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【東京ダンジョン5】

【東京ダンジョン5】


バスルームでのひとしきりの騒動を終え、ようやく『指定地下ダンジョン』攻略に向けた準備が整った。


「ふははははっ! どうだ、わしのこの完璧な着こなしは!」


持子が誇らしげにポーズを決める。


彼女が身を包んでいるのは、自身がメインビジュアルを務める世界的ブランド『リュクス・アンペリアル』の最新コレクションだった。洗練された漆黒のジャケットに、タイトなレザーパンツ。極上の素材が黄金比のプロポーションを完璧に引き立てている。


「あぁんっ……持子様、素敵です! その神々しいお姿、私のこのカメラに収めさせてくださいませ!」


カシャカシャカシャカシャッ!


『第一下僕』の本多鮎は、持子がポーズを決めるたびに、事務所の経費で買った超高級一眼レフカメラのシャッターを限界オタクのような手つきで切りまくっている。


そんな鮎自身の服装は、ルージュの影の収納(ルージュ部屋)から取り出した、動きやすいジーパンにタイトなニットというカジュアルなものだったが、元国民的トップモデルのダイナマイトボディがそれを極上のオシャレへと昇華させていた。


「鮎先輩、ずるいですぅ! 持子さん、私のことも見てくださいっ!」


美羽が、あざとく小首を傾げて持子の腕にすり寄る。


彼女が着ているのは、一見すると少しスポーティーなだけの普通の私服だが、実はTIA特製の戦闘服だった。風間楓から「死にたくなければ着なさい」と直接渡されたものであり、特級呪具並みの防御力が付与されている。


「うむ、美羽も可愛いぞ。しかし、一番わしの心をくすぐるのはエティエンヌだな!」


「んふっ……光栄ですわ、持子様」


エティエンヌが、豊満な胸の谷間を強調し、スリットから白く長い脚を覗かせる、極めて扇情的なドレス姿で微笑んだ。持子のスケベなオッサン気質にドストライクな、エロティシズムの極致である。


「我が神、わたくしも負けてはおりませんわ……っ!」


アスタルテは、豊穣の女神にふさわしい、柔らかなドレープが美しい古代オリエント風のドレスを纏っている。歩くたびにサファイアブルーの瞳と黄金の髪が揺れ、肉感的なプロポーションが強調される。


「ご、ご主人様、わたくしめはこのような格好で……」


シャーロットは、動きやすい黒のスラックスに白いブラウスという出で立ちだが、プラチナブロンドの髪とイギリスのトップモデルとしての高貴な容姿のせいで、一流ブランドのカタログ撮影のようにしか見えない。


(……どこのモデルの撮影所だよ!)


ルージュは、部屋の隅で腕を組みながら、心の中で激しくツッコミを入れていた。


(これから化け物が無限に湧き出す地下ダンジョンに潜るっていうのに、なんでリュクスの新作発表会みたいになってるんですの!? おかしいでしょうが!)


しかし、このカオスな集団に常識を説いても無駄であることは、先程のやり取りで骨の髄まで理解していた。


「ひっ……あの、ご主人様……」


恐る恐る、シャーロットが進み出る。彼女の美しいアメジストの瞳は、今にも泣き出しそうに潤んでいた。


「わたくし……戦うところには、行きたくないのですけれど……」


「なんだと? 貴様、わしの命令に逆らうつもりか?」


持子が黄金の瞳を細め、威圧感を放つ。


「ひぃぃっ! ち、違いますわぁっ! 逆らうなど、めっそうもないことでございます!」


シャーロットは即座に完璧な土下座の姿勢に入り、床に額を擦り付けた。


「わ、わたくし、中身は悪魔学の大公爵グレモリーでございますが、この器は完全に人間と融合してしまっておりますの! 物理的な戦闘力は皆無でございます! あんな、あんな穢れと魔物の巣窟に行ったら、普通の人間と変わらないわたくしは、指先でつつかれただけで即死してしまいますわぁぁっ!」


