【イギリス編・エピローグ 階級と隷属の儀式】
【イギリス編・エピローグ 階級と隷属の儀式】
ティンタジェル城跡での決戦から数時間後。
一行は、ロンドン市内の最高級ホテルのペントハウスへと帰還していた。
外は冷たい雨が降り続いているが、豪奢なスイートルームの中は、ある種の異様な熱気と、絶対的な階級社会の重圧に支配されていた。
ふかふかの巨大なキングサイズベッドの真ん中に、バスローブ姿の持子が傲然と腰を下ろしている。
その傍らには、第一下僕である本多鮎が忠犬のように傅き、立花雪と土御門朔夜が静かに控えている。
そして、持子の足元の絨毯に額を擦り付けるようにして平伏しているのが、完全なる敗者――大悪魔から転落した、シャーロット(グレモリー)とアスタルテであった。
「……さて。貴様らの処遇だが」
持子の低く冷酷な声に、二柱の美しい悪魔(美女)の肩がビクッと跳ねる。
「まず、アスタルテ。キリスト教などの後の価値観によって異教の女神が貶められ、罰として無理やり男性の身体に変えられ地獄へ落とされていたそうだな」
持子はふと、己の境遇を重ね合わせるように黄金の瞳を伏せた。
(男の魂でありながら女の肉体に縛られているわしと、似たようなものだな……)
ほんのわずかな同情心が、持子の内に芽生えていた。
「貴様は本来の姿に戻った時、素直にわしを神と崇めた。同情の余地はある。……よって、貴様の階級は『平民』として扱う」
「おお……っ、我が神……! 寛大なるお心、感謝いたします……!」
「貴様の持つ幻影と肉体変化の能力は認めてやる。……だが」
持子は声を一段と低くした。
「わしの目の前で、二度と男の姿をとることは許さん。……今回の件で、わしは痛感したのだ。わしの中の『女の心』は、甘いシチュエーションやイケメンにひどく脆い。そこを付け込まれれば、今回のように命取りになる」
持子は自身の胸に手を当て、雪や鮎たちに向き直った。
「雪、鮎、朔夜。わしの『好みの男の顔』のリストを後で共有する。仕事の相手や元からの友人ならばともかく、怪しいオスが近づいてきたら、貴様らが全力で排除しろ。わしはもう、男には一切ときめかんと誓うぞ!」
「ご主人様に近づくオスなど、私がミンチにしてやりますわ!」
鮎が鼻息を荒くして大剣を撫でる。
「次に、シャーロット(グレモリー)」
「ひっ! は、はいっ、ですわ……!」
身長175cm、プラチナブロンドの優雅なウェーブヘアにアメジストの瞳を持つ、スレンダーで華奢な英国貴族風のトップモデル。
持子は彼女を見下ろした瞬間、ふつふつと後から湧き上がってくる『怒り』と『恐怖』に顔を歪めた。
(今思えば、本当にギリギリだった。もしあの時、わしが精神世界で魂を殺され、身体を完全に奪われていたら……)
持子の視線が、傍らにいる愛しい鮎や、大切な友人である雪と朔夜に向けられる。
(この可愛い下僕たちが殺されていたかもしれない。大切な友人たちにも危害が及んでいたかもしれないのだ。……いっそ、あの場で八つ裂きにして殺しておけばよかったとすら思うわい)
だが、すでにカオスの隷属契約を刻み、己の庇護下に入れてしまった以上、魔王としての矜持が彼女を即座に殺すことを良しとしなかった。
「貴様は『奴隷』だ」
「あぁっ……」
「特別にわしの魔力は与えてやる。だが、悪魔としての高度な魔法はまだ使えなくしてある。せいぜい、少しばかり魔法の真似事ができる程度だ」
「そ、そんな……わたくしの力が……」
「当然の報いだ。さらに、貴様はモデル業も廃業とする」
「ええっ!?」
