オーウェンに命じられ、「持子のトラウマを抉るような言葉を吹き込む」という極秘任務を負わされているシャーロットにとって、今このタイミングで持子の部屋に突撃するなど、拷問以外の何物でもない。


「あら? ご主人様を慰めるという名誉な役目を与えて差し上げるのに、不服ですの?」


美羽が、スッと冷たい目でシャーロットを見上げた。その手にはいつの間にか七牙の短刀が握られている。


「ひぃっ! い、行きます! 喜んでお供させていただきますわぁっ!」


かくして、哀れな悪魔を荷物持ち兼生贄として引き連れた「愛の下僕同盟」の面々は、マンションの最上階へと続く専用エレベーターへと乗り込んだ。

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