ボロボロと大粒の涙をこぼし、痛いのが大嫌いな元大悪魔が必死に懇願する。


「ダメだ!」


持子は無慈悲に一蹴した。


「貴様の『過去・現在・未来の透視タイムサイト』による索敵と解析能力は、未知のダンジョン攻略において必須である! 案ずるな、貴様の命はわしが保証してやる」


持子は、傍らに控える美羽とアスタルテに視線を向けた。


「美羽、アスタルテ。シャーロットの護衛は貴様らに任せる。指一本触れさせるな」


「はいっ! 持子さんの泥棒猫にお任せください! 楓ちゃん直伝の暗殺術で、近づく敵は全部切り刻みますぅっ!」


「我が神の仰せのままに……っ! このアスタルテの生命の魔法と幻惑で、シャーロットを完璧にお護りいたしますわ!」


「ひぐっ……あ、ありがとうございますぅ……っ」


シャーロットは、完全に折れた心で力なく頷くしかなかった。


「よし、では行くぞ! 帝都の地下、極黒の魔王の庭の掃除だ!」


持子たちは、夜の東京の地下深く――かつて『大禍つ炉』が存在した最下層へと向かった。


しかし、ダンジョンへの入り口へと続くメインゲートの手前で、彼女たちは足を止めた。


「むむ……」


通路の角からそっと様子を窺う持子の視線の先には、重武装した数人の男たちがゲートを見張っていた。


『TIA』の特務制服を着たエージェントや、修験道の装束を纏った鳳翼山伏衆、そして古神道結社『八咫烏』の神官たちだ。


「見張りがいるとは思っていたが……知った顔もちらほらおるな」


持子が腕を組んで唸る。


「ご主人様、どうなさいますか? わたくしがデュラハンの大剣で、峰打ちにして黙らせましょうか?」


鮎が、狂信的な笑みを浮かべて物騒な提案をする。


「馬鹿者、やめておけ。峰打ちで死ぬわ。力ずくで突破などしたら、後で面倒なことになる……」


持子の脳裏に、怒りで青筋を立てた二人の顔が鮮明に浮かんだ。


『当たり前です。私が殺しますよ、持子先輩』と、みぞおちに強烈な肘打ちをお見舞いしてくる冷徹な修羅の巫女、風間楓。


そして、『あら、持子? お顔から完全に調子に乗っているのが漏れ出ているわよ?』と、極上の笑顔のまま絶対零度の殺気を放つ絶対的ヒエラルキーの頂点、葉室桐子。


(ブルブルブルッ……!)


持子は身震いした。


「絶対にダメだ! あの二人に知られたら、楓と桐子お姉さんには怒られたくないのだ! 穏便に、かつ完全に気付かれずに通り抜ける必要がある」


「でしたら、我が神(持子様)」


アスタルテが、豊満な胸に手を当てて妖艶に微笑んだ。


「わたくしの幻影魔法をお使いになりませんか? 彼らの視覚と聴覚を完全に誤認させ、私たちが素通りしても、ただの『風の音』としか認識できないようにいたしますわ」


「おお! さすがは豊穣と愛欲の女神! 任せたぞ、アスタルテ!」


「あぁんっ……! 我が神に褒められた……っ! かしこまりましたわぁっ!」


アスタルテが両手を軽く掲げると、サファイアブルーの瞳が妖しく輝き、柔らかな金色の粒子が通路全体をふわりと包み込んだ。


「……ん? 今、少し風が吹いたか?」


「いや、気のせいだろ。センサーには何の反応もないぜ」


見張りのエージェントたちが首を傾げる中、持子たちは堂々と彼らの目の前を通り抜け、ダンジョンの入り口である超巨大なチタン合金製・対呪詛防護隔壁の前にすんなりと到達した。