「今後は社長である立花雪と、副マネージャーの朔夜の下働きとして徹底的にこき使ってやる。……わしや仲間への献身が認められれば、いずれ『平民』くらいには引き上げてやろう。それまでは泥水をすする覚悟で働け」
「あぁぁっ……わたくしの華やかな人生が……っ」
絶望に崩れ落ちるグレモリーを、平民となったアスタルテが少し見下したような目で見つめた。
「改めて、わしの軍団の『階級』を宣言する!」
持子は立ち上がり、高らかに言い放った。
「わしは絶対の『神』だ! そして雪や朔夜たち友人は『貴族』! 鮎をはじめとする、エティエンヌ、美羽たち先輩下僕は、絶対不可侵の『王』と思え! 彼女たちの命令は、わしの命令と同義だ!」
さらに持子は続ける。
「アスタルテは『平民』、グレモリーは最下層の『奴隷』。よって、アスタルテはグレモリーを従えてよい。そして、もう一人……鮎の下僕である吸血鬼のルージュ。あやつはわしの直接の下僕ではないが、鮎の眷属ゆえに貴様らよりは立場が上だ。偉そうにしているだろうが、絶対に逆らうなよ」
「お、王……それに、吸血鬼の下まで……」
「人間上がりや吸血鬼が、私たちの王だなんて……」
かつての誇り高き大悪魔たちが絶望に顔を歪める。
「不満か?」
「「い、いえっ! 滅相もございませんっ!!」」
圧倒的なカオス魔力の圧に、二人は床に額をこすりつけて震え上がった。
「よろしい」
持子は満足げに頷くと、ベッドに深く腰を掛け、長い脚を組んだ。
「では……わしの『好み』の身体と心に作り変えるための、極上の儀式を始めるとしよう」
持子はそう言うと、傍らに立つ雪を見上げた。
「雪。……すまないが、少し部屋を出ていってくれないか。これからわしは、こいつらに絶対的な『服従』を叩き込む。お前に、あまり見せたいものではないからな」
「……ええ。私は別室で、シャーロットの引退と裏方への移籍の手続きを進めておきます。……朔夜、鮎、あとは任せたわよ」
雪はそれだけ言い残すと、静かに部屋を出ていった。
扉が閉まる音を確認すると、持子は今度、ベッドの脇に立つ土御門朔夜を真っ直ぐに見据えた。
「朔夜」
「……なんだ?」
「お前が惚れている『わし』は、これからするような残虐で淫靡な振る舞いを平然と行う、極黒のバケモノだ。……それでも良いと言うなら、目を逸らさずにしっかりと見ておけ!」
持子の挑戦的で、どこか自身を突き放すような強い言葉。
朔夜は、色素の薄い美少女の顔を一切歪めることなく、中身の『肉食系男子』としての鋭い瞳で持子を真っ直ぐに見つめ返した。
「ああ。言われなくても、その目に焼き付けてやるよ」
朔夜の覚悟を確認すると、持子は妖しく唇を歪め、足元で平伏する二柱の悪魔に命じた。
「シャーロット、アスタルテ。ベッドへ上がれ」
抗いがたい魔力と色気を帯びた絶対命令。
隷属の呪縛を刻まれた二人は、まるで発情した獣のように這い進み、シーツの上へとすり寄った。
「あぁ……神様……っ」
「ご主人様……どうか、わたくしたちを……っ」
持子は、丹田から『光と闇のカオス魔力』を溢れさせた。
それは濃密な魔力のオーラとなって、二人の美しい肢体を包み込む。
「わしの好みに、その身体の隅々まで蕩けさせてやる」
持子は自らの白磁のような指先で、アスタルテの豊かな胸を、シャーロットの引き締まった腰を、じっくりと、そして執拗に撫で回し始めた。
肌に触れるたび、光の熱と闇の冷たさが入り混じったカオス魔力が直接脳髄を揺さぶり、二人の理性を焼き切っていく。
「あ、ぁあんっ……!! ぁあぁっ!! 神様、だめ、指先から、熱い魔力が……っ!」
「ひぎぃぃっ! ご主人様っ、ご主人様ぁっ! わたくしの、誇りが、ぐちゃぐちゃに……っ!」
