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【東京ダンジョン8】

【東京ダンジョン8】


「臣下にできないなら、仕方あるまい」


地面にめり込み絶命したアンドラスを見下ろし、持子がそう吐き捨てた直後だった。


「持子様。でしたらその骸と狼、そして先ほど賜った剣、すべて私にお預けいただけないでしょうか?」


進み出たのは、185センチの絶世の金髪美女へと女体化を果たした真祖の吸血鬼、エティエンヌであった。

彼女はその巨乳と細い腰を艶やかに揺らし、持子への狂信的な愛と究極のドM心を湛えた熱い瞳で主を見つめる。


「ほう? 何をする気だ、エティエンヌ」


「持子様と皆様を永遠にお護りする、私自身の『魂の半身』とも呼べる絶対的な守護騎士を造り上げますわ。……アスタルテ、あなたの豊穣と生命の魔法で助力を」


突然指名されたアスタルテは、アーサーの面影を残す波打つ黄金の長髪を揺らし、「わ、わたくしですか!?」とサファイアブルーの瞳を丸くした。

彼女はかつて偉大な女神であったが故に、極上のバフ(支援)能力を持つ最高峰の支援役である。


「持子様、よろしいでしょうか?」


「……よかろう。やってみせよ」


愛する下僕たちには深い慈悲を与える、真の王の器たる持子はそれを鷹揚に許した。


「もったいないお言葉……っ! このアスタルテ、一生持子様にお仕えいたしますわ!」


持子からの許可にアスタルテがヤンデレ気味の重い愛情を爆発させて身悶えする中、エティエンヌによるオリジナルの魔術儀式が幕を開けた。



【儀式:影の騎士の誕生】


五百年の長きにわたりヨーロッパの夜を支配してきた真祖の吸血鬼であるエティエンヌは、まず自身の清浄な魔力で、アンドラスの死骸から「不和」と「狂気」の毒気を完全に抜き去った。

そして、空っぽになったフクロウの頭部へ、彼女が500年かけて蒐集してきた最高級の魔力結晶(魔石)を眼球として埋め込み、深淵なる知性を宿らせる。


「アスタルテ、今ですわ!」


「はいっ! 我が神の御為に……!」


アスタルテが豊穣の女神としての莫大な魔力を注ぎ込み、器の生命力を爆発的に強化する。

それに呼応するように、エティエンヌは禍々しい冷気を放つ『黒剣』 を手に取り、なんとそれを騎士の「脊椎」として背中へ深々と打ち込んだ。

剣そのものを騎士の意志とし、刃の持つ強烈な殺意を「絶対的な守護」へと変換させるという、狂気的かつ完璧な術式である。


さらに、残された黒い狼の毛皮を引き裂き、騎士の皮膚そのものとして同化させた。

この皮を媒介とし、騎士をエティエンヌ自身の足元の影と深く繋ぎ合わせる。


「皆様、どうかこの騎士に一滴の血をお与えください。強固な絆を結ぶために」


エティエンヌの呼びかけに、愛の下僕同盟の面々が応じた。

持子の第一下僕であり究極のドMである本多鮎、神速の暗殺術を極めた泥棒猫の花園美羽、鮎の影の中に住まう三百歳の吸血鬼の元女王ルージュ、そして、スノーの最下層の奴隷へと叩き落された不憫な元大悪魔シャーロット。豊穣の女神アスタルテ。

彼女たちの血が一滴ずつ、騎士の骸へと滴り落ちる。


最後に、エティエンヌ自身、そして極黒の魔王である持子の血が混ざり合った瞬間――。


ゴオォォォォォォォォッ!!


黒き狼の皮を被った巨大な騎士が、禍々しくも神聖な産声を上げて立ち上がった。

その姿は、血の契約を超えた不滅の化身。

しかし、その禍々しいオーラと狼の皮が幻影のように薄れ、静かに霧散していくと、そこに立っていたのは先ほどエティエンヌが造り上げた化け物の姿ではなく、ひとりの「男」であった。


身長2メートルに達する筋骨隆々の巨躯。冷酷でありながらも彫刻のように整った顔立ち。

そこから放たれるのは、すれ違うだけでほとんどの女をメロメロに惑わせてしまうような、強烈で甘いフェロモンのオーラである。

騎士は一切の言葉を発することなく、恭しくエティエンヌの前で跪いた。


「……見事な手際だな」


「ありがとうございます、持子様。彼が傷ついても、私の影に戻れば即座に修復されます。私が滅びぬ限り、彼は永遠に私の傍らに侍り、敵を因果ごと切り捨てるでしょう」


エティエンヌは自身の目と目の間にあるツボ、『晴明』をそっと指で刺激した。

魔力視を広げると、目の前に跪く騎士の絶対的な忠誠と思考が、静寂の対話として彼女の脳裏に流れ込んでくる。

それは、500年の孤独を分かち合う、唯一の理解者の誕生でもあった。


「私が愛する持子様が命懸けで愛したあなたたちを、私も命懸けで愛し、護ります」


圧倒的な母性と包容力を持つエティエンヌは、自らの新たな最強の矛と盾を感じながら、愛する「家族」たちへ向けて優雅に微笑んだのだった。


「…………」


一方、持子は目を瞬かせ、その目前に跪く超絶イケメンの影の騎士をじーっと見つめた。

そして、ひきつったような、なんとも微妙な顔をした。


前世の記憶の中で、息子として扱っていた呂布との激しいBL同人誌(薄い本)を発見してしまったことが最大のトラウマである持子にとって、そのイケメンすぎる風貌は極めて危険なシグナルであった。

男同士の恋愛展開や、自分が男に抱かれることに対しては絶叫して全力逃走するほどの拒絶反応を示すのだ。


「エティエンヌ。これ……男の頃のお前にそっくりだなぁ……」


「……っ! 申し訳ございません、持子様!」


元々は2メートル近い長身の冷酷な美男子であったエティエンヌは、ハッとして、絶世の金髪美女へと女体化した豊かな胸を大きく揺らして平伏した。


「私自身の血を混ぜたせいで、肉体の本来の姿を色濃く模倣してしまったようで……! すぐに調整いたしますわ!」


エティエンヌが指を鳴らすと、影の騎士はスゥッとエティエンヌの足元を滑り、そのまま隣に立つ持子の影の中へと潜り込んだ。

すると――。


ポポンッ!


再び持子の影から飛び出してきた騎士は、身長175cm、神が計算し尽くしたような「黄金比」のプロポーションと白磁の肌、黄金の瞳を持つ絶世の美少女――すなわち「恋問持子」と瓜二つの姿に変貌していた!


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