「よし、見張りは抜けたな」


持子が隔壁を見上げる。そこには、七クランが共同で組み上げた多重結界が、青白い魔術文字となって眩く輝き、完全に道を塞いでいた。


「物理的な壁だけでなく、何重もの強力な結界が張られておりますわね」


エティエンヌが、真祖の目で結界の構造を分析する。


「力ずくで破壊すれば、たちまち警報が鳴り響くでしょうね」


「シャーロット、出番だ。観ろ」


持子が命令を下す。


「ひっ! は、はいっ!」


シャーロットがアメジストの瞳を見開き、『タイムサイト』を極限まで発動させる。彼女の脳内に、結界を構築した七つのクランの術式の流れ、位相、そしてごく僅かな綻びの未来が流れ込んでくる。


「……見えましたわ! 陰陽道の結界と、西洋魔術の結界の接合部に、一瞬だけ生じる同期のズレ……! 右から三番目の術式ノードに、わたくしの魔力を微弱に流し込めば、警報を鳴らさずに数秒だけ、人間が通れるほどの隙間を作れますわ!」


「でかした! やれ!」


「は、はいっ! ……えいっ!」


シャーロットが震える指先で隔壁の一部に触れると、青白い魔術文字が音もなく歪み、ぽっかりと漆黒の隙間が開いた。


スゥゥゥゥゥゥゥ……ッ!


「よし、入るぞ!」


持子を先頭に、鮎、エティエンヌ、美羽、アスタルテ、シャーロット、そして影に潜むルージュが次々と漆黒の隙間へと滑り込む。全員が通り抜けた直後、結界は再び完全に閉じた。


「よくやった、シャーロット、アスタルテ! お前たちの力は、わしの覇道に不可欠だ!」


持子が機嫌良く二人の頭を撫でる。


「あぁんっ……! 我が神の御手が……っ!」

「ひぐっ、あ、ありがたき幸せにございますぅ……っ!」


極上のバフとタイムサイトの使い手たちは、持子の魔力と褒め言葉で完全に昇天しかけていた。


結界を抜けた先。

そこは、この世の地獄を具現化したような空間だった。


過去の怨念がこびりついた暗黒の空間に、莫大な穢れが注ぎ込まれた結果、空間そのものが変質している。赤黒い瘴気が濃霧のように立ち込め、岩肌は脈打つ肉塊のようにグチャグチャと蠢いている。強力な魔物と理不尽な怨霊が自然発生し続ける異常領域――『指定地下ダンジョン』の第1層である。


「グルルルルルル……ッ!」

「ギェェェェェェェッ!!」


侵入者の生きた匂いを嗅ぎつけ、岩陰から、泥の沼から、異形の化け物たちが次々と湧き出してきた。腐肉を纏った巨犬、四つん這いで這い回る亡者、そして空を飛ぶ黒い眼球の群れ。


「ご主人様! ここは私が!」


鮎が狂喜に満ちた声を上げる。


「ルージュ! アレを出して!」


「まったく、人使いの荒いマスターですわ!」


ズルンッ!


鮎の足元の影が大きく広がり、そこから身の丈を超える巨大な黒鉄の剣――『デュラハンの大剣』が吐き出された。


ガキンッ!!


鮎がその大剣を軽々と片手で掴み取る。極黒の魔力が鮎の全身を駆け巡り、彼女は狂戦士バーサーカーへと変貌した。


「ふふふっ、持子様からいただいたこの力で、有象無象を蹂躙して差し上げますわ!」


ブンッ! ドゴォォォォォンッ!!


鮎がデュラハンの大剣を横薙ぎに一閃する。凄まじい『面の圧力』が空間ごと魔物の群れを押し潰し、腐肉の巨犬たちがまとめて肉片へと変えられた。


「ギャァァァッ!」


「あははははっ! 素晴らしい! もっと、もっとご主人様のために血を流しなさい!」


狂ったように笑いながら、鮎は大剣を振り回し続ける。


「私も、持子様のために……」


エティエンヌが、優雅な足取りで前に出る。


「持子様をお救いした際に、魔殺しの聖剣は砕け散ってしまいましたし、今回は急でしたから武器は持っておりませんの。……ですが、真祖の私には、己の肉体こそが至高の武器ですわ」


シャキィィィィンッ!