「ふははは、なまら良い鳴き声だ! もっと啼け、わしのために!」
持子は二人の美しい髪を乱暴に掴み、自身の顔へと引き寄せた。
そして、逆らうことなど微塵も許さない、暴君の口づけを二人に交互に叩き込んだ。
「んちゅっ……! れろ、んんっ……!!」
「ぁっ、んあぁっ……ちゅ、じゅぷっ……!」
強制的な『カオスの隷属契約』を魂の最深部まで浸透させ、彼女たちの肉体の感度、骨格の柔らかさ、肌の質感に至るまで、すべてを「持子の好み」へと作り変えていく暴力的なまでの魔力の譲渡。
「……ふふっ、よく蕩けてきたな。ここからは『神』と『王』の慈悲を、その身に刻んでやる。……鮎!」
「はいっ、ご主人様!」
持子と鮎は、極上のカオス魔力を指先に集束させた。
「あぁっ……! な、なんて神々しい……! 男の悪魔として何百年も縛られていた苦しみが、我が神の愛の指先で浄化されていきます……っ! 好き、好きです、我が神……っ!」
アスタルテが、狂信的で重すぎるヤンデレ気味な愛情を剥き出しにして、持子の腰にすがりつく。
「さあ、グレモリー。あなたの美しい体、隅々まで愛して差し上げますわ」
「ひぅ……っ、あぁん……! 鮎様、もっと……もっと愛して、わたくしを壊して……!」
持子の指先、鮎の舌、そして濃密なカオス魔力の波動が、二人の秘所をトロトロに熟れさせる。
室内には淫らな水音が絶え間なく響き渡る。
「準備は良いな? ……わしの全てを、受け入れろ」
持子がアスタルテの腰を引き寄せ、魔力を纏わせた指先を、じっくりと、その熱い最深部へと沈めていく。同時に、鮎もグレモリーの細い脚を割り、指を這わせた。
「ズンッ……! グジュッ……!」
「あ、あああぁぁぁっ……!! お、奥まで……! 満たされる、中が、ご主人様の魔力で……っ!!」
「ふふ、グレモリー……。ほら、こんなに締まって。愛おしい子……」
持子と鮎はゆっくりと、しかし確実な力強さで指先を動かした。
指が内壁を擦るごとにアスタルテとグレモリーの魂が揺さぶられ、甘い言葉でその理性が刈り取られていく。
(……わしは、男だ。天下を恐怖で支配した、魔王・董卓なのだ)
持子は、二人の絶世の美女を激しく乱れさせ、絶頂へと追い込みながら、内心で必死に己に言い聞かせていた。
あの断崖絶壁で、アーサーの囁きに心を奪われそうになった自分。地獄の業火に焼かれるビジョンの中で、ただ泣き叫ぶことしかできなかった脆く儚い『貂蝉』の魂。
持子は、激しく女をイカせることで、自覚できないほど深いところにある「女の部分」を、分厚い魔王の鎧で必死に覆い隠し、護ろうとしていたのだ。
男として振る舞い、女を力で支配し、愛を注ぐことでしか、己の脆い心を守る術を知らなかった。
「どうだ、元大悪魔ども! 貴様らがどれほど惨めなメスであるか、その魂に直接分からせてやる!」
「あぁぁっ! 凄い、凄いですご主人様ぁっ! 私の身体が、ご主人様のモノに、作り変えられていくぅっ!」
「もっと……! もっと私をめちゃくちゃにして、壊してくださいませ、我が神……っ!!」
ゆっくりと、じわじわと高めていく快楽の波。やがて指先の動きは激しさを増し、狂気的なまでの速度で突き上げと愛撫が繰り返される。
「あ、あぁっ! くる、きます、ご主人様ぁっ!! ああああぁぁぁっ!!!」
二柱の悪魔は、同時に絶頂の深淵へと叩き落とされた。激しくのけぞり、白目を剥き、指先までを硬直させて絶叫する。
動けなくなった彼女たちに対し、持子は冷酷なまでの慈愛を見せ、丹田から魔力を流し込んで強引に回復させた。
「まだ終わらせんぞ。……次は、鮎の愛を受け取れ」
相手を入れ替え、持子がグレモリーを、鮎がアスタルテを組み敷く。
持子の圧倒的な王の抱擁と、鮎の狂気じみた献身的な魔力愛撫。
「仕上げだ……。わしたちの全てを、貴様らの魂の奥底に刻みつけてやる」
持子と鮎は、同時に最深部を貫くような強烈な愛撫を放ち、そこから膨大な量の「カオス魔力」を彼女たちの胎内へと直接流し込んだ。
「あ、あぎぃぃっ……!! ぁ、あぁぁぁぁぁぁっ!!!」
光と闇の濁流が、彼女たちの血管を、神経を、そして魔力の核を蹂躙し、上書きしていく。
悲鳴のような喘ぎ声と、水気を帯びた淫らな音が、高級ホテルのスイートルームに響き渡る。
その圧倒的で、暴力的ですらある魔王の情事。
朔夜は、言われた通り一瞬たりとも目を逸らさなかった。
目の前で繰り広げられる過激な光景。
女の身体でありながら、完全なる『支配者』として絶世の美女たちを組み敷き、甘く蕩けさせる持子の姿。
(……ああ、あんたは確かにバケモノだ。傲慢で、凶暴で、めちゃくちゃで……)
朔夜は、強く拳を握りしめた。
(だけど……俺は、そんなあんたが堪らなく好きなんだ。どれだけバケモノぶって壁を作ろうと、俺は絶対に目を逸らさない。……それでも俺は、持子に惚れている。絶対いつか、俺の方を振り向かせてやる……!)
燃え盛るような決意を胸に、朔夜は魔王の狂宴を最後まで見届けた。
◆ ◆ ◆
数時間後。
持子は二人の美女を散々弄り倒し、己の好みの「極上の身体」へと完全に作り変え、魔力を空にさせて白目を剥かせた後、満足してふかふかのベッドで眠りについていた。
その寝顔は、先ほどまでの暴君の顔が嘘のように、あどけなく無防備なものであった。
持子の静かな寝息が聞こえる部屋の片隅。
精根尽き果て、絨毯の上でボロ雑巾のように倒れ伏しているシャーロットとアスタルテの前に、一つの小さな影が立った。
第一下僕、本多鮎である。
彼女のピンク色の髪の隙間から覗く目は、持子に向ける従順な犬のそれではない。絶対的な『王』としての、冷酷でドス黒い支配者の目であった。
「……さて。私からの『教育』です、新入りども」
「ひっ……!」
「あ、鮎、様……」
鮎は、自身の身の丈ほどもあるデュラハンの大剣をドスンッ!と絨毯に突き立てた。
平民であるアスタルテも、奴隷であるグレモリーも、王たる鮎の放つ殺気に震え上がっている。
「いいですか、メス豚ども。ご主人様も言った通り、あなた方は平民と奴隷。私が『右を向け』と言えば右を向き、『死ね』と言えば喜んで首を差し出すのがあなた方のルールです」
鮎は、身動き一つ取れないシャーロットの美しい顔を、躊躇なく冷たい足の裏で踏みつけた。
「あぐぅっ……! な、なんという屈辱……人間上がりの小娘に、わたくしが……っ」
「……女神の私が…………っ」
アスタルテもまた、他の下僕である鮎に激しく嫉妬していたが、平民である自分が王に逆らえるはずもなく、涙目でギリィッと歯を噛み締めていた。
「口答えは許しません。……あなた方はご主人様の心を弄び、傷つけた。その罪は、一生かけても償いきれないほど重いのです。ご主人様に逆らえば、この大剣で魂ごとミンチにしますわよ」
圧倒的な狂気と殺気を放つ鮎の前に、かつての大悪魔たちは完全に心が折れ、ただ涙を流して服従の意思を示すしかなかった。
絶対的な階級社会。
極東の魔王軍の恐ろしさを、二人は文字通り骨の髄まで思い知らされることとなったのである。
かくして、イギリスでの激闘と、新たな二柱の下僕を獲得した魔王一行。
ヨーロッパを巡る彼女たちの波乱万丈な旅はまだ続くのだが……その後の珍道中については、また別の機会にて語られることとなる。