エティエンヌの白魚のような指先から、鋭く長い吸血鬼の爪が伸びる。


「さぁ、いらっしゃい」


「ギギギギギッ!」


空から襲い掛かってきた黒い眼球の群れに対し、エティエンヌは舞い踊るように腕を振るった。


ザシュッ! ズバァァァァァッ!!


目にも留まらぬ神速の爪の斬撃が、空中の魔物たちを正確に切り裂いていく。エティエンヌの美しい金髪が瘴気の風に舞い、返り血を一滴も浴びることなく、芸術的なまでの殺戮を繰り広げた。


その後方では、美羽がシャーロットの前に立ち塞がっていた。


「楓ちゃんに貰った、この『七牙の短刀』の錆にしてあげますよぉっ!」


美羽の特注戦術ベルトから、五行の属性を宿した短刀が2本、瞬時に引き抜かれる。


「『無足』……からの、『七牙連斬しちがれんざん』っ!」


シュンッ!


美羽の姿がブレて消えたかと思うと、魔物の背後に音もなく出現。


ズババババババババッ!!


炎と雷の属性を帯びた二刀流の連撃が、這い回る亡者たちを瞬く間に切り刻み、炭化させていく。


「ひぃぃっ! み、美羽様、凄いですわぁっ!」


シャーロットが背後で震えながら拍手をする。


「我が神、皆様! わたくしの加護をお受けくださいませ!」


アスタルテが、豊穣の魔法を発動させる。


ポワァァァァァンッ……


温かな金色の光が持子たち全員を包み込み、体力の回復と絶対的な魔法防御のバフが付与される。さらに、アスタルテは魔物の群れに向けて幻惑の魔法を放つ。


「おぞましき穢れども、同士討ちになさいな!」


魔物たちは幻覚に囚われ、互いの喉を噛み千切り始めた。


「……ふむ」


持子は、腕を組んだまま戦場を見渡した。鮎、エティエンヌ、美羽の圧倒的な蹂躙と、アスタルテの完璧なサポートのおかげで、持子の元へ辿り着く敵は一匹もいなかったのだ。


「これではわしの出番がないではないか。……まぁよい」


持子はニヤリと笑うと、右手に『極黒のカオス魔力』を集中させた。


ググググググ……ッ!


持子の背後に、漆黒と純白が混じり合う、巨大な『カオス魔法の手』が2本、具現化する。


「……行って、蹂躙してこい」


ドガァァァァァァァァンッ!!


持子の意思に呼応し、巨大なカオスの手が戦場の奥深くへと突き進む。岩肌を砕き、逃げ惑う大型の怨霊を鷲掴みにし、そのまま握り潰す!


グチャァァァッ!


「ふははははっ! たわいないわ!」


魔王の高笑いが、地獄のダンジョンに響き渡った。


「はい、お疲れ様ですわ。……まったく、回収する私の身にもなってほしいものですわ」


戦闘が一段落すると、ルージュが影の中から上半身だけを乗り出し、文句を言いながらもテキパキと作業を始めた。


ポイッ、ポイッ、スッ……


ルージュは、倒された魔物たちが残した光る石――『魔石』や、鋭い牙、毛皮などのアイテムを拾い集め、自身の影の収納(ルージュ部屋)へと次々に放り込んでいく。


「それにしても……」


ルージュは、転がっている魔物の巨大な死骸をツンツンと靴の先で突いた。


「ここ、『ダンジョン』と呼べば良いのかしら? かつて御影がいた時は、魔物を倒してもこんなに魔石やアイテムを落としませんでしたし、死体も瘴気となってすぐに消えていましたわ。でもここは、こうして死体が物理的に残るんですわね」


その疑問に答えたのは、ヨーロッパの裏社会を五百年支配してきた真祖、エティエンヌだった。


「それは、ダンジョンの『個性』としか言えませんわね、ルージュ」


エティエンヌは、指先の血糊をハンカチで優雅に拭いながら語る。


「以前、ドイツの黒い森の地下にダンジョンが発生した時は、御影の時と同じように、魔物は倒した傍から霧散してすぐ消えましたわ。ですが、スペインの古城跡に発生した時は違いました。今回のように魔石やアイテム、怪物の死骸が残り、それが吸血鬼たちの良い武器や防具の材料になりましたわよ」


「ほう! そういうものなのか!」


持子が目を輝かせた。「それは初耳だ!」


「ふむふむ、ダンジョンごとに法則が違うのですね。勉強になりますわ」


鮎がインテリモードで顎に手を当てる。


「すごーい! ゲームみたいですねぇ!」


美羽も無邪気にはしゃいだ。


「わしはダンジョンというものに入るのは今回が初めてだからな、実になまら楽しいぞ!」


持子は上機嫌で周囲の異様な景色を見回す。


「今まで妖や魔物と戦っても、わしが直接『黒の魔力』で貪り食う(食べる)だけだったからな! あははははっ!」


董卓の魂を持つ彼女にとって、敵の魔力を直接吸収することが最大の娯楽だったのだ。


「私と美羽、それにルージュは、ダンジョンに潜るのは二度目ですわね」


鮎が過去を振り返る。


「ええ。かつて、魔界の最深部に囚われた持子様を救出に向かった時が最初でしたわ。あの時は、こんな風に探索を楽しむ余裕なんて、1ミリもありませんでしたけれど」


「私も、ヨーロッパのダンジョンは何度か体験しておりますわ」


エティエンヌが微笑む。「持子様の覇道のためなら、私が完璧にナビゲートして差し上げますわ」


「うむ! 流石は真祖だ、頼りにしておるぞ、エティエンヌ!」


持子がエティエンヌの頭を撫でると、エティエンヌは「はぁぁっ……持子様……!」と再び恍惚の表情を浮かべた。


「あのぅ……」


不憫枠のシャーロットが、おずおずと手を挙げる。


「わたくしやアスタルテ様は、かつて悪魔や女神として、ダンジョンを『作る側』でございましたわ」


「そうそう!」


アスタルテも頷く。


「ダンジョンを作るのも、そこに魔物を配置して、魔力を循環させて維持するのも、実はとっても大変なんですのよ! コスト管理とか、迷路の構造計算とか、もう頭が痛くなるくらい……」


元・ダンジョン運営側からの、リアルすぎる裏話である。


「ぶははははっ! お前たち、そんな苦労をしておったのか!」


持子は腹を抱えて大爆笑した。


「まったく、不思議な世界だ! 神も悪魔も吸血鬼も、そして極黒の魔王たるわしも、こうして一つの迷宮に集い、ただの探索者プレイヤーのように遊んでおるのだからな! 面白い、実になまら面白いぞ!」


黄金の瞳を爛々と輝かせ、持子はダンジョンのさらに深淵へと向かって指を突きつけた。


「よし、皆の者! この『指定地下ダンジョン』の最下層まで、一気に蹂躙してやろうではないか! 極上の宝と、極上の魔力を、すべてわしたちが喰らい尽くしてやる!」


「「「はいっ!!! 持子様(さん/我が神/ご主人様)!!!」」」


かくして、人類の存亡を懸けて封鎖されたはずの『指定地下ダンジョン』は、スケベで暴食な極黒の魔王と、それに狂信的な愛を捧げるヤバすぎる下僕たちによって、ただの『ボーナスステージ』へと変貌しようとしていた。


彼女たちの暴走を止める立花雪も、ツッコミを入れる風間楓も葉室桐子も、ここにはいない。


「……はぁ。やっぱり、私がしっかりしないとダメですわね……」


影の中で、三百年の時を生きる吸血鬼の元女王ルージュだけが、一人孤独に深い深い溜息を吐き出していた。